「ハーブやサプリメントなら、薬より安全なのでは?」
そう考える方もいるかもしれません。しかし、セント・ジョーンズ・ワートは、処方薬の効果を弱めたり、副作用を強めたりする可能性がある健康食品です。
特に、免疫抑制薬、抗凝固薬、経口避妊薬、抗うつ薬などを使用している方は注意が必要です。
すでに薬と一緒に使っている場合は、セント・ジョーンズ・ワートだけを自己判断で急に中止するのも安全とは限りません。商品名や成分表示がわかるものを用意し、医師や薬剤師へ相談してください。
この記事では、セント・ジョーンズ・ワートと薬の相互作用について、薬剤師が注意したい組み合わせや確認ポイントを解説します。
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セント・ジョーンズ・ワートとは?
セント・ジョーンズ・ワートは、和名を「セイヨウオトギリソウ」という黄色い花を咲かせる植物です。
海外では、軽度から中等度のうつ症状を対象とした研究が行われています。一方、日本では、うつ病を治療する医薬品として承認されているわけではなく、主に健康食品やハーブティーとして流通しています。
製品によって含まれる成分量や品質が異なる可能性があるため、「海外で研究されているから、市販のどの商品でも同じように使える」とは限りません。
気分の落ち込みや不眠が続いている場合は、健康食品だけで対処しようとせず、医療機関へ相談することも大切です。
なぜ薬との相互作用が起こるの?
セント・ジョーンズ・ワートが問題となる理由は、薬を分解・排出する仕組みに影響を与えるためです。
代表的なものとして、薬物代謝酵素のチトクロームP450や、薬物輸送に関係するP糖タンパク質を誘導する作用があります。
これらの働きが強くなると、併用している薬が通常より速く分解・排出され、血中濃度が下がることがあります。その結果、薬を正しく服用しているにもかかわらず、十分な効果が得られなくなるかもしれません。
もう一つ注意したいのが、セロトニンに関係する作用です。
抗うつ薬などのセロトニンを増やす薬と併用すると、セロトニンの作用が過剰になり、落ち着かない、発汗、震え、下痢、発熱、意識の変化などが現れる「セロトニン症候群」の危険性が高まります。
薬の相互作用には、効果が弱くなるものと、副作用が強くなるものの両方があります。詳しくは「薬剤師が押さえるべき医薬品の相互作用」でも解説しています。
セント・ジョーンズ・ワートと注意したい薬
セント・ジョーンズ・ワートとの相互作用が問題となる薬は少なくありません。代表例を整理すると、次のようになります。
| 薬の種類 | 主な薬の例 | 考えられる影響 |
|---|---|---|
| 免疫抑制薬 | シクロスポリン、タクロリムスなど | 血中濃度が低下し、治療効果が弱まる可能性 |
| 抗凝固薬 | ワルファリン、一部の直接作用型経口抗凝固薬 | 抗凝固作用が弱まり、血栓症の危険性が高まる可能性 |
| 経口避妊薬 | エチニルエストラジオールを含む製剤など | 避妊効果が低下する可能性、不正出血 |
| 抗うつ薬 | 選択的セロトニン再取り込み阻害薬など | セロトニン症候群の危険性 |
| 片頭痛治療薬 | トリプタン系薬など | セロトニンに関連する副作用の危険性 |
| 抗てんかん薬 | カルバマゼピンなど | 血中濃度が変化し、発作コントロールへ影響する可能性 |
| 強心薬 | ジゴキシン | 血中濃度が低下する可能性 |
| 気管支拡張薬 | テオフィリン | 血中濃度が低下する可能性 |
| 抗ウイルス薬 | 一部のヒト免疫不全ウイルス治療薬など | 血中濃度が低下し、治療効果が弱まる可能性 |
| 抗がん薬 | 一部の分子標的薬など | 血中濃度が低下し、治療効果へ影響する可能性 |
ここに挙げた薬は一例です。実際には、同じ分類の薬でも影響の程度や添付文書上の扱いが異なります。
「一覧に自分の薬がないから大丈夫」と判断せず、商品名と処方薬の両方を医師や薬剤師に確認してもらいましょう。
抗うつ薬の特徴やセロトニン症候群については、「抗うつ薬の違いと使い分け」も参考になります。
すでに併用している場合は急にやめない
相互作用を知ると、すぐにセント・ジョーンズ・ワートを中止したくなるかもしれません。しかし、すでに継続して使用している場合は、自己判断による急な中止にも注意が必要です。
セント・ジョーンズ・ワートを中止すると、誘導されていた薬物代謝酵素などの働きが徐々に元へ戻ります。その結果、これまで低く抑えられていた処方薬の血中濃度が上昇し、副作用が現れる可能性があります。
特に、血中濃度を測定しながら使用する薬や、少しの濃度変化が治療へ影響する薬では慎重な対応が必要です。
すでに併用しているときは、次の情報を医師や薬剤師へ伝えてください。
- 使用している商品の名前
- 成分表示やパッケージの写真
- 1日に使用している量
- 使用を始めた時期
- 処方薬、市販薬、ほかの健康食品
- 最近感じている体調の変化
「サプリメントだから伝えなくてもよい」と考えず、服用中のものとしてお薬手帳にも記録しておきましょう。
お薬手帳の具体的な使い方は、「お薬手帳の役割と活用法」で解説しています。
薬剤師が確認したい聞き取りのポイント
患者さんは、セント・ジョーンズ・ワートを「薬」と認識していないことがあります。そのため、「ほかに薬を飲んでいますか?」と聞くだけでは、使用を把握できないかもしれません。
私は薬局で確認するとき、次のように聞き方を広げることが大切だと考えています。
- サプリメントや健康食品を使っていますか?
- ハーブティーや気分を整える目的の商品を使っていますか?
- インターネットで購入している商品はありますか?
- 最近、始めたものや中止したものはありますか?
特に確認したいのは、開始時だけでなく「中止した時期」です。
服用中の薬の効果が弱くなったときだけでなく、サプリメントの中止後に副作用が現れた場合も、相互作用が関係している可能性があります。
商品名だけでは成分を判断できないこともあるため、パッケージや成分表示の写真を見せてもらうと確認しやすくなります。
健康食品全般の確認ポイントについては、「薬剤師が知るべき健康食品・サプリメント事情」もあわせてご覧ください。
セント・ジョーンズ・ワートについてよくある質問
ハーブティーなら問題ありませんか?
ハーブティーであっても、セント・ジョーンズ・ワートが含まれていれば相互作用を完全には否定できません。
抽出方法や飲む量、製品に含まれる成分量によって影響が異なるため、「お茶なら安全」とは判断せず、商品を確認してもらいましょう。
少量なら薬と併用できますか?
相互作用の程度には製品差や個人差があります。少量であっても安全性を一律に判断することはできません。
特に、免疫抑制薬、抗凝固薬、抗ウイルス薬、抗がん薬などを使用している場合は、事前の確認が必要です。
どのような症状が出たら相談すべきですか?
発熱、強い発汗、震え、動悸、下痢、落ち着かない、意識が普段と違うなどの症状がある場合は、セロトニン症候群などの可能性も考えられます。
また、持病の症状が悪化した場合や、薬が効かなくなったように感じる場合も、早めに医療機関へ相談してください。
光に敏感になることはありますか?
セント・ジョーンズ・ワートでは、日光に対して皮膚が敏感になる光線過敏反応が報告されています。
使用中に日光を浴びたあと、強い赤み、発疹、かゆみなどが現れた場合は、医師や薬剤師へ相談しましょう。
まとめ
セント・ジョーンズ・ワートは健康食品として購入できますが、多くの医薬品へ影響を与える可能性があります。
特に注意したいポイントは、次の3つです。
- 処方薬の血中濃度を下げ、治療効果を弱めることがある
- 抗うつ薬などとの併用でセロトニン症候群の危険性が高まる
- すでに併用している場合は、自己判断で急に中止しない
大切なのは、「天然だから安全」「サプリメントだから薬とは関係ない」と決めつけないことです。
使用前だけでなく、開始・増量・中止のタイミングでも、商品名や成分表示を医師や薬剤師へ伝えてください。
※本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の治療や健康食品の使用を判断するものではありません。服用中の薬がある方は、医師または薬剤師へご相談ください。

参考文献
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「セント・ジョーンズ・ワートを含む健康食品と医薬品の相互作用」
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0019.html - 厚生労働省「セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)と医薬品の相互作用について」
https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1205/h0510-1_15.html - 厚生労働省eJIM「セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)」
https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c04/43.html - 厚生労働省eJIM「薬とハーブの相互作用について知っておくべき6つのこと」
https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/communication/c03/44.html - National Center for Complementary and Integrative Health. St. John’s Wort: Usefulness and Safety.
https://www.nccih.nih.gov/health/st-johns-wort


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