サルコペニアが気になる高齢者に薬剤師は何を見る?栄養・運動・薬の確認ポイント

薬剤師が解説
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「最近、立ち上がりにくくなった」「食事量が減ってきた」。高齢者からこうした話を聞いたとき、薬局では何を確認すればよいでしょうか。

先に結論をいうと、薬剤師の役割はサプリメントを一律に勧めることではありません。
身体機能と食事の変化を拾い、薬が症状に関係していないかを確認し、医師・管理栄養士・リハビリ職へつなぐことです。本記事では、サルコペニアの「疑い」に気づいた後の実務を整理します。

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サルコペニアの疑いに気づく:薬局で聞くこと

サルコペニアは筋肉量だけでなく、筋力や身体機能の低下も含めて評価します。アジア人を対象としたAWGS
2019では、地域での拾い上げに下腿周囲長、SARC-Fなどを用い、その後の評価へつなげます。スクリーニングの結果だけで診断を確定するものではありません。

服薬指導や訪問では、まず次の変化を聞くと実務につながります。

確認すること 患者・家族への聞き方の例 次に確認すること
動作 「椅子から立ち上がりにくくなりましたか」 いつからか、転倒の有無、急な悪化か
食事 「この1か月で食べる量や体重は変わりましたか」 体重推移、食事内容、嚥下・口腔の問題
生活 「買い物や歩く距離は変わりましたか」 病気・痛み・息切れ、活動量の変化
薬と健康食品 「眠気やふらつきはありませんか。プロテインなどは使っていますか」 開始・増減時期、他院処方、OTC、サプリ

急な脱力、意識の変化、急速な体重減少などは「加齢による筋力低下」と片づけず、病状の評価が必要です。薬局での気づきは診断ではなく、受診や多職種評価につなぐ入口と考えましょう。

対策の基本は食事と運動:サプリメントをどう考える?

サルコペニア対策の中心は、食事・栄養状態の評価と、本人の状態に合わせた運動です。日本サルコペニア・フレイル学会の診療ガイドラインは、レジスタンストレーニングを含む運動と栄養の組み合わせを推奨しています。運動の可否や内容は、転倒リスクや心疾患などを踏まえて医師・リハビリ職と検討します。

相談されたもの 薬局での判断軸
プロテイン・経口栄養補助食品 まず食事量と不足する栄養を確認。食事の代わりとして漫然と追加せず、管理栄養士と相談する
HMB・アミノ酸 研究はあるが、製品を飲めば運動・食事を代替できるわけではない。期待する効果と費用を確認する
ビタミンD 欠乏の有無、既存の処方・サプリとの重複、腎機能やカルシウム関連の病歴を確認する

たんぱく質やHMB、ビタミンDの量を全員に同じ数字で提示しないことが重要です。栄養管理ガイドライン2025でも、対象や併存疾患によって根拠と推奨が異なります。慢性腎臓病(CKD)があれば、腎機能と低栄養・フレイルの両方を見て個別に目標を決めます。KDIGO
2024も、高齢のCKD患者でフレイル・サルコペニアがある場合は、より高いエネルギー・たんぱく質目標を検討するとしています。「腎機能が悪いから一律に控える」とも、「筋肉のために一律に増やす」とも判断できません。

腎機能の見方はCKDの記事でも整理しています。

薬剤師が見直したい薬:ふらつき、食欲低下、脱水

サルコペニアを治す目的で承認された薬はなく、テストステロンや選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)を一般的な「治療の選択肢」として紹介するのは適切ではありません。漢方薬もサルコペニアの標準治療として一律に追加するものではなく、各製剤の適応と安全性を個別に確認します。

薬剤師には、すでに使っている薬が食事や活動を妨げていないかという視点があります。

気になった変化 薬学的な確認例 共有したい情報
眠気・ふらつき・転倒 睡眠薬、抗不安薬などの使用状況と開始・増量時期 転倒時刻、服薬時刻、日中の眠気
口渇・立ちくらみ・体重変動 利尿薬や降圧薬の服用状況、血圧・浮腫、飲水・食事状況 血圧、体重推移、浮腫・息切れの有無
食欲低下・胃部不快・服薬負担 新しく追加された薬、服用回数、便秘・口腔症状 いつから食べられないか、残薬と摂取量

たとえば心不全で利尿薬を使う方の立ちくらみは確認したい一方、体重変化だけで自己判断の減量・中止はできません。むくみや息切れを含む病状、血圧や検査値、処方意図を合わせて医師に伝えます。ループ利尿薬の比較も参考にしてください。

在宅で共有するなら「変化」と「薬の時間軸」をセットに

多職種への報告では「筋力が落ちたようです」だけよりも、判断に使える情報をまとめます。

共有例:2週間ほど前から食事量が半分程度になり、椅子からの立ち上がりが難しくなった。直近1か月で転倒1回。睡眠薬の変更時期、利尿薬の服用時刻、体重・血圧の推移、むくみ・息切れの有無を確認中。食事・身体機能の評価をお願いします。

これは報告文の例であり、実在患者の症例や改善実績ではありません。医師には病状・薬の再評価を、管理栄養士には摂取量と栄養目標の確認を、理学療法士などには安全な身体機能評価や運動の検討を依頼します。薬剤師は経過を薬歴に残し、次回も同じ項目を追います。

在宅での観察と連携の実際は、往診同行で処方を見直した経験でも紹介しています。

まとめ|薬局では3つの順で確認する

  1. 立ち上がり・歩行・体重・食事量などの変化を拾う。
  2. 処方薬、OTC、サプリメントと症状の時間的な関係を確認する。
  3. 食事・運動・病状評価が必要な情報を医師や他職種へ共有する。

「サルコペニアに効くものを一つ勧める」より、患者さんの生活の変化を薬学的に読み解くことが、薬剤師にできる支援です。在宅医療に携わる薬剤師の仕事内容では、こうした多職種連携を含む働き方を紹介しています。

参考文献

  • Asian Working Group for Sarcopenia. 2019 Consensus Update on
    Sarcopenia Diagnosis and Treatment.
    Checking your browser - reCAPTCHA
  • 日本サルコペニア・フレイル学会.サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント.https://www.jasf.jp/contents/guidelines.html
  • 日本臨床栄養学会・日本サルコペニア・フレイル学会.Nutritional
    Management Guidelines for Sarcopenia and Frailty 2025.
    Just a moment...
  • KDIGO. 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and
    Management of Chronic Kidney Disease, Executive Summary.
    https://kdigo.org/wp-content/uploads/2017/02/KDIGO-2024-CKD-Guideline-Executive-Summary.pdf

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