オレキシン受容体拮抗薬(DORA)ってどんな薬?

不眠症の治療では、長年ベンゾジアゼピン系やZ薬といった「脳の興奮を鎮めるタイプの睡眠薬」が使われてきましたが、ふらつき・依存・呼吸抑制などの副作用が課題でした。
それに対して、近年登場したオレキシン受容体拮抗薬(DORA)は、「オレキシン」という覚醒を促す物質の働きをブロックして、自然に近い眠気を引き出す新しいタイプの睡眠薬です。
体にやさしく、高齢者や長期使用が必要な患者にも使いやすいという特長があります。
3つの薬を簡単に比べてみよう

DORAに分類される薬には、日本で使えるものとして以下の3つがあります。
- ベルソムラ(スボレキサント):2014年に登場した日本初のDORAで、長く使われている実績があります。
- デエビゴ(レンボレキサント):寝つきの悪さと夜中の目覚めの両方に効果があり、幅広い年代に対応しやすい設計です。
- クービビック(ダリドレキサント):最も新しい薬で、翌朝のスッキリ感を重視した作りが特徴です。
比較ポイント
比較項目 | ベルソムラ | デエビゴ | クービビック |
登場年 | 2014年 | 2020年 | 2024年 |
用量の目安 | 10〜20mg | 2.5〜10mg | 25〜50mg |
半減期 | 約10時間 | 約50時間(BZ系とは異なり、半減期の長さと睡眠時間の長さは関係ないとされる) | 約8時間 |
翌朝の眠気 | ややあり | 少なめ | 非常に少ない |
特徴 | 実績が長い | 夜中の目覚めにも効果 | 朝スッキリしやすい設計 |
それぞれ、作用時間や副作用の出やすさが異なるため、患者さんの生活スタイルや体質に応じた使い分けが求められます。
ベルソムラ(スボレキサント)の特徴

ベルソムラは中途覚醒(夜中に目が覚めてしまう)を改善しやすく、長く処方されてきた薬です。ただ、レム睡眠(夢を見る睡眠)が増える影響で、悪夢や金縛りなどの症状が出ることがあります。
また、寝る直前の服用が必須で、食事や薬との組み合わせにも注意が必要です。とくにクラリスロマイシンなど一部の抗菌薬と併用すると、効果が強くなりすぎるおそれがあります。
- 就寝直前の服用が大原則(早めに飲むと朝残りやすい)
- 食事、特に脂っこい食事の後は効きにくくなる
- 抗菌薬クラリスロマイシンなどと併用すると効きすぎのリスク
- 悪夢や異常行動の有無を家族と共有しておくと安心
デエビゴ(レンボレキサント)の特徴

デエビゴは入眠困難と中途覚醒の両方に対応できる薬で、長時間作用しながらも翌朝の眠気が少ない設計になっています。
2.5mgから使える少量製剤があり、高齢者や体格の小さい方にも安心して使いやすい点が魅力です。
ただし、効果が長く続くぶん、寝る時間が毎日バラバラの方では翌日の眠気が出る可能性があるため、使用状況をしっかり確認することが大切です。
- 入眠と中途覚醒の両方に効果あり
- 翌朝の眠気は出にくい設計
- 少量錠剤あり(2.5mg)で調整しやすい
- 飲酒と併用するとふらつきや認知低下のリスク
- 寝る時間が不規則な人は注意(効果が長く続くため)
クービビック(ダリドレキサント)の特徴

クービビックは、3剤の中で最も短く効く薬です。翌朝に眠気が残りにくく、朝から仕事や運転を控えている人に向いています。
また、海外の試験では「日中の活力や集中力が高まった」とする結果もあり、単に眠るだけでなく日中のパフォーマンス改善にも配慮された薬です。
ただし、食後すぐに飲むと効果が遅れるため、必ず寝る直前に服用するよう説明する必要があります。
- 半減期が短く、翌朝の眠気が少ない
- 日中の集中力や活力アップも期待されている
- 食後すぐに飲むと効き始めが遅れる→就寝直前の服用がベスト
- 高用量(50mg)は転倒・ふらつきに注意、高齢者は25mgから
どれを選べばいい?薬剤師が考える使い分けのヒント

それぞれの薬には強みがあるため、患者の状態や希望に応じて最適なものを選ぶことが大切です。以下のような視点で考えると選びやすくなります。
選び方の目安:
- 翌朝にスッキリ起きたい → クービビック
- 夜中に何度も目が覚める → デエビゴ
- 実績があり、費用も抑えたい → ベルソムラ
合わない場合は、いきなり薬を変えるのではなく、まず用量を減らして様子を見るのがおすすめです。
飲み方とフォローのポイント

DORAは「正しい使い方」を守ることで、効果がしっかり出て、副作用も防げます。
患者さんへの説明では、以下の点を丁寧に伝えるようにしましょう。
服薬指導のポイントまとめ:
- 寝る直前にコップ半分程度の水で服む
- 食後2時間ほどあけてから服用すると効果が出やすい
- 初回は休前日に服用し、翌朝の状態をチェック
- 家族にも「異常行動」(寝ぼけて歩く・話すなど)があったら教えてもらうよう依頼
- 睡眠日誌アプリやメモで服用時間や起床時間を記録してもらうと、効果確認がしやすい
家族がいる患者さんには、寝ぼけたような行動(夢遊状態)が見られた場合に備えて、早めに相談するよう伝えると安心です。
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