更新日:2026年10月15日/薬剤師向け解説。本記事には広告を含みます。
「レケンビを使えば認知症は治る?」「病院で点滴を受けている患者さんに、薬局では何を確認すればよい?」
レカネマブ(商品名:レケンビ)は、アルツハイマー病による軽度認知障害・軽度認知症の進行を抑える薬です。治療対象の確認、アミロイド関連画像異常(ARIA)の早期発見、抗血栓薬を含む併用薬の共有が実務上のポイントになります。
2026年の安全性改訂を踏まえ、点滴静注製剤を中心に整理します。皮下注ペン製剤の承認情報は別項で取り上げます。
レカネマブの特徴を先に整理
| 確認する項目 | 押さえるポイント |
|---|---|
| 治療の目的 | 早期アルツハイマー病の進行抑制。治癒や進行の完全停止を意味しません。 |
| 対象 | アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)・軽度認知症。アミロイドβ病理の確認が必要です。 |
| 点滴の用量 | 10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注します。 |
| 主な安全性確認 | ARIA・脳出血、注入に伴う反応、MRI検査、血圧管理。 |
| 薬局での役割 | 治療状況・新しい症状・併用薬を把握し、必要な情報を治療施設に共有します。 |
投与には必要な検査・管理を行える施設体制と、アルツハイマー病の診療経験を持つ医師による判断が必要です。薬局だけで投与適否を決める薬ではありません。[1,4]
従来の認知症治療薬との違い
レカネマブは、可溶性アミロイドβ凝集体であるプロトフィブリルなどに結合する抗体薬です。脳内のアミロイドβを減少させ、疾患の病態に働きかけることから、疾患修飾薬に位置づけられます。[1,5]
ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ)、メマンチン(メマリー)は、神経伝達を調整する症状改善薬です。レカネマブを開始したからといって、これらを一律に中止するわけではありません。CLARITY AD試験では症状改善薬を併用した患者も含まれていました。[4,5]
誰に使える?軽度認知障害なら全員が対象ではない
対象は、アルツハイマー病が原因のMCIまたは軽度認知症です。アミロイドPETや脳脊髄液(CSF)検査など、承認された診断法によるアミロイドβ病理の確認が必要になります。症状のない人や中等度以降の認知症患者には投与を開始しません。[1]
投与開始前のMRIで血管原性脳浮腫、5個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症、1cmを超える脳出血が確認された患者などは禁忌です。治療開始前には病期だけでなく、画像所見や既往歴も確認されます。[1]
薬局では「もの忘れの点滴」とだけ記録するより、薬剤名・投与施設・開始時期を把握しておくと、併用薬確認や症状の情報提供に役立ちます。
「進行を約27%抑制」はどう説明する?
CLARITY AD試験は、早期アルツハイマー病の患者1,795人を対象とした18か月の国際共同第Ⅲ相試験です。認知機能と生活機能を評価するCDR-SB(Clinical Dementia Rating–Sum of Boxes)の悪化は、レカネマブ群でプラセボ群より小さくなりました。[5]
| 18か月時点の評価 | レカネマブ群 | プラセボ群 |
|---|---|---|
| CDR-SBのベースラインからの変化量(調整平均値) | +1.21点 | +1.66点 |
| 群間差 | -0.45点 | |
悪化量の差0.45点をプラセボ群の1.66点で割った値が、約27%です。認知機能が27%回復した、27%の人が治った、全員の進行が止まったという意味ではありません。両群とも平均ではスコアが悪化しています。[5]
家族への説明例は「試験では、使わなかった場合と比べて、認知機能や生活機能の低下が緩やかでした。効果には個人差があり、治療中も経過を確認します」です。治療効果だけでなく、通院や検査の負担も含めて説明します。
ARIAとMRI検査:2026年の改訂を確認
ARIAは無症状でも起こります
ARIA-Eは浮腫・滲出液貯留、ARIA-Hは脳微小出血・脳表ヘモジデリン沈着症を指します。脳出血にも注意が必要です。症状を伴わない場合もあるため、本人が元気に見えてもMRIによる確認が欠かせません。[1]
頭痛、錯乱、めまい、視覚障害、吐き気、歩行障害、けいれん、言語障害、筋力低下などが現れた場合は、投与開始からの期間にかかわらず速やかな受診が必要です。「次の点滴の日に伝えればよい」と先延ばしにしないよう説明します。[1,2]
3回目投与前のMRIも「望ましい」とされました
点滴静注製剤では投与開始前にMRIを確認し、症状がなくても次のタイミングで画像検査を行います。2026年6月の改訂で、早い段階の確認が追加されました。[1,2]
| 点滴製剤でのタイミング | 位置づけ |
|---|---|
| 3回目投与前(開始後1か月までが目安) | MRI実施が望ましい。開始前の脳微小出血、高血圧症など、ARIAに注意を要する患者では特に実施を考慮します。 |
| 5回目・7回目・14回目投与前 | MRIを実施します。開始後それぞれ2・3・6か月までが目安です。 |
| それ以降 | 定期的に実施します。 |
| ARIAを疑う症状があるとき | 予定日を待たずに臨床評価を行い、疑われる場合はMRIを実施します。 |
休薬・再開は症状と画像所見に基づく医師の判断です。薬剤師は検査予定と症状の有無を確認し、受診につなげます。上記の投与回数は点滴製剤のもので、皮下注製剤にそのまま当てはめません。
APOE遺伝子検査は「全員必須」と説明しない
2026年8月の改訂では、ARIAのリスク管理のため、投与開始前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮することが追記されました。ApoEε4ホモ接合型ではARIAの発現割合が高いことが背景です。[3]
検査の意義を説明して同意を得る必要があります。遺伝子型にかかわらずMRIを含むARIA管理は必要であり、「検査で低リスクならMRIは不要」とは説明しません。[1]
抗凝固薬・抗血小板薬と治療カードを確認
ワルファリン(ワーファリン)、アピキサバン(エリキュース)などの抗凝固薬、アスピリン(バイアスピリン)、クロピドグレル(プラビックス)などの抗血小板薬、アルテプラーゼなどの血栓溶解剤は併用注意です。脳出血が起こった場合に出血を助長するおそれがあります。[1]
「併用注意」を「一律の併用禁忌」に置き換えたり、患者さんに自己判断で抗血栓薬を中止させたりしないことが大切です。処方追加・変更時には、レカネマブ治療を処方医が把握しているか確認し、必要に応じて照会・情報提供します。
ARIAは脳卒中に似た症状を示す場合があります。救急受診時にも治療中であることを伝えられるよう、レケンビ治療カードの携帯・提示を確認します。お薬手帳にも投与施設や治療状況を記載しておくと、他院・他薬局との共有に役立ちます。[1,4]
薬局で使える3つの聞き取りと記録例
病院で投与される薬は、薬局の処方箋だけでは把握できないことがあります。患者さんと家族に次の3点を確認すると、継続支援につながります。
- 「レケンビはいつから、どちらの病院で受けていますか? 次の投与とMRIはいつですか?」
- 「いつもと違う頭痛、ふらつき、見え方や歩き方の変化はありませんか?」
- 「ほかの病院で薬が増えましたか? 治療カードは持っていますか?」
点滴後の悪寒・発熱・吐き気など、注入に伴う反応も確認します。新しい症状を認知症の進行や風邪と決めつけず、発症時期、投与との時間関係、普段との違いを聞き取ります。[1]
薬歴の記録例(架空の例):「家族よりレケンビ点滴を○○病院で継続中と聴取。新規の頭痛・歩行変化なし。MRI予定○月○日。治療カード携帯を確認。他院薬を含め抗血栓薬の追加なし。症状が出た際は次回投与を待たず治療施設へ連絡・受診するよう説明。」
症状がある場合は発症日時、具体的な変化、連絡先と対応結果まで記録します。在宅では家族や介護者から得た情報も、本人の訴えと区別して共有すると伝わりやすくなります。
2026年9月に皮下注ペン製剤も承認
レケンビ皮下注250mgペンは2026年9月16日に国内承認されました。皮下注製剤の通常用量は500mgを1週間に1回で、点滴の「体重あたり10mg/kg・隔週」と異なります。[6,7]
承認取得と販売開始・保険での使用開始は分けて確認する必要があります。ここでは承認情報として紹介し、薬価収載日や発売日は断定しません。処方を確認する際には、製剤名・投与経路・用量・間隔をセットで確認し、MRI管理や切り替え時の注意は各製剤の最新添付文書を参照してください。
まとめ:効果の説明と治療情報の共有が薬剤師の役割
レカネマブは、対象となる早期アルツハイマー病の進行を抑える選択肢です。薬剤師は「治る薬」と誤解されない効果説明に加え、症状・MRI予定・併用薬・治療カードを確認します。
特に、2026年の3回目投与前MRIとAPOE遺伝子検査に関する改訂は押さえておきたい変更です。処方箋に載らない治療も共有し、患者さんと家族が困ったときに治療施設へつながる準備を支えます。
認知症・在宅支援に関わる働き方を考える方へ
認知症や在宅医療への関わり方は、勤務先の業務や地域連携体制によって変わります。今後どのような経験を積みたいか考える際は、薬剤師の働き方に迷ったときの経験談と判断軸も参考にしてください。
職場を比較したい場合は、在宅業務の内容、教育体制、休日などを具体的に確認する方法があります。転職・派遣サービスも情報収集の選択肢の一つです。
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参考文献・確認資料
確認日:2026年10月15日。治療判断には最新の電子添文・最適使用推進ガイドライン等を参照してください。
- [1] PMDA「レケンビ点滴静注200mg/500mg」電子添文(2026年9月改訂)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/1190408A1025_1?user=1 - [2] PMDA「レカネマブ(遺伝子組換え)の『使用上の注意』の改訂について」(2026年6月5日)
https://www.pmda.go.jp/files/000281059.pdf - [3] PMDA「ドナネマブ(遺伝子組換え)、レカネマブ(遺伝子組換え)の『使用上の注意』の改訂について」(2026年8月17日)
https://www.pmda.go.jp/files/000282128.pdf - [4] 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン レカネマブ(遺伝子組換え)」
https://www.pmda.go.jp/files/000265885.pdf - [5] van Dyck CH, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. N Engl J Med. 2023;388:9–21.
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2212948 - [6] エーザイ「早期アルツハイマー病治療剤『レケンビ』の皮下注製剤」承認取得に関するニュースリリース(2026年9月16日)
https://www.eisai.co.jp/news/2026/news202652.html - [7] PMDA「レケンビ皮下注250mgペン」電子添文(2026年9月作成)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/170033_11904A5G1028_1_01


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