「吐き気止めを飲んでいるのに食べられない」「指先のしびれは我慢するしかない?」。抗がん剤治療中の服薬指導では、副作用の説明に加えて、生活への影響と病院へ連絡するタイミングまで確認したいところです。
押さえたいのは、予防薬の使い方、生活上の工夫、早めに共有する症状の3点です。この記事では、調剤薬局の薬剤師が確認したい5つの副作用と、患者さんへの声かけ例を整理します。
主に細胞障害性抗がん薬による副作用を扱います。副作用の種類・時期・対処は治療内容で異なるため、治療施設から渡された説明書や連絡基準を優先してください。
情報確認日:2026年10月21日/本記事には広告を含みます。
抗がん剤の副作用対策|服薬指導で確認する5項目
| 副作用 | 薬局で聞くこと | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 吐き気・嘔吐 | 発現日、制吐薬の使用、食事・水分量 | 予防薬と頓服の区別。水分がとれなければ速やかに病院へ |
| 口内炎・乾燥 | 痛み、食べにくさ、飲み込みにくさ | 刺激を減らして清潔・保湿を保つ。摂取困難は早めに共有 |
| 脱毛 | 外見の変化で困っている場面、本人の希望 | 帽子・ウィッグなどを選択肢として案内 |
| しびれ | ボタン、箸、歩行などへの影響 | 軽い段階から共有し、転倒・やけどを防ぐ |
| 感染・白血球減少 | 体温、悪寒、治療日、病院の連絡基準 | 発熱時は自己判断で様子を見ず、治療施設へ連絡 |
この表は聞き取りの入口です。症状だけで重症度を決めず、治療名、投与日、検査値、処方された支持療法薬と合わせて判断します。処方監査の視点は、がん患者の支持療法と処方監査でも整理しています。
1.吐き気・嘔吐|予防薬と頓服の使い方を分けて説明する
投与当日だけでなく、帰宅後の症状も聞く
抗がん薬による吐き気・嘔吐には、投与後24時間以内に起こる急性のものと、それ以降に起こる遅発性のものがあります。前回の治療経験や不安から生じる予期性の症状もあり、発現時期の確認が役立ちます。[1]
予防的に使う制吐薬は「気持ち悪くなったときだけ飲む薬」とは限りません。アプレピタント(イメンド)などの予防薬と、症状が出たときの頓服について、処方ごとの服用日・タイミング・使用上限を説明し、患者さんに言い返してもらうと確認しやすくなります。
食事の工夫と連絡目安をセットにする
一度に食べようとせず少量ずつ分け、においが負担になる場合は料理の粗熱をとるなど工夫します。無理に食べさせず、食べられるものを本人と考える姿勢も大切です。ただし、制吐薬を使っても強い嘔吐が続き、水分がとれない場合は、速やかに治療施設へ連絡します。[2]
声かけ例:「治療から何日目が一番つらかったですか? 吐き気止めを飲んだ時間と、水分がどれくらいとれたかも教えてください」
2.口内炎・口の乾燥|うがいだけでなく食べられるかを確認する
口内炎は、小さくても痛みが強く、食事や服薬の妨げになることがあります。「口内炎はありますか?」に続けて、飲み物がしみるか、食事量が減ったか、薬を飲み込めるかを確認します。[3]
刺激の少ないケアを続ける
やわらかい歯ブラシでやさしく磨き、水や刺激の少ない含嗽剤で口をすすぎます。口の乾燥には保湿も役立ちます。熱いもの、辛いもの、酸味の強いものなど、痛みが増す食品は控え、食べやすい温度・硬さに調整します。[3]
含嗽剤や口内炎用の薬を一律に勧めるのではなく、現在の処方や口の状態を確認してください。痛みで食事・水分・薬がとれないときは、鎮痛や感染の評価を含めて病院へつなぎます。
声かけ例:「うがいはできていますか? 痛みで食べる量が減ったり、薬が飲みにくくなったりしていませんか?」
3.脱毛|性別で決めつけず、本人が困ることから支援する
脱毛の起こりやすさや程度は薬によって異なり、すべての治療で同じように起こるわけではありません。多くは治療後に再び生え始めますが、回復の時期や状態には個人差があります。「必ず元どおりになります」と断定せず、治療に応じた見通しを伝えます。[4]
脱毛のつらさは年齢や性別だけでは分かりません。「外出するとき」「仕事中」「家族と過ごすとき」など、気になる場面を聞いてから、帽子・ウィッグ・頭皮のケアを案内します。購入を急がせず、本人が必要と感じる方法を一緒に考えましょう。
費用が気になる場合は、自治体の助成の有無や申請条件を個別に確認します。支援の考え方は、薬剤師ができるアピアランスケアと声かけも参考にしてください。
声かけ例:「髪の変化について、いま気になっていることはありますか? 必要なら、帽子やウィッグなどの情報もお伝えできます」
4.しびれ・末梢神経障害|強さより生活への影響を聞く
しびれの確認では、「少しあります」という返答だけで終わらず、ボタンを留める、箸を使う、文字を書く、歩くといった動作を聞きます。しびれは治療後も長く続く場合があるため、我慢できる段階から治療施設へ共有することが大切です。[5]
「薬を使えば治る」と約束しない
抗がん薬による末梢神経障害には、十分に確立していない予防・治療もあります。症状と生活への影響を踏まえ、医師が減量・休薬・変更や症状を和らげる治療を検討します。薬局では患者さんの自己中断を促さず、変化を具体的に伝えます。[5]
感覚が鈍いと、やけどや転倒にも注意が必要です。熱い調理器具や湯たんぽの扱い、室内の段差、履物を確認します。冷たいものが刺激になる場合もあり、自己流の冷却を勧めず、治療施設の指示を確認してください。[5]
漢方薬の説明を補足する場合は、牛車腎気丸とCIPNのエビデンス・服薬指導も併せて確認してください。
声かけ例:「しびれで物を落としたり、歩きにくくなったりしていませんか? 前回と比べて変わったことも教えてください」
5.白血球減少・感染|発熱時の連絡先を事前に決める
骨髄抑制の起こりやすさは治療によって異なります。特に好中球が減少しているときの発熱は、発熱性好中球減少症の可能性があり、早急な評価が必要です。「38℃になるまで待つ」と一律に説明せず、治療施設の基準を確認します。[6]
がん情報サービスでは、一定の好中球減少と37.5℃以上の発熱を組み合わせて発熱性好中球減少症を説明しています。ただし、これは診断上の説明であり、患者さんが検査値から自己判断するための基準ではありません。発熱や悪寒、強いだるさなどがあるときは、施設の指示に従い速やかに連絡してください。[6]
「解熱薬で下がったから大丈夫」で終わらせない
発熱時に自己判断で解熱薬だけを使って受診を先延ばしにしないよう説明します。あらかじめ使用指示がある場合も、連絡の要否まで確認します。息苦しさや意識の変化など急激な悪化があれば、救急対応を優先します。
日常の感染対策は、手洗い、口腔ケア、皮膚を清潔に保つことが基本です。食事制限や外出の制限は、一律に増やすのではなく、好中球数や治療内容に応じた指示を確認します。[6]
声かけ例:「何℃になったら、どこへ電話するよう説明されていますか? 夜間・休日の連絡先も一緒に確認しましょう」
薬局から病院へ伝える内容|症状と服薬状況を短くまとめる
病院へ情報提供するときは、次の項目を整理すると状況が伝わりやすくなります。緊急性がある場合は文書の作成を待たず、電話などで連絡します。
- 治療名・最終投与日と、症状が始まった時期
- 症状の頻度・程度と、前回からの変化
- 食事・水分・睡眠・歩行などへの影響
- 支持療法薬の服用時刻・回数と、その後の変化
- 市販薬・サプリメントを含む追加薬
以下は記載の架空例です。
最終投与3日後から吐き気が出現。処方どおりの予防薬と指示された頓服を使用したが、本日は水分も十分とれないとの訴えあり。治療施設への速やかな連絡を案内し、受診判断を依頼。
副作用への対応は「説明したか」だけでなく、「家で対処できたか」「次に何をするか」まで確かめると実務につながります。
まとめ|セルフケアと早期連絡を両方支える
吐き気、口内炎、脱毛、しびれ、感染リスクでは、必要な説明が異なります。薬の使い方を確認し、患者さんが生活で困っていることを聞き、病院に伝える症状と連絡先を具体化しましょう。次の来局時には「前回の説明で試せたこと」「まだ困っていること」を確認すると、継続した支援につながります。
参考文献・一次情報
- 国立がん研究センター東病院「吐き気・嘔吐について」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「吐き気・嘔吐」
- 同「口内炎・口内の乾燥」
- 同「脱毛」
- 同「しびれ」
- 同「感染しやすい・白血球減少」
いずれも2026年10月21日確認。本記事は薬剤師向けの一般的な情報整理です。個別の薬剤選択・用量・休薬判断は、治療施設の指示と各薬剤の最新情報を確認してください。
がん患者さんを支える時間を確保したい薬剤師へ
継続したフォローには、薬剤師個人の工夫だけでなく、人員配置や病院との連携体制も関わります。働き方を見直す際は、外来がん治療のフォロー件数、学習支援、疑義照会や情報提供の体制などを確認してみてください。
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