※この記事には広告が含まれます。情報確認日:2026年10月12日
「痛み止めは使っているのに眠れていない」「頓服を我慢している」「薬を飲み込むのが難しくなった」。緩和ケアで薬剤師が拾いたいのは、処方内容だけでは分からない、患者さんの暮らしの変化です。
薬剤師の役割は、薬の効果と副作用を確認し、患者さんが大切にしたい生活に合わせて、医師・看護師と服薬方法や治療の見直しにつなげることです。この記事では、薬局・在宅で確認したい項目と、患者さんや家族への声かけを整理します。
緩和ケアは終末期だけではない
緩和ケアは、病気に伴う身体や心のつらさを和らげ、患者さんと家族の生活を支えるケアです。がんでは診断されたときから、必要に応じて治療と並行して行われます。「抗がん剤をやめてから始めるもの」と説明しないことが大切です。[1]
薬剤師も、鎮痛薬を渡す場面だけでなく、治療中の吐き気や服薬負担を確認する場面から関われます。以下では主に、がん患者さんの痛みと在宅療養の支援を扱います。非がん疾患では、薬の適応や治療方針を別途確認します。
薬剤師が担う5つの役割
1.痛みの強さと生活への影響を確認する
「痛みはどうですか?」に加えて、「夜は眠れていますか」「体を動かすと痛みますか」と聞くと、患者さんが困っている場面を把握しやすくなります。場所、始まった時期、痛み方、持続するか一時的かも確認します。[2]
数値で答えられる方には、NRS(Numerical Rating Scale:痛みの数値評価尺度)を使います。痛みなしを0、想像できる最も強い痛みを10として尋ね、前回からの変化を共有します。数値だけで判断せず、「眠れる」「座って食事ができる」など、本人が望む生活も治療目標として確認します。[2]
2.定時薬とレスキュー薬の使い分けを支える
定時に使う鎮痛薬と、突出痛に対して追加するレスキュー薬では役割が異なります。オキシコドン塩酸塩水和物(オキノーム散など)の速放性製剤は、レスキュー薬として用いられる例です。[3]
薬剤師は、処方された1回量、次に使えるまでの間隔、追加使用や連絡に関する指示を確認し、患者さん・家族と共有します。間隔や上限を、すべての薬で共通と考えないことが重要です。
「昨日は何回使いましたか」「使った後、痛みは楽になりましたか」と、使用回数と効果をセットで聞きます。回数が増えた場合は、痛みの変化や実際の服用状況を医師へ報告し、治療の再評価につなげます。「麻薬だから怖い」と我慢している場合も、その理由を確認します。[2・3]
3.便秘・吐き気・眠気を確認する
オピオイド使用中は、鎮痛効果と一緒に便秘、悪心・嘔吐、眠気を確認します。便秘については、開始時から予防・治療の必要性を検討し、その後も排便状況を追います。症状があっても、すべてを薬の副作用と決めつけず、病状や併用薬なども含めて評価します。[2・4]
便秘には一般的な下剤に加え、オピオイド誘発性便秘症に用いるナルデメジン(スインプロイク錠)も選択肢になります。ただし、消化管閉塞やその疑いがある患者さんなどには禁忌です。強い腹痛・嘔吐・腹部膨満を伴う場合は、下剤を追加する前に医師へ状態を伝えます。[5]
眠気は、会話や食事への影響、ふらつき、開始・増量との時間関係を確認します。呼びかけへの反応が乏しい、呼吸が明らかに遅い・浅いなどの場合は、呼吸抑制を疑い、直ちに医療者へ連絡する必要があります。睡眠薬などの中枢神経抑制薬や飲酒にも注意します。[6]
4.飲み込みや服薬負担に合わせて提案する
内服が難しいときは、錠剤の大きさだけでなく、嚥下状態、口内炎、吐き気などの原因を確認します。経口投与の継続が難しい場合には、別の剤形・投与経路について医師と検討します。[3]
「飲めないから貼付剤にする」と一律に判断することはできません。フェンタニル貼付剤などは、効果の発現や用量調整に時間がかかるため、痛みの安定性も判断材料になります。変更時には換算量、前の薬を終了する時刻、レスキュー薬の指示を確認します。[3]
服薬負担が大きい場合は、薬の必要性や投与回数を処方医と見直す視点も持ちます。薬剤師が独自に中止・増減を指示するのではなく、患者さんの希望と観察結果を添えて提案します。[2]
関連:薬剤師の往診同行で2剤減薬できた話|医師への処方提案の実例
5.家族の薬管理と多職種連携を支える
「誰が薬を準備しているか」「夜間に困ったとき、どこへ連絡するか」を確認します。定時薬とレスキュー薬の置き場所を分ける、使用時刻を記録するなど、家族が続けられる方法を一緒に考えます。
医療用麻薬は、子どもの手が届かない場所に保管し、他人に渡さないことを説明します。不要になった薬は病院・薬局への返納など、適切な扱いを案内します。[6]家族自身の疲労や不安も、チームへ共有したい情報です。[1]
薬局・在宅で使う確認項目
以下は、聞き取りを整理するための実務用チェック表です。毎回すべてを機械的に尋ねるのではなく、前回からの変化を中心に確認します。
| 項目 | 声かけの例 | 共有したい情報 |
|---|---|---|
| 痛み・生活 | 「一番困るのは、どんなときの痛みですか?」 | 部位、強さ、時間帯、睡眠・食事への影響 |
| レスキュー薬 | 「昨日は何回使い、どのくらい楽になりましたか?」 | 使用時刻、回数、効果、指示の理解 |
| 排便 | 「最後の便はいつでしたか。お腹の痛みはありますか?」 | 便の状態、腹痛、下剤の使用状況 |
| 吐き気・内服 | 「吐き気で薬が飲めないことはありますか?」 | 嘔吐、食事・水分、服用できていない薬 |
| 眠気・ふらつき | 「日中の会話や食事に支障はありますか?」 | 出現時期、増量・併用薬との関係、転倒 |
| 本人・家族の希望 | 「今、少しでも楽にしたいことは何ですか?」 | 本人の目標、管理の負担、連絡体制 |
聞き取り方を詳しく確認したい方は、薬剤師のコミュニケーション術|服薬指導の例文も参考にしてください。
医師・看護師への報告は「変化・使用状況・困りごと」を具体的に
「痛みが強いようです」だけでは、判断に必要な情報が不足します。どの場面で痛むのか、薬を実際にどう使ったのか、生活への影響を簡潔にまとめます。
報告例(架空の場面):「夜間の痛みで2回目が覚めています。昨日のレスキュー薬は3回で、使用後は軽減しましたが、今朝も痛みが残っています。定時薬は指示どおり服用できています。日中の眠気は前回と変わりません。本人は夜に眠れることを希望しています。鎮痛薬の調整についてご検討いただけますか」
急な症状変化は、定期報告を待たず連絡します。報告後も、変更された指示を患者さん・家族に共有し、効果と副作用を再確認するところまでが服薬支援です。
記録の整理には、在宅訪問の報告書は何を書く?確認したい10項目と記載例も活用できます。
緩和ケアに関わりたい薬剤師が職場で確認したいこと
まずは勤務先で、医療用麻薬の調剤や在宅訪問に関わる機会、医師・看護師への連絡方法、症例を相談できる先輩の有無を確認してみてください。学会のガイドラインや研修と、日々の症例の振り返りを組み合わせると、学んだ内容を実務に結び付けやすくなります。
職場を選ぶ場合も、「在宅に力を入れている」という説明だけで判断せず、担当業務、同行研修、麻薬管理の体制、休日・夜間対応の分担を具体的に尋ねます。仕事内容と続けられる働き方の両方を確認することが大切です。
関連:薬剤師が転職で失敗しやすい薬局の特徴|求人票だけでは見えない注意点
まとめ|薬の確認を、患者さんの暮らしの支援につなげる
緩和ケアでは、鎮痛薬の効果だけでなく、レスキュー薬の使い方、副作用、飲みやすさ、家族の管理負担まで確認します。「眠れるようになりたい」「家で過ごしたい」といった本人の希望を共有し、多職種で服薬支援を考えていきましょう。
緩和ケアや在宅医療に関わる職場を比較したい場合は、転職サービスも情報収集の選択肢になります。希望する業務と勤務条件を伝え、紹介先の教育・連携体制は見学や面接でも確認してください。
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参考文献
[1]国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/relaxation/index.html
[2]日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」痛みの包括的評価
https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2020/02_02.pdf
[3]同ガイドライン、薬理学的知識
https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2020/02_04.pdf
[4]同ガイドライン、有害作用に関する臨床疑問
https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2020/03_02.pdf
[5]PMDA「スインプロイク錠0.2mg」電子添文(2026年9月改訂)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/340018_2359007F1020_1_07
[6]PMDA「オキノーム散」電子添文
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/8119002B2023_2?user=1
本記事は医療従事者向けの実務整理です。個別の薬剤選択・用量・投与経路は、最新の電子添文と患者さんの状態を踏まえ、処方医・医療チームで判断してください。


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