はじめに

薬局を運営する上で避けて通れないのが「許可の更新」です。薬機法に基づく薬局開設許可は6年ごとに更新が必要で、更新を忘れてしまうと許可が失効し、営業ができなくなってしまいます。
さらに、薬局は「保険薬局の指定更新」や「麻薬小売業者免許」など、複数のライセンスを並行して管理する必要があります。本記事では、保健所での薬局許可更新を中心に、必要な書類や実地検査、よくある不備について詳しく解説します。
1. 薬局許可更新の全体像

薬局開設許可(薬機法)
- 有効期間:6年間
- 更新手続き:満了の概ね1か月前までに保健所へ申請
- 更新をしないと自動的に失効し、薬局を営業できなくなります。
保険薬局の指定(診療報酬請求のため)
- 有効期間:6年間
- 提出先:地方厚生(支)局
- 許可更新とは別の手続きが必要。
関連するライセンス
- 麻薬小売業者免許:2年ごと、または自治体ごとに更新が必要。
- 向精神薬は「みなし免許」の扱いですが、帳簿管理が必須。
- 高度管理医療機器等の販売許可も6年ごとに更新が必要な場合があります。
2. 更新のタイムライン

- 満了3か月前〜1か月前:更新申請の受付期間(自治体により差あり)
- 満了1か月前までに申請:標準的なスケジュール
- 申請後:保健所による実地検査
- 許可証交付:検査合格後に交付され、次の6年間有効
※申請が遅れると許可失効 → 一度廃止 → 新規申請という流れになるため、営業停止リスクがあります。
3. 必要書類と費用

主な提出書類
- 更新申請書(自治体の様式)
- 現在の薬局開設許可証
- 賃貸借契約書(写)または不動産登記簿(写)
- 平面図・周辺図
- 法人登記簿謄本(法人の場合)
- 管理薬剤師の免許証コピー、従業者名簿
費用
- 更新手数料は 11,000〜12,700円前後(自治体により異なる)。
4. 保健所による実地検査

更新時には、薬局の設備や管理体制が法令通りに整っているか確認されます。主なチェックポイントは以下の通りです。
- 調剤室の面積(最低基準を満たしているか)
- 水回り・換気設備の適正性
- 医薬品の保管方法(温度管理・施錠・麻薬金庫)
- 帳簿類の管理(麻薬・向精神薬・温度記録など)
- 掲示物(開設者名・管理薬剤師名・営業時間・各種許可証)
- 夜間の施錠や防犯体制
不備があれば交付が遅れる場合もあるため、事前のセルフチェックが重要です。
5. よくある不備と差し戻し事例

- 法人名・所在地・代表者名の記載が登記簿と一致していない
- 改装後の平面図が未更新のまま提出
- 従業員名簿や勤務体制表が未整備
- 温度記録や冷蔵庫の管理体制の証拠不足
- 保険薬局の指定更新で書類不備 → 受理遅延
こうしたミスは頻発するため、申請前に必ず二重チェックを行いましょう。
6. 変更がある場合の追加手続き

- 管理薬剤師の交代:別途「変更届」が必要
- 構造設備の変更:事前に届出し、場合によっては再検査
- 名称や所在地変更:新たに許可申請が必要になるケースあり
- 開設者変更(承継):M&Aや相続では、更新時期と重なるとスケジュール調整が必須
7. 保険薬局の指定更新も忘れずに

薬局許可更新とは別に、保険薬局の指定も6年ごとに更新されます。
- 提出先は地方厚生(支)局
- 手数料はなし
- 書類に不備があると診療報酬請求に支障が出るため、必ず期限内に対応しましょう。
8. 管理を楽にするチェックリスト

- 満了日から逆算した「90・60・30日前タスク表」
- 提出書類チェックリスト
- 薬局許可/保険薬局指定/麻薬免許などを一元管理できる期限表
これらを管理薬剤師や事務スタッフと共有しておくと、更新作業がスムーズになります。
まとめ

薬局の更新は「6年ごとの薬局開設許可」「6年ごとの保険薬局指定」「2〜3年ごとの麻薬小売業者免許」など、複数の期限が重なりやすい手続きです。
更新を忘れると営業停止や診療報酬請求の遅延につながるため、余裕を持ったスケジュール管理と事前準備が欠かせません。
薬局を安全・安定して運営するために、今のうちから期限管理表を整備しておきましょう。
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