薬剤師が知っておくべき!プロトンポンプ阻害薬(PPI)の副作用と注意点

医薬品等解説

「この薬、よく見かけるな」と思ったことがある薬剤師の方も多いのではないでしょうか?
プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、逆流性食道炎や胃潰瘍、ヘリコバクター・ピロリの除菌など、幅広い用途で処方される非常に一般的な薬剤です。

しかし、「使い慣れた薬」だからこそ、思わぬ落とし穴に気づかず漫然と処方されていることもあります。
今回は、薬剤師として知っておきたいPPIの副作用とその注意点について、基本から解説していきます。



PPIとは?よく使われる薬とその作用

PPI(プロトンポンプ阻害薬)は、胃の中で酸を分泌する「プロトンポンプ」という酵素の働きを抑える薬です。
これにより、胃酸の分泌が抑えられ、胃や食道の炎症が改善されます。

主なPPIには以下のような薬があります。

  • オメプラゾール(オメプラール®など)
  • ランソプラゾール(タケプロン®など)
  • エソメプラゾール(ネキシウム®)
  • ラベプラゾール(パリエット®)
  • ボノプラザン(タケキャブ®)※PPIと類似する作用を持つP-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)

これらは効果が強く、服薬回数も1日1回で済むことから、長期的に処方されるケースも少なくありません



長期使用で気をつけたいPPIの副作用

「よく使われているし、副作用も少ないのでは?」と思われがちですが、PPIには長期使用による副作用がいくつか報告されています。

鉄欠乏性貧血

鉄をの吸収にも胃酸が重要な役割を果たしています。PPIによって胃酸の分泌を抑制することで鉄の吸収を阻害することにもつながる可能性があるので、鉄欠乏性貧血の発症にも注意が必要です。

低マグネシウム血症

PPIの使用により腸管からのマグネシウム吸収が抑えられ、低マグネシウム血症を引き起こすことがあります
重症化すると、痙攣、不整脈、意識障害といった症状に発展することもあります。また、便秘の治療として使われる酸化マグネシウムは、PPIと併用することで便秘予防効果が阻害されることが報告されています。

参考:https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00568/

ビタミンB12欠乏

胃酸が不足することで、ビタミンB12の吸収が悪くなり、ビタミンB12欠乏性貧血や神経症状を引き起こすリスクもあります。ビタミンB12を吸収するためには、食物中のビタミンB12が胃に存在するタンパク質分解酵素によって分離される必要があります。これらの酵素は、胃液に含まれる内因子と結合する必要があり、PPIによって胃酸の分泌が抑制されるとビタミンB12がうまく吸収できなくなることも考えられます。

腸管感染症

胃酸は食中毒や腸内病原菌に対する防御機構のひとつですが、PPIで胃酸が抑えられると、腸内で病原菌が増殖しやすくなります
特に、サルモネラ菌やカンピロバクター、ビブリオなどは酸に弱く、胃酸によって死滅しますが、PPIによって胃酸のpH上昇すると腸管で増殖するリスクが高くなることが考えられます。



短期でも油断は禁物。一般的な副作用も把握を

長期的な影響ばかりでなく、短期間の使用でも起こりうる副作用にも目を向けましょう。

  • 消化器症状:下痢、便秘、腹部膨満感
  • 中枢神経系:頭痛、めまい、眠気
  • 皮膚症状:発疹、かゆみ、光線過敏症
  • 過敏反応:アナフィラキシー様反応(まれ)

日常的に使用されるPPIですが、「副作用が出にくい薬」と過信せずに服薬状況を確認し、症状の変化や不調の訴えには敏感に反応することが大切です。


副作用を防ぐために薬剤師ができること

処方内容のチェックポイント

  • 「長期連用」になっていないか
  • 貧血や腸内環境への影響がある患者では特に慎重に
  • PPIの必要性や中止のタイミングについて医師と連携を取る

患者への説明の工夫

患者はPPIを「胃を守る薬」「安全な薬」と思っていることが多いです。
そのため、「胃薬だからずっと飲んでいても大丈夫」と思い込んでいることもしばしば。

そんなとき、薬剤師として以下のような声かけが有効です。

「PPIは効果の強い薬なので、定期的に見直しながら飲むことが大切です」
「長く飲んでいると、骨がもろくなったり、感染症にかかりやすくなることもあるんです」

このような説明をすることで、患者が「今の薬を見直す必要性」に気づくきっかけになります。



PPIを「知った気」で終わらせないために

薬剤師としてPPIを取り扱う機会は非常に多いですが、慣れてしまうことで“漫然としたチェック”になっていないか、自問してみることも大切です。

副作用の知識や処方意図を理解したうえで関われるようになると、医師へのフィードバックや処方提案のレベルも上がり、チーム医療での信頼感も高まります

参考URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/1/112_10/_pdf/-char/ja

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