貼り薬(外用剤)の使い方、間違っていませんか?

医薬品等解説

「貼るだけでいいから簡単」「内服より副作用が少ない」
そんなイメージから、貼り薬(外用剤)はあまり深く考えずに使われていることが多いかもしれません。ですが、実は貼り薬にも“正しい使い方”があります。使い方を間違えると、本来得られるはずの効果が発揮されなかったり、思わぬ副作用につながることもあります。

薬剤師として患者さんに関わる際、貼付剤の指導はつい軽視されがちですが、実はとても重要なポイントです。この記事では、貼り薬の正しい使い方や、よくある誤解、そして薬剤師としての指導の工夫までをわかりやすく解説します。



なぜ貼り薬の使い方に注意が必要なのか?

貼り薬は皮膚に直接貼ることで、成分を体内に届ける「経皮吸収型製剤」です。つまり、皮膚の状態や貼る場所、貼るタイミングによって吸収のされ方が大きく変わるのです。

例えば、汗をかいた状態や油分の多い肌の上に貼れば、吸収が悪くなりますし、同じ場所に繰り返し貼れば皮膚がかぶれやすくなります。また、必要以上に長時間貼ったり、複数枚同時に使えば、薬の量が過剰になり、副作用が起きるリスクも。

こうしたリスクは、患者さんが自己流で使ってしまった結果起こることが少なくありません。だからこそ、薬剤師の立場から、正しい貼り方をきちんと伝えることが大切なのです。



よくある貼り薬の“使い方の誤解”とそのリスク

患者さんの中には、次のような貼り方をしている方が少なくありません。

  • 「痛い場所に2枚重ねて貼っている」
     →成分が過剰に吸収され、副作用の原因になります。
  • 「貼ったままお風呂に入っている」
     →温熱効果で吸収が急激に高まり、かぶれや全身症状の原因になることも。
  • 「剥がれないようにばんそうこうやテープで固定している」
     →通気性が悪くなり、かゆみや湿疹を招くことがあります。
  • 「毎日同じ場所に貼っている」
     →皮膚が傷んで、貼れなくなることもあります。

これらはすべて、「簡単そうに見えるからこそ」起きやすい誤解です。

薬剤師としての声かけがなければ、患者さんはこうした誤解を持ったまま、長期間貼り薬を使い続けてしまう可能性があります。



正しく貼るための5つの基本ルール

① 貼る前に皮膚を清潔にする

理由:汗や皮脂が薬の吸収を妨げるため
皮膚が汚れていると、貼り薬の成分がうまく浸透せず、期待した効果が得られにくくなります。また、汚れた状態で貼ることでかぶれや皮膚炎の原因になることもあります。貼付前に皮膚を石けんで洗うか、濡れタオルで優しく拭き取り、清潔な状態にしてから使用しましょう。


② 体温が落ち着いてから貼る

理由:体温が高いと吸収が急激になり、副作用のリスクが上がるため
お風呂上がりや運動直後など、血流が良くなって体温が高い状態で貼ると、薬の吸収が急激に進み、思わぬ副作用(頭痛・めまい・吐き気など)が出ることがあります。体温が落ち着く30分後くらいを目安に貼るのが安全です。


③ 毎回貼る場所を変える

理由:皮膚トラブル(かぶれ・ただれ)を防ぐため
同じ場所に何日も連続して貼っていると、その部分の皮膚がダメージを受けてしまいます。皮膚の回復には時間が必要なので、貼付部位は左右交互にしたり、上下で少しずらしたりして皮膚を休ませるようにしましょう。


④ 貼る時間と枚数を守る

理由:過剰な吸収や副作用を防ぐため
「効かないからもう1枚」「剥がすのを忘れてずっと貼っていた」ということはありませんか?
貼付剤は、用量が厳密に設計されているため、決められた時間・枚数以上に使うと成分が過剰に吸収され、全身性の副作用(吐き気・動悸・胃の不快感など)につながることがあります。使用法の指示は必ず守りましょう。


⑤ 副作用のサインに気づいてもらう

理由:皮膚の異常を見逃すと悪化することがあるため
貼り薬による副作用の多くは「皮膚のかぶれ」ですが、放置するとただれや水ぶくれ、色素沈着などが残ることもあります。「赤くなった」「かゆい」「ヒリヒリする」といったサインがあったら、すぐに使用を中止して、医師や薬剤師に相談するように伝えましょう


このように、それぞれのルールには科学的根拠や臨床的な理由があります。単なる「ルールの押しつけ」にならないように、“なぜそれが必要なのか”をセットで伝えることが、服薬指導の質を高めるポイントです。



服薬指導における“声かけ”の工夫で効果アップ

貼り薬の指導は、単なる説明ではなく、継続的なフォローが求められる分野です。

「ちゃんと効いていますか?」「かゆみなど気になることはありませんか?」といった短い声かけでも、患者さんの気づきを促すことができます。

また、リウマチや神経痛、慢性腰痛などで長期使用されるケースでは、患者さん自身が「このくらいなら大丈夫」と思い込んで、自己流の使い方に変化してしまうことも。こうした時こそ、薬剤師の定期的な関わりが予防策になります


貼付剤指導の積み重ねが信頼につながる

服薬指導というと、つい「飲み薬」のイメージが強くなりますが、実は貼付剤や外用薬の指導こそ、患者さんに信頼される薬剤師になるための大きなチャンスでもあります。

「貼るだけだから」と見落とされがちな分野こそ、ていねいな説明が光ります。
貼り薬一つとっても、皮膚の状態、生活環境、貼るタイミングなどに合わせて細やかなアドバイスができる薬剤師は、現場でも重宝される存在です。



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