薬剤師が今日からできるルート設計アプリ活用術
はじめに ― 訪問件数が増えて「移動ばかりで1日が終わる」と感じていませんか?

近年、在宅医療のニーズが急速に高まっています。高齢化の影響により、自宅で薬の説明や服薬管理を希望する患者さんが増えており、薬局から1日に10件以上のお宅を訪問することも珍しくありません。
しかし、訪問業務が増えると薬剤師からはこんな声が聞こえてきます。
- 「移動だけで1日が終わってしまう」
- 「交通トラブルで次の訪問に遅れた」
- 「薬歴を書く時間が取れず、残業が続く…」
このような負担を減らすために注目されているのが、「ルート設計アプリ」です。
今回は、移動のストレスを減らし、業務の効率化と患者満足度の向上を同時に実現するルート設計アプリについて、基礎からわかりやすくご紹介します。
1. なぜ移動が負担になるのか?薬剤師が直面する3つの課題

【1】訪問順がバラバラで遠回りになっている
手作業で訪問先を並べると、近い場所を後回しにしてしまうなど、非効率なルートになることがあります。1件ごとのロスは小さくても、1日で1時間以上のロスになることも。
【2】交通状況をリアルタイムで把握できない
渋滞や電車の遅延など、その日の交通状況に応じた対応が難しいと、次の訪問先への到着が遅れてしまい、患者さんに迷惑をかけることになります。
【3】訪問ごとの「滞在時間」を考慮していない
すべての訪問が同じ時間で終わるとは限りません。服薬指導に時間がかかる患者さんもいれば、ご家族との相談が必要な場合もあります。所要時間をあらかじめ設定しないと、次の訪問に影響してしまいます。
2. 「ルート設計アプリ」ってなに?

ルート設計アプリは、複数の訪問先をできるだけ短い距離・時間で回るための順番を自動で決めてくれるアプリです。地図アプリの進化版と思っていただいてOKです。
主な機能は以下の通りです。
機能 | できること | こんな時に便利 |
訪問順の自動計算 | 複数の住所を入力すると、最も効率的な順番を表示してくれる | 遠回りや無駄な移動を減らしたい |
交通情報の反映 | 渋滞・工事・電車の遅延などを自動で考慮 | 到着が遅れないようにしたい |
滞在時間の設定 | 1件ごとの滞在時間(15分、30分など)を入力できる | 指導時間に合わせてスケジュール調整したい |
地図共有・チーム連携 | 複数人で訪問する場合、ルートや到着予定を共有できる | 情報共有をスムーズにしたい |
✏️ 専門用語をわかりやすく言い換えると…
- 「ルート最適化」=最も効率のよい回り方を考えること
- 「走行ログ」=訪問したルートと時間を記録したメモ
3. 薬局でも導入しやすい!おすすめのルート設計アプリ

アプリ名 | 特徴 | 月額料金の目安 | 向いている薬局 |
Google マップ+マイマップ | 操作が簡単で無料 | 無料 | とにかく手軽に試してみたい |
NAVITIME ルート共有 | 車・徒歩・電車の混在に強い | 約2,000円 | 都市部や公共交通を使う |
MapFan Assist | 渋滞の履歴から予測が正確 | 約4,000円 | 車移動が多い |
ほとんどのサービスは無料トライアルがあるので、まずは1週間程度試してみてから選ぶと安心です。
4. 初めてでも安心!導入の流れを5ステップで解説

- 無料で試してみる
操作が合うか、地図が見やすいか、使いやすさを体験しましょう。 - 訪問先の住所を一括で登録
ExcelなどからCSVファイルで読み込むと、入力ミスが減らせます。 - 滞在時間や休憩時間もあらかじめ設定
実際の業務時間に近いスケジュールが組めます。 - 1週間だけ使って効果を比較
移動時間や残業時間がどれくらい減るか、客観的に見てみましょう。 - チームで使い方を共有
薬剤師・事務・在宅チームで「ここが使いやすかった」など情報共有すると、定着が早くなります。
5. まとめ ―「移動」を減らせば、「ケアの質」が上がる

在宅患者は今後ますます増加し、訪問業務も複雑になっていきます。ルート設計アプリは、特別な知識がなくても使える“地図アプリの進化版”です。
無理なく導入できるものから始めて、少しずつ業務を効率化していきましょう。移動のストレスが減れば、薬剤師が本来の役割である「患者さんとの対話」により集中できるようになります。
今の職場で限界を感じているなら…

「もっと効率よく在宅業務をこなしたい」
「移動や雑務に追われて、服薬指導が後回しになっている…」
そんなときは、自分のキャリアや働き方を見直してみるのも一つの方法です。
最近では、
- 在宅専任チームを持ち
- ICTツールを導入して業務を効率化し
- 残業が少なく、丁寧な指導ができる環境を整えている薬局も増えています。
もし「いまの薬局ではこれ以上改善が難しい」と感じているなら、薬剤師専門のキャリア支援サービスに相談してみるのもおすすめです。非公開求人を含めて、あなたの希望に合う職場を紹介してもらえることがあります。
あなたの経験を活かせる場所は、きっとほかにもあります。
まずは情報収集からでも構いません。小さな行動が、未来の大きな変化につながります。
参考文献・情報源
- 厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」ほか(在宅患者数推移)
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001332328.pdf
- 厚生労働省「薬剤師の需給推計(案)」2030 年ピーク予測
- CrossLog 公式サイト「ルートの見える化機能」

- PR TIMES「AI 搭載訪問スケジュール自動作成クラウド ZEST」プレスリリース(2024.7.31)

コメント