2025年度の薬学部動向:姫路獨協大学の募集停止と順天堂大学の新設

薬剤師が解説

1. はじめに

2025年度の薬学部をめぐる動向が注目を集めています。姫路獨協大学が薬学部の募集を停止する一方で、順天堂大学が新たに薬学部を開設するという大きな変化が起こります。本記事では、これらの動きがもたらす影響や背景を掘り下げていきます。


2. 姫路獨協大学の薬学部募集停止の背景と理由

募集停止の概要

姫路獨協大学は、2025年度から薬学部の新入生募集を停止することを発表しました。すでに在籍している学生には卒業までの教育が提供されますが、今後、新たな学生の受け入れは行われません。

東証プライム市場上場グループ会社による薬剤師転職サポート【アポプラス薬剤師】

理由と背景

  • 学生募集の苦戦:近年、少子化の影響により大学全体で学生の確保が難しくなっています。特に、私立の地方大学ではこの影響が顕著で、薬学部も例外ではありません。姫路獨協大学薬学部の入学者数は2018年度以降から低迷を続け、定員充足率についても50%を下回っている状態でした。
  • 経営戦略の見直し:薬学部は6年制のため学費負担が大きく、充足率低下の要因の一つです。運営にも多額の費用がかかり、学生確保の見込みのない薬学部は大学の経営にも負担です。また、定員充足率が50%を下回る学部が一つでもある大学は国からの補助金確保にも影響します。教育リソースや施設維持費用の負担が大きいことも、募集停止の要因と考えられます。
  • 近隣の競合増加:近隣の大学にも薬学部を設置している大学があり、競争が激化していることも考えられます。大学側は、より効率的な経営資源の配分を行うため、戦略的な決定をしたと考えられます。

3. 順天堂大学の薬学部新設の背景と狙い

新設の概要

一方、順天堂大学は2025年度に薬学部を新設することを発表しました。東京を拠点とする順天堂大学は、医学部や保健医療学部など医療分野に強い大学として知られており、薬学部の新設はその戦略をさらに強化する動きといえます。

理由と狙い

  • チーム医療の推進:順天堂大学は、医療系学部が充実しており、医学部や医療看護学部、保健医療学部などと連携した「チーム医療」の教育が期待されます。薬剤師がチーム医療において重要な役割を果たす中で、大学内の多職種連携が強化されるでしょう。
  • 東京エリアの需要の取り込み:東京の大学である順天堂大学は、アクセスが良く、学生を全国から集めやすい地理的な優位性があります。特に、首都圏の薬剤師需要は依然として高いと考えられ、就職率の高さがアピールポイントになる可能性があります。
  • 国際的な教育展開の強化:順天堂大学は、海外の医療機関や大学とも連携しており、薬学部の新設によって国際的な教育プログラムの提供が期待されます。

4. 薬学部を取り巻く環境の変化

薬学部の定員適正化の流れ

  • 全国的な定員適正化の動き:文部科学省は、薬学部の定員を見直す動きを進めています。令和3年の厚生労働省の検討会において現状の入学定員を維持した場合、薬剤師の供給過剰が起きる懸念が示されました。薬剤師の待遇面を含む就職先の確保と優秀な学生の確保が難しいことから、薬学部の定員を見直すことになりました。
  • 国家試験の合格率と難易度の変化:薬剤師国家試験は難化傾向が続いており、合格率も年々変動しています。定員が多すぎると、国家試験の合格率が低下するリスクがあるため、大学側も定員適正化の必要性を感じています。

薬剤師の需要の変化

  • AI・DXの影響:AIや自動調剤機器の普及により、薬剤師の業務が一部自動化されつつあります。ただし、医療の高度化に伴い、患者への服薬指導や対人業務の需要は引き続き高い状況です。
  • 医療の高度化と専門薬剤師のニーズ:がんや糖尿病など、専門性の高い医療分野では、専門薬剤師の需要が高まっています。順天堂大学のように、医学部との連携が進む大学は、専門薬剤師の育成にも力を入れると考えられます。

5. 受験生や保護者への影響

進学先の選択肢の変化

  • 姫路獨協大学を志望していた受験生の動向:姫路獨協大学を志望していた受験生は、近隣の他大学に志望先を切り替える必要があります。競合する大学の受験倍率が上昇する可能性もあります。
  • 順天堂大学の新設に伴う魅力的な選択肢の増加:首都圏での薬学部進学を目指す受験生にとって、順天堂大学の新設は新たな選択肢となります。特に、チーム医療に興味がある受験生にとっては、魅力的な進学先になるでしょう。

保護者の視点からの影響

  • 経済的負担の変化:地方大学から首都圏の大学へ進学する場合、学費以外に生活費が増加するため、家庭の負担が大きくなります。逆に、順天堂大学のような都心部の大学が選択肢に加わることで、地方からの上京を避けられるケースも出てくるかもしれません。

6. まとめ

2025年度は、姫路獨協大学の薬学部募集停止と、順天堂大学の薬学部新設という大きな変化が生じます。少子化に伴う定員適正化の流れの中、地方大学では募集停止が進む一方で、首都圏では薬学部の新設と学生の集中がみられます。

受験生や保護者にとっては、進学先の選択肢が変わる重要な局面です。特に、チーム医療を学びたい学生にとっては、順天堂大学の新設は大きなチャンスになるでしょう。一方で、地方の大学を志望する場合は、学生の充足率や留年率、薬剤師国家試験の合格率などにも注目した方が良いでしょう。


薬剤師の転職・派遣はファル・メイト


コメント

タイトルとURLをコピーしました