これだけ読めばわかる!最新ガイドラインに基づくAGA治療薬まとめ

医薬品等解説

薄毛に悩む方にとって、AGA(男性型脱毛症)の治療は「何を使えばいいのか?」「効果はあるのか?」といった疑問がつきものです。この記事では、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」に基づき、推奨されている治療薬や治療法を解説します。



AGAとは?誰にでも起こりうる「進行性の脱毛症」

AGA(エージーエー)とは「Androgenetic Alopecia」の略で、男性ホルモンの影響によって起こる進行性の脱毛症です。前頭部や頭頂部の毛髪が徐々に細くなり、最終的には目立つ薄毛へと進行します。

日本人男性では、20代で約10%、30代で20%、50代では40%以上がAGAを発症するとされています。女性にも似た症状が見られることがあり、こちらは「FAGA(女性型脱毛症)」と呼ばれます。

重要なのは早期発見と継続的な治療。毛包(もうほう=毛の根元を作る部分)が縮んでしまう「ミニチュア化」は、時間が経つと元に戻らなくなるため、早めの対応が大切です。



ガイドラインの「推奨度」って何?治療選びの指針になるランク

日本皮膚科学会のガイドラインでは、治療ごとに「推奨度」が付けられています。

  • A:行うよう強く勧められる
  • B:行うよう勧められる
  • C1:行ってもよい
  • C2:行わないほうがよい
  • D:行うべきではない

この記事では、推奨度の高いものから順に、効果や注意点を紹介していきます。



推奨度A|まず検討すべき“標準治療薬”

フィナステリド・デュタステリド(内服)

どちらも「5α還元酵素」を阻害することで、脱毛の原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の産生を抑える薬です。

項目フィナステリドデュタステリド
商品例プロペシア®、フィナロイドなどザガーロ®など
用量1mg/日0.5mg/日
効果約60〜80%の人で進行抑制・増毛効果あり
副作用性欲減退、ED、精液量減少など
注意点妊婦の接触禁止、PSA値が下がるため前立腺がん検査に注意

治療効果の評価は6か月以上の継続使用が必要です。途中でやめると脱毛が再び進行します。


ミノキシジル外用(男性:5%、女性:1%)

血流を増やし、毛母細胞を刺激することで発毛を促す外用薬です。市販薬でも購入可能で、男女ともに使用できます。

  • 使用部位に直接塗布(1日2回)
  • 初期脱毛(使い始めに一時的に抜け毛が増える)が見られることも
  • 皮膚のかゆみや赤み、かぶれに注意

泡タイプ(フォーム)や液体タイプ(リキッド)があり、使用感や刺激の強さが異なります。



推奨度B|効果が期待できる“併用治療”の選択肢

低出力レーザー治療(LLLT)

赤色のLEDやレーザーを頭皮に照射し、毛包に刺激を与える治療法です。自宅で使えるヘルメット型・キャップ型のデバイスも登場しています。

  • 通常は週数回、15〜20分使用
  • 副作用はほとんどなし
  • 単独でも一定の効果はあるが、内服・外用との併用が推奨

アデノシン外用

育毛成分として知られる「アデノシン」を含んだローションなど。男性では推奨度B、女性ではC1に分類されています。

  • ミノキシジルに比べて副作用が少ない
  • 皮膚刺激も少なく、敏感肌でも使用しやすい



推奨度C1|選択肢として“あってもよい”治療

カルプロニウム塩化物外用(フロジン®など)

血管拡張作用を持つ外用薬で、皮膚科で処方されることがあります。保険適用があるためコスト面でのメリットもありますが、エビデンス(科学的根拠)が限定的であり、メイン治療にはなりません。


サプリメント・育毛ローションなど

  • ビタミン・ミネラルなどを含む育毛サプリメント
  • 生薬由来ローション(センブリエキスなど)

これらは根拠が弱く、単独での効果は限定的です。あくまで補助的な位置づけと考えましょう。



推奨度C2・D|避けた方がよい治療法

内服ミノキシジル

外用薬として承認されているミノキシジルですが、内服薬も存在します。しかし、日本ではAGA治療薬として未承認であり、副作用(心拍数増加・むくみ・血圧低下)も多く、推奨度はC2とされています。

その他

  • 合成繊維を使った自毛植毛
  • プラセンタ療法などの未確立な治療

これらは効果や安全性に疑問があるとして、ガイドラインでは非推奨(D)とされています。



効果的な治療計画の立て方

  1. まずは内服薬 or 外用薬で単剤スタート
  2. 効果を6〜12か月で評価
  3. 効果が不十分なら併用療法(例:内服+ミノキシジル外用+LLLT)にステップアップ
  4. 維持期は写真や血液検査で定期評価

AGA治療は“すぐに結果が出るもの”ではありません。中長期的な視点での治療計画が必要です。



副作用と安全な治療継続のために

  • 内服薬の使用前に PSA(前立腺マーカー)の測定が必要
  • 外用薬で赤みやかゆみが出たら中止し、皮膚科へ
  • 妊活中のカップルは要注意(内服薬は胎児に影響を与える可能性あり)
  • 献血制限あり(フィナステリド:1か月/デュタステリド:6か月)



よくある質問Q&A

Q. いつから効果が出ますか?
→ 早い人で3か月ですが、目に見えて改善するには6か月以上の継続が必要です。

Q. 薬をやめたらどうなりますか?
→ 脱毛の進行が再開します。継続が基本です。

Q. ネットで買える薬と病院の薬、違いは?
→ 製造管理や副作用のモニタリング、安全性の面でクリニック処方が安心です。



まとめ:正しい知識で、後悔しない治療選びを

AGAは進行性の脱毛症であり、早期かつ根拠に基づいた治療の継続が最も重要です。
ガイドラインに沿った内服・外用薬を中心に、必要に応じて併用療法を検討しましょう。

高額な自由診療や未承認薬には注意が必要です。「髪を守る治療」は、正しい情報をもとに安全に行うことが何より大切です。



参考文献
日本皮膚科学会.男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

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