近年、薬局業界では業務負担の増加や人手不足が大きな課題となっています。患者数の増加に加え、在宅医療の普及や高度な服薬指導の必要性が高まり、薬剤師の業務はますます多忙になっています。そのため、限られた時間の中で効率的に業務を進めることが求められています。
そこで注目されているのが、電子薬歴やICT（情報通信技術）を活用した業務の効率化です。従来の手書きによる記録やアナログな管理方法ではなく、デジタルツールを活用することで、作業時間の短縮・業務の正確性向上・患者サービスの向上を図ることができます。
本記事では、電子薬歴の活用方法やICTを取り入れた業務改善のポイントについて解説します。
電子薬歴の活用で業務効率を上げる
電子薬歴とは？そのメリット
電子薬歴とは、従来の紙薬歴をデジタル化したシステムです。患者の服薬情報や指導内容をパソコンやタブレットに入力・管理することで、以下のようなメリットがあります。
① 記録のスピードが向上する
紙の薬歴では手書きで記録するため、時間がかかりミスも発生しやすくなります。一方、電子薬歴を使えばテンプレートや定型文を活用して、素早く入力できます。さらに、音声入力を活用すれば、入力時間を大幅に短縮できます。
② 情報の検索が簡単
紙の薬歴では過去の記録を探すのに時間がかかりますが、電子薬歴ならキーワード検索で必要な情報をすぐに見つけることができます。特に、慢性疾患の患者の服薬履歴をすぐに確認できるのは、大きな利点です。
③ 他の医療機関や多職種との連携が容易
電子薬歴を使えば、在宅医療の情報共有や病院・クリニックとの連携がスムーズになります。紙に印刷することで、資料の配布もしやすくなり、クラウドに対応している場合は、データ転送も簡単にできます。
電子薬歴の活用事例
実際に電子薬歴を活用して業務を効率化する方法を紹介します。
① 定型文・テンプレートの活用
電子薬歴には、よく使う服薬指導の内容をテンプレートとして保存できる機能があります。例えば、高血圧の患者向けの指導内容や、糖尿病患者向けの注意点をあらかじめ登録しておけば、入力の手間が大幅に減ります。
② 音声入力機能の活用
電子薬歴の中には、音声で指導内容を記録できるシステムもあります。これを活用すれば、手書きやキーボード入力の時間を削減し、よりスムーズに業務を進めることができます。
③ 自動アラート機能の活用
電子薬歴のシステムには、薬の飲み合わせや副作用に関するアラート機能が備わっているものもあります。これにより、処方内容のチェックがスムーズになり、ヒューマンエラーを減らすことができます。
ICTツールを活用した薬局業務の効率化
電子処方箋とオンライン服薬指導
① 電子処方箋のメリット
電子処方箋は、従来の紙の処方箋をデジタル化したものです。導入することで、以下のようなメリットがあります。
• 処方箋の紛失リスクを軽減
• 薬局での入力ミスを防止
• 患者の待ち時間を短縮
特に、事前に患者の処方内容を確認できるため、薬の準備を効率よく進められます。
② オンライン服薬指導の活用
オンライン服薬指導を活用すれば、患者が薬局に来店せずに薬の説明を受けられるため、対面対応の負担を減らせます。特に、在宅医療や遠方の患者にとって便利なシステムです。
3-2. 薬局業務に役立つICTツール
① 在庫管理システムの導入
ICTを活用した在庫管理システムを導入すると、以下のような業務の効率化が可能になります。
•リアルタイムで在庫状況を確認
•発注作業を自動化
•薬の過不足を防止
② AIチャットボットの活用
薬局の問い合わせ対応には時間がかかりますが、AIチャットボットを活用すれば、よくある質問への対応を自動化できます。これにより、薬剤師の負担を軽減し、対面業務に集中できます。
③ 電子決済システムの導入
キャッシュレス決済を導入することで、会計処理のスピードが向上し、患者の待ち時間を短縮できます。さらに、会計ミスの防止にもつながります。
クラウドシステムを活用した情報共有
クラウド型の電子薬歴や在庫管理システムを導入すれば、複数の薬剤師がリアルタイムで情報を共有できます。在宅医療の現場でも、患者の最新データをスムーズに確認できるため、より適切な医療提供が可能になります。
ICT導入の課題と対策
① コストの問題
ICTシステムの導入にはコストがかかりますが、補助金や助成金を活用することで負担を軽減できます。
② スタッフの教育
ICTツールをうまく活用するためには、スタッフの教育、研修が必要です。導入前にしっかりと研修を行い、スムーズな運用を目指しましょう。
③ ICT導入と患者対応のバランス
デジタル化が進む一方で、患者との対面対応の質を落とさないようにすることが重要です。ICTはあくまで業務をサポートするツールとして活用し、患者対応の時間を確保することが大切です。
まとめと今後の展望
電子薬歴やICTを活用することで、薬剤師の業務効率を向上させ、患者対応の質を高めることができます。今後さらにデジタル技術が進化し、より便利なツールが登場するでしょう。まずは導入しやすいシステムから試し、少しずつ業務の効率化を進めていくことをおすすめします。
コメント