顧客の「困った」をカタチにする|薬局製剤で叶える15のニーズ対応術

薬剤師の働き方

「市販薬では物足りないけれど、病院に行くほどでもない…」
そんな日常の“ちょっとした不調”に、あなたの薬局が応えられたら――それは確かな信頼とリピートにつながります。

そのカギとなるのが、薬局製剤
薬局で独自に製造・販売できる医薬品で、患者さんの身近な困りごとに“その場で”応えられる手段です。

この記事では、薬局製剤の基本から、実際に患者ニーズにマッチする6の具体例、そして製剤化の導入ステップまでを、薬剤師目線で丁寧に解説します。



薬局製剤とは?|今あらためて注目される理由

薬局製剤とは、薬局が一定の条件を満たしたうえで自ら製造・販売できる医薬品のことです。厚生労働省の「薬局製剤指針」に収載された処方に基づき、地域の実情に合わせた製剤を提供することができます。

  • 2024年5月時点:承認製剤421品目、届出製剤9品目=計430品目
  • 改正ではアズレンスルホン酸Na、薬用炭などが追加
  • 公衆衛生・在宅医療・高齢者対応など、ニーズに即したアップデート

ただし、現状では約75%の薬局が「取り扱っていない」とも言われています。その背景には「採算が取れない」「人手が足りない」などの課題がある一方で、ニッチで高い需要に応えられる“地域密着型サービス”として再注目されています。



顧客のニーズに応える!薬局製剤アイデア6選(根拠あり)

以下に紹介する製剤は、いずれも厚生労働省が定める「薬局製剤指針」に収載されている処方に基づいており、法的・技術的に製造・販売が可能なものです。薬剤師が地域ニーズに応じて導入することで、患者満足度や薬局の専門性を高めることができます。



1. のどの痛みに|アズレン含嗽液

【薬局製剤指針:歯科口腔用薬6】
アズレンスルホン酸ナトリウムは抗炎症作用があり、咽頭痛・咽頭の腫れ・口腔粘膜炎の症状緩和に有効です。うがい薬として広く知られ、刺激が少ないため小児や高齢者でも使いやすいのが特徴です。

提案のポイント:

  • 冬季・花粉症シーズンのカウンター提案に最適
  • 使用方法(15秒うがい、1日数回)を記した説明カードを添付
  • 加湿器との併用で「のどケアセット」として展開も可

2. 虫刺され・皮膚炎に|ヒドロコルチゾン・ジフェンヒドラミン軟膏

【薬局製剤指針:外皮用薬36】
0.1%のヒドロコルチゾン(ステロイド)と、かゆみ止めのジフェンヒドラミンを配合した軟膏。ステロイド含有量が非常に低く、小児にも比較的安心して使用できます。

提案のポイント:

  • 「子ども用のお守り軟膏」としてネーミング提案
  • 市販薬(プレドニゾロンやデキサメタゾン配合)との差別化
  • 虫刺され・湿疹・軽度のかぶれに有効

3. 肩こり・筋肉痛に|インドメタシン1%外用液

【薬局製剤指針:外皮用薬30】
インドメタシンはNSAIDsに分類される消炎鎮痛成分。局所的な炎症・痛みを鎮める作用があり、肩こりや腰痛、関節痛に有効です。液状タイプは貼付剤が使いづらい場面で活躍します。

提案のポイント:

  • ロールオン容器への充填で「デスク用湿布」として展開
  • 整形外科で湿布を処方されない方への代替提案に
  • 洗浄・乾燥後の清潔な肌への使用を促す指導



4. 水虫・皮膚カンジダに|クロトリマゾール液

【薬局製剤指針:外皮用薬75】
抗真菌薬であるクロトリマゾールを主成分とする液状製剤。皮膚白癬、足の指の間のジュクジュク、外陰部カンジダなどの軽度感染に使用されます。

提案のポイント:

  • 軽度の症状や初期の水虫に「家庭でできるケア」として紹介
  • 足洗い指導・清潔習慣との組み合わせで再発予防へ
  • クリームに比べて塗布しやすく、高齢者にも好まれる

5. 入れ歯・口内炎の殺菌に|ポビドンヨード・グリセリン液

【薬局製剤指針:歯科口腔用薬7】
殺菌作用を持つポビドンヨードと、粘膜保護作用のあるグリセリンを組み合わせた製剤です。入れ歯使用者の口腔清掃や、軽度の口内炎に有効です。

提案のポイント:

  • 「ぬるタイプのうがい薬」として塗布・含嗽両用を説明
  • ドライマウス対応ジェルと併用で高齢者に好適
  • ヨウ素アレルギーの有無を必ず確認



6. 乾燥・褥瘡周囲の皮膚保護に|ステアリン酸・グリセリンクリーム(U・E・Hクリーム)

【薬局製剤指針:外皮用薬62-①】
ステアリン酸・グリセリンをベースに、皮膚の保湿とバリア機能を補助するクリーム。褥瘡周囲、乾燥肌、刺激性皮膚炎の予防に使えます。

提案のポイント:

  • 訪問服薬時に試供としてミニサイズを提供
  • パッチテストを併せて皮膚刺激を確認
  • 看護師と連携して褥瘡予防チームに貢献

参考資料:https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/iryokusuri/yakuji/yakuji/kanrisya.files/kyokusei-2.pdf



薬局製剤の“売れる種”を見つける3ステップ

① 検索トレンドを活用

Google Search ConsoleやSNSで「乾燥」「胃痛」「消毒液」などのキーワードを調べると、季節や社会情勢ごとのニーズが見えてきます。

② 店頭相談を“資産化”する

日々のカウンターで受ける患者相談内容をスタッフで共有。1日3回以上ある相談は、製剤化のチャンスです。

③ 小ロット試作→リピート確認

初期は20~30個のミニロットでテスト販売。使用後のアンケートを取って、2週間以内にリピート希望が30%を超えれば継続販売へ。



製造・販売の実務ポイント

  • 製造販売承認 or 届出
     都道府県に様式22または39で申請。
  • 製造設備と記録
     専用の調製スペース、SOP掲示、記録簿整備が必要。
  • 苦情・副作用対応体制
     GVP(医薬品安全管理)の簡易版として、相談記録・対応手順を用意。
  • コスト設計
     1製剤あたりの原価(成分+容器+人件費)から、粗利40%以上を目安に価格設定。
  • 販売促進ツール
     患者説明カード、SNS紹介、OTC棚での動画QRコード連動など、情報と体験の組み合わせが効果的。



まとめ|薬局製剤は「信頼を生む医薬品」

薬局製剤は、ただの“自家製の薬”ではありません。
地域の人の「こういうの、どこかにあればいいのに」という声に応える、小さなオーダーメイド医療です。

採算や手間を理由に敬遠されがちな分野ではありますが、だからこそ今取り組めば大きな差別化と信頼構築につながります。薬局製剤というツールを活かして、あなたの薬局を「選ばれる場所」に変えていきましょう。


参考URL

京都市:薬局製造販売医薬品(薬局製剤)関連の告示及び通知の改正について

​​https://www.yuyama.co.jp/4296/?utm_source=chatgpt.com

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202406027A-sokatsu.pdf?utm_source=chatgpt.com
薬局製剤指針の一部改正

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