―健康効果を活かしつつ、副作用を防ぐ指導ポイントを徹底解説―
1. 「コーヒー=薬に悪影響」は誤解?実は“相互作用”に要注意

薬局で働く中で、「薬は水で飲むのが基本」と説明する場面は多いですが、患者さんの中には「朝はいつもコーヒーで薬を飲んでいます」という方も少なくありません。
最近では、コーヒーの健康効果にも注目が集まっています。
たとえば、
- 心臓病や糖尿病の発症リスクを下げる
- 認知機能の低下を予防する
といった報告もあり、「健康の味方」と考える人も増えています。
しかし、コーヒーには薬の効き方や副作用に影響する成分が含まれているため、薬剤師としての注意が必要な飲み物でもあるのです。
2. コーヒーの主な成分と体への作用

コーヒーには、以下のような薬理作用を持つ成分が含まれています。
成分 | 主なはたらき | 健康へのメリット |
カフェイン | 眠気覚まし・集中力向上、代謝促進、血管内皮機能改善、呼吸器改善 | 疲労感軽減、スポーツパフォーマンス向上、循環器疾患や呼吸器疾患の死亡リスクの低減 |
クロロゲン酸 | 抗酸化作用、糖吸収抑制、脂質代謝改善 | 糖尿病や脂質異常症の予防が期待される |
これらは適量であれば健康に良い可能性がありますが、特定の薬と一緒に摂ると作用が強まったり、弱まったりするため注意が必要です。
参考文献:コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について
3. なぜコーヒーで薬の作用が変わるのか?|3つの仕組み

薬とコーヒーの飲み合わせで問題になるのは、主に以下の3パターンです。
(1)薬の吸収を妨げる
カフェインやクロロゲン酸が胃腸の動きを変えたり、薬とくっついてしまうことで、薬の吸収率が低下します。
→ 結果として、薬が効きにくくなる可能性があります。
(2)薬の分解を遅らせる(代謝阻害)
カフェインは肝臓で代謝される際に、CYP1A2という酵素と競合します。
この酵素で代謝される薬がある場合、薬の分解が遅れて体内に長く残り、副作用が強く出るリスクがあります。
(3)薬の作用とぶつかる・重なる(薬理作用の拮抗/相加)
たとえば、カフェインの覚醒作用は睡眠薬の働きを弱めます。また、降圧薬と一緒に飲むと血圧が下がりにくくなることもあります。
4. 特に注意すべき薬とコーヒーの相互作用|薬剤師向け実践ガイド

以下は、日常業務でよく使われる薬の中でもコーヒーとの相互作用が明確に報告されている例です。
薬の種類 | 主な薬剤名 | コーヒーとの問題点 | 指導ポイント |
抗精神病薬 | クロザピン、オランザピンなど | カフェインがCYP1A2の代謝を邪魔し、薬の血中濃度↑ → 過鎮静、けいれんなど | コーヒーは1日1杯まで。カフェイン摂取を急に増減しないように指導。 |
キノロン系抗菌薬 | シプロフロキサシンなど | カフェインの分解を遅らせ、不眠・頭痛・震えなどが出やすくなる | 服用中はカフェインを控えるよう案内。デカフェも推奨。 |
テオフィリン | テオドール、スロービッドなど | カフェインと相加作用。血中濃度が上昇 → 不整脈・吐き気など | 喫煙習慣やコーヒー摂取量の変化があれば、血中濃度の再確認を。 |
ワルファリン | ワーファリン | カフェインの影響で代謝や血小板作用に変動。INRの上昇リスクも | 飲用量の急な変化は避け、INR値をこまめにモニター。 |
骨粗鬆症薬 | アレンドロネートなど | コーヒーと一緒に飲むと吸収率が激減(60%以上低下) | 起床後すぐ水で服用→30分は飲食・カフェイン類を避けるよう指導。 |
甲状腺ホルモン薬 | レボチロキシン(チラーヂンS) | コーヒーにより吸収率が40〜50%減少 | 「薬を飲んでから1時間は飲食しない」よう生活指導。 |
5. 現場で役立つ!コーヒー飲用と服薬指導の5ステップ

- 患者さんに飲用習慣を確認する
例:「普段コーヒーはどのくらい飲まれますか?朝食前後に飲まれますか?」 - 電子薬歴で相互作用がある薬をチェック
- 吸収に影響する薬の場合、時間をずらすよう指導
- 代謝に影響する薬は、コーヒー量の安定維持を促す
- 必要に応じて、医師へ情報提供を行い、TDM(血中濃度モニタリング)を依頼
6. 患者からよくある質問とその答え

Q | A |
デカフェなら大丈夫? | 基本的にはカフェインが少ないためリスクは減りますが、完全にゼロではないため、慎重を要する薬(クロザピンなど)では注意が必要です。 |
朝、薬と一緒にコーヒーを飲んでいい? | 多くの薬で吸収や作用に影響が出る可能性があるため、できるだけ水で飲むよう勧めましょう。 |
エナジードリンクは? | コーヒー以上にカフェイン・糖分が多く、心拍数や血圧への影響が大きいため、高血圧や心疾患のある患者には控えるよう指導が必要です。 |
7. まとめ|薬剤師が押さえるべき「コーヒー×薬」知識

- コーヒーは健康に良い側面もあるが、薬との相互作用には注意が必要
- 問題となるのは、吸収阻害・代謝阻害・薬理作用の拮抗や相加の3点
- 指導では「量・タイミング・習慣の変化」に注目し、個別対応がカギとなる
- 現場でよく出る薬(クロザピン、テオフィリン、レボチロキシンなど)は特に意識しておくと◎
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