NSAIDsは、痛みや炎症、発熱に対してよく使われる薬です。
ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、セレコキシブなど、処方薬でもOTC医薬品でも目にする機会が多い薬剤です。
一方で、NSAIDsは「よく使う薬」だからこそ注意が必要です。
胃腸障害、腎機能悪化、心血管リスク、抗血栓薬との併用、高齢者での副作用など、患者背景によっては重い副作用につながることがあります。
この記事では、NSAIDsの基本的な作用機序から、薬剤ごとの特徴、胃腸障害・腎機能・高齢者への注意点、OTC販売時の確認ポイントまで、薬剤師向けに整理します。
NSAIDsとは?

NSAIDsとは、非ステロイド性抗炎症薬のことです。
主な作用は、以下の3つです。
- 鎮痛作用
- 解熱作用
- 抗炎症作用
NSAIDsは、シクロオキシゲナーゼという酵素を阻害し、プロスタグランジンの産生を抑えることで効果を発揮します。
プロスタグランジンは、痛みや炎症、発熱に関わる物質です。そのため、NSAIDsでプロスタグランジンの産生を抑えると、痛みや炎症、発熱が軽くなります。
ただし、プロスタグランジンには悪い働きだけでなく、体を守る働きもあります。
たとえば、
- 胃粘膜を守る
- 腎血流を維持する
- 血小板機能に関わる
といった役割があります。
そのため、NSAIDsは痛みを抑える一方で、胃腸障害や腎障害、出血リスクなどに注意が必要になります。
COX-1とCOX-2の違い
NSAIDsを理解するときに大切なのが、COX-1とCOX-2の違いです。
COX-1は、胃粘膜保護、腎血流維持、血小板機能など、生理的な働きに関わります。
一方、COX-2は、炎症や痛みに関わる場面で誘導される酵素です。
ざっくり整理すると、以下のようになります。
| 種類 | 主な役割 | 阻害したときに起こりやすいこと |
|---|---|---|
| COX-1 | 胃粘膜保護、腎血流維持、血小板機能 | 胃腸障害、腎機能悪化、出血リスク |
| COX-2 | 炎症、痛み、発熱 | 鎮痛・抗炎症作用、心血管リスクへの注意 |
非選択的NSAIDsは、COX-1とCOX-2の両方を阻害します。
一方、セレコキシブのようなCOX-2選択的阻害薬は、COX-2を比較的選択的に阻害する薬です。
COX-2選択的阻害薬は胃腸障害を減らしやすい一方で、心血管リスクのある患者では注意が必要です。
代表的なNSAIDsの特徴
NSAIDsはどれも同じように見えますが、薬剤ごとに特徴があります。
| 薬剤名 | 主な特徴 | 注意したいポイント |
|---|---|---|
| ロキソプロフェン | 即効性があり、処方・OTCともによく使われる | 胃腸障害、腎機能、併用薬に注意 |
| イブプロフェン | 解熱鎮痛でよく使われる。OTCでも多い | 喘息、胃腸障害、腎機能、他NSAIDs重複に注意 |
| ジクロフェナク | 鎮痛作用が強めで外用薬も多い | 全身投与では胃腸・腎・心血管リスクに注意 |
| ナプロキセン | 半減期が比較的長い | 長く効く分、漫然使用に注意 |
| セレコキシブ | COX-2選択的阻害薬。胃腸障害を抑えやすい | 心血管疾患既往、浮腫、腎機能に注意 |
| アスピリン | 低用量では抗血小板目的で使用 | 鎮痛目的のNSAIDsとは目的が異なる。併用時は出血に注意 |
薬剤の選択では、「鎮痛効果が強いか」だけで判断するのではなく、患者背景を見て選ぶことが大切です。
薬局では、次のような視点で確認すると整理しやすくなります。
- 胃潰瘍や消化管出血の既往はあるか
- 腎機能は低下していないか
- 高齢者か
- 抗血小板薬や抗凝固薬を使っていないか
- 利尿薬、ACE阻害薬、ARBを使っていないか
- 心不全や心血管疾患の既往はあるか
- OTC NSAIDsを重ねて使っていないか
胃腸障害に注意が必要な患者
NSAIDsで特に有名な副作用が、胃腸障害です。
NSAIDsはプロスタグランジンの産生を抑えることで、胃粘膜の防御機能を低下させることがあります。
その結果、
- 胃痛
- 胃もたれ
- 胃炎
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 消化管出血
- 穿孔
などにつながることがあります。
特に注意したい患者背景は以下です。
- 高齢者
- 消化性潰瘍の既往がある
- 消化管出血の既往がある
- 抗血小板薬を服用している
- 抗凝固薬を服用している
- ステロイドを服用している
- 複数のNSAIDsを使用している
- NSAIDsを長期間使用している
- 高用量で使用している
「胃薬が一緒に出ているから大丈夫」と考えたくなる場面もありますが、PPIやP-CABが併用されていてもリスクがゼロになるわけではありません。
薬局では、
「胃が痛い」
「黒い便が出た」
「吐き気が強い」
「貧血っぽい」
「ふらつく」
といった訴えがないか確認するとよいでしょう。
黒色便や吐血、強い腹痛がある場合は、受診が必要な可能性があります。
NSAIDsとPPI・P-CABの併用

NSAIDsによる胃腸障害リスクが高い患者では、PPIやP-CABが併用されることがあります。
PPIには、ランソプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾールなどがあります。
P-CABには、ボノプラザンがあります。
消化性潰瘍の既往がある患者や、抗血栓薬を併用している患者では、NSAIDsによる潰瘍や出血リスクを意識して処方監査する必要があります。
ただし、PPIやP-CABを併用しているからといって、NSAIDsを漫然と長期使用してよいわけではありません。
基本は、
- 必要最小限の用量
- できるだけ短期間
- 患者背景に応じて代替薬も検討
です。
薬剤師としては、鎮痛効果だけでなく、胃腸障害のリスクを踏まえて確認することが大切です。

腎機能低下例でNSAIDsに注意する理由
NSAIDsは腎機能にも影響します。
腎臓では、プロスタグランジンが腎血流を維持する働きをしています。NSAIDsでプロスタグランジンの産生が抑えられると、腎血流が低下し、急性腎障害につながることがあります。
特に注意したいのは、もともと腎血流が不安定になりやすい患者です。
たとえば、
- 高齢者
- 慢性腎臓病
- 脱水
- 発熱
- 下痢・嘔吐
- 食事や水分摂取が少ない
- 利尿薬を使用中
- ACE阻害薬を使用中
- ARBを使用中
- 心不全がある
こうした背景がある患者では、NSAIDsによる腎機能悪化に注意が必要です。
特に、利尿薬、ACE阻害薬またはARB、NSAIDsの組み合わせは、腎機能悪化のリスクとして意識しておきたい組み合わせです。
薬局では、
「最近、下痢や嘔吐はありませんか?」
「水分は取れていますか?」
「尿量が減っていませんか?」
「むくみが強くなっていませんか?」
「腎臓が悪いと言われたことはありますか?」
と確認すると実務的です。

高齢者にNSAIDsを使うときの注意点
高齢者では、NSAIDsの副作用が重く出やすくなります。
注意したいのは、胃腸障害だけではありません。
- 腎機能悪化
- 浮腫
- 血圧上昇
- 心不全悪化
- ふらつき
- 食欲低下
- 多剤併用による相互作用
- 抗血栓薬併用による出血リスク
など、複数のリスクを同時に見ます。
高齢者では、痛みを我慢させるのも問題ですが、NSAIDsを漫然と継続するのも危険です。
処方が出たときには、
- 何の痛みに使うのか
- 何日分出ているのか
- 定期使用なのか頓服なのか
- 腎機能は問題ないか
- 抗血栓薬を使っていないか
- 胃薬は必要か
- アセトアミノフェンや外用薬で対応できないか
を確認します。
特に「整形外科でNSAIDs、内科で抗血栓薬、循環器で利尿薬やARB」というように、複数診療科から薬が出ている患者では、お薬手帳の確認が重要です。
心血管リスクにも注意する
NSAIDsでは、心血管リスクにも注意が必要です。
特に以下のような患者では慎重に確認します。
- 心筋梗塞の既往
- 狭心症
- 脳梗塞の既往
- 心不全
- 高血圧
- 浮腫がある
- 高齢者
- 腎機能低下
NSAIDsは、血圧上昇や浮腫、心不全悪化に関わることがあります。
また、COX-2選択的阻害薬は胃腸障害を抑えやすい一方で、心血管リスクのある患者では注意が必要です。
つまり、胃にやさしそうだからといって、すべての患者にCOX-2選択的阻害薬がよいわけではありません。
胃腸リスクと心血管リスクの両方を見る必要があります。
抗血栓薬との併用に注意
NSAIDsは、抗血小板薬や抗凝固薬との併用で出血リスクが高くなることがあります。
注意したい薬には、以下があります。
- 低用量アスピリン
- クロピドグレル
- プラスグレル
- ワルファリン
- アピキサバン
- リバーロキサバン
- エドキサバン
- ダビガトラン
抗血栓薬を服用している患者にNSAIDsが追加された場合は、消化管出血リスクを必ず意識します。
服薬指導では、
「黒い便が出たら早めに相談してください」
「吐血や強い腹痛があれば受診してください」
「自己判断で市販の痛み止めを追加しないでください」
と伝えるとよいでしょう。
OTC販売時にも、お薬手帳で抗血栓薬の有無を確認することが大切です。
OTC NSAIDs販売時に確認したいこと
ロキソプロフェンやイブプロフェンは、OTC医薬品としても購入できます。
そのため、薬剤師は処方薬だけでなく、セルフメディケーションの場面でもNSAIDsのリスク評価を行う必要があります。
販売時に確認したいポイントは以下です。
- 何の痛み・発熱に使うのか
- いつから症状があるのか
- 何日くらい使う予定か
- 胃潰瘍や胃腸出血の既往はあるか
- 腎臓が悪いと言われたことはあるか
- 心臓病や高血圧はあるか
- 喘息はあるか
- 妊娠中・授乳中ではないか
- 抗血栓薬を飲んでいないか
- ほかの痛み止めや風邪薬を飲んでいないか
特に風邪薬には、NSAIDsが含まれていることがあります。
患者さんは「痛み止め」と「風邪薬」を別物として考えていることがあるため、成分の重複に注意が必要です。
NSAIDsとアセトアミノフェンの違い
痛み止めとして、NSAIDsとアセトアミノフェンはよく比較されます。
NSAIDsは鎮痛・解熱・抗炎症作用を持ちます。
一方、アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用が中心で、抗炎症作用は強くありません。
ざっくり整理すると、以下のようになります。
| 薬剤 | 鎮痛 | 解熱 | 抗炎症 | 胃腸障害 | 腎機能への注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| NSAIDs | あり | あり | あり | 注意 | 注意 |
| アセトアミノフェン | あり | あり | 弱い | NSAIDsより少なめ | 用量・肝機能に注意 |
炎症を伴う痛みではNSAIDsが有用な場面があります。
一方で、高齢者、腎機能低下、抗血栓薬併用、胃潰瘍既往などがある患者では、アセトアミノフェンや外用薬が選択肢になることがあります。
ただし、アセトアミノフェンも安全な薬というわけではありません。
肝機能障害、大量服用、飲酒習慣、複数製剤での重複には注意が必要です。
外用NSAIDsも確認する

NSAIDsは内服薬だけではありません。
ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェンなどは、湿布やゲル、テープ剤としても使われます。
外用薬は内服薬より全身性副作用が少ない傾向がありますが、まったくリスクがないわけではありません。
特に、
- 複数枚を広範囲に貼っている
- 長期間使っている
- 内服NSAIDsも併用している
- 高齢者
- 腎機能低下がある
- 皮膚障害が出ている
といった場合は注意が必要です。
また、ケトプロフェン外用薬では光線過敏症にも注意します。
貼付部位を紫外線に当てないよう説明し、使用後もしばらく注意が必要なことを伝えます。
薬剤師が服薬指導で確認したいポイント
NSAIDsが処方されたときは、以下を確認すると実務に役立ちます。
1. 何の痛みに使うのか
頭痛、歯痛、腰痛、関節痛、発熱、炎症性疼痛など、目的によって使い方が変わります。
慢性的な痛みに漫然と使っていないかも確認します。
2. 頓服か定期か
NSAIDsは頓服で短期間使うのか、定期で継続するのかによってリスクが変わります。
定期処方が続いている場合は、長期使用による胃腸障害・腎機能悪化に注意します。
3. 胃腸症状がないか
胃痛、胃もたれ、吐き気、黒色便、食欲低下などを確認します。
特に抗血栓薬を併用している患者では、黒色便の確認が重要です。
4. 腎機能リスクがないか
CKD、高齢者、脱水、利尿薬、ACE阻害薬、ARB、心不全などを確認します。
夏場、発熱、下痢、嘔吐時は脱水による腎機能悪化にも注意します。
5. OTCや風邪薬との重複がないか
患者さんが市販薬を追加していることがあります。
「ほかに痛み止めや風邪薬を飲んでいませんか?」と確認しましょう。
6. 自己判断で長く飲んでいないか
NSAIDsは短期間の使用が基本です。
症状が続く場合は、原因の評価が必要です。
「痛み止めでごまかしているうちに悪化していた」ということがないよう、受診の目安も伝えます。

まとめ

NSAIDsは、解熱・鎮痛・抗炎症作用を持ち、処方薬でもOTC医薬品でもよく使われる薬です。
しかし、胃腸障害、腎機能悪化、心血管リスク、抗血栓薬との出血リスク、高齢者での副作用など、注意すべき点も多くあります。
薬剤師が確認したいポイントは、以下です。
- 胃潰瘍や消化管出血の既往
- 抗血小板薬・抗凝固薬の併用
- 腎機能低下や脱水の有無
- 利尿薬、ACE阻害薬、ARBとの併用
- 心不全や心血管疾患の有無
- 高齢者での長期使用
- OTCや風邪薬との成分重複
- 外用NSAIDsも含めた使用状況
NSAIDsは「よく使う薬」ですが、「誰にでも気軽に使える薬」ではありません。
痛みを取ることも大切ですが、患者背景に合わせてリスクを見極めることが、薬剤師の重要な役割です。
参考文献
日本消化器病学会:消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/syoukasei2020_2.pdf
PMDA:医療用医薬品 情報検索
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
日本ペインクリニック学会:NSAIDsとアセトアミノフェン
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html
NSAIDsのように、患者背景を見ながらリスクを判断する場面では、薬剤師の知識と経験がそのまま服薬指導の質につながります。
一方で、人員不足や忙しさで、丁寧な確認や勉強の時間を取りにくい職場もあります。
今の職場で学び続けるのが難しいと感じる場合は、教育体制や相談しやすい環境がある薬局を探してみるのも一つの選択肢です。


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