トルリシティとマンジャロの違い|0.75mg・1.5mg、増量・注射方法・服薬指導を薬剤師向けに比較

医薬品等解説
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公開日:2026年10月8日|国内の電子添文(両剤とも2026年9月改訂)を確認しています。この記事には広告を含みます。

「トルリシティに1.5mgがあるけれど、0.75mgからどう増やす?」「マンジャロも週1回のアテオスなら、説明は同じでよい?」。薬局では、作用の違いだけでなく、用量の変更や患者さんが注射を続けられるかの確認が必要です。

トルリシティは通常0.75mgを週1回、状態に応じて1.5mgへ増量します。マンジャロは2.5mgを週1回で開始し、4週間後に5mgへ増量する用量設計です。同じ週1回注射でも、増量のルールを一緒に覚えないことが処方監査の出発点になります。

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5分で整理:トルリシティとマンジャロの比較表

比較項目 トルリシティ マンジャロ
一般名・分類 デュラグルチド(遺伝子組換え)/GLP-1受容体作動薬 チルゼパチド/GIP・GLP-1受容体作動薬
国内の適応 2型糖尿病 2型糖尿病
通常の用量設計 0.75mgを週1回。状態に応じて1.5mgへ増量 2.5mgを週1回で開始、4週間後に5mg。通常の維持用量は5mgを週1回
追加の増量 電子添文にマンジャロのような「4週間ごと」の規定はない 5mgで効果不十分なら、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量。最大15mgを週1回
規格 0.75mg・1.5mg 2.5・5・7.5・10・12.5・15mg
デバイス 針付き、1回使い切りのアテオス。空打ち不要 針付き、1回使い切りのアテオス。空打ち不要
保管の違い 原則2~8℃、遮光・凍結回避。冷蔵庫が使えない場合は30℃以下で14日間まで 原則2~8℃、遮光・凍結回避。冷蔵庫が使えない場合は30℃以下で21日間まで

用量・適応は参考文献1・2、操作・保管は参考文献3・4に基づきます。異なる成分のmg数を比べても、薬の強さや切替量は判断できません。

作用の違い:GLP-1単独とGIP・GLP-1の両方

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)は、食事に伴って分泌されるインクレチンです。トルリシティはGLP-1受容体に、マンジャロはGIP受容体とGLP-1受容体に作用します。どちらもインスリン注射そのものではありません。

作用機序の違いは選択の判断材料ですが、実際には血糖の目標、体重、食事量、副作用、併用薬、患者さんの希望を合わせて検討します。自己注射の操作が似ていることと、治療上同じ薬であることは分けて考えましょう。

糖尿病薬全体の位置づけを確認する場合は、DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬の違いと使い分けも参考になります。

比較試験を読むときは、トルリシティの用量を確認する

マンジャロの電子添文に掲載された国内の直接比較試験では、比較相手はデュラグルチド0.75mgでした。マンジャロ5・10・15mgの各群で、52週時のHbA1c変化量について優越性が検証されています。この結果を、そのままトルリシティ1.5mgとの比較結果として扱うことはできません(参考文献2、17.1.2)。

トルリシティ0.75mg・1.5mg:増量処方で何を確認する?

トルリシティは通常量が週1回0.75mgで、患者さんの状態に応じて週1回1.5mgへ増量できます。1.5mgへの増量が全員に必要なわけではありません。また、マンジャロの「2.5mgを4週間投与してから5mg」という開始方法を、トルリシティへ当てはめないようにします。

規格が変わった処方では、前回の用量、実際に使った回数、血糖の経過、吐き気・便秘、食事量を確認します。「まだ0.75mgが冷蔵庫に残っています」という場合は、残薬と新しい規格を取り違えないよう、使用する規格と開始日を整理します。増量処方の意図が不明な場合や、食事がとれないほどの症状がある場合は処方医へ確認します。

マンジャロの増量:4週間経過だけで判断しない

マンジャロは2.5mgを週1回、4週間投与してから5mgへ増量します。5mgで効果不十分な場合の追加増量は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ、最大15mgまでです。毎月自動的に最大量へ進む用法ではありません。

電子添文では、胃腸障害などで忍容性が得られない場合に減量または増量の延期を考慮するとされています。処方監査では、前回増量からの期間に加えて「食事がどの程度とれているか」「体重が急に減っていないか」「嘔吐や下痢が続いていないか」を確認し、気になる変化を処方医へ共有します(参考文献2・5)。

デバイスは似ていても、切替時は操作を再確認する

両剤のアテオスは針があらかじめ組み込まれた1回使い切りの注入器です。注射針の装着や空打ちは不要で、ダイヤルで用量を調節する製剤ではありません。規格を変更しても、1本から任意の量を取り分けて使うことはできません。

説明時は製品の取扱説明書と練習用器具を用い、患者さんが次の流れを実際に操作できるか確認します。

  1. 製品名・規格・薬液・注入器の状態を確認し、注射直前に灰色のキャップを外す。
  2. 底面を皮膚に密着させてからロックを解除する。
  3. 注入ボタンを押し、完了まで皮膚から離さない。
  4. 2回目のクリック音と、透明部分に見える灰色のゴムピストンで完了を確認する。

完了までの時間は最長約10秒です。一度外したキャップは付け直しません。「音を聞き取りにくい」「押す手が震える」という場合は、目での完了確認や家族の支援も検討します。注射できた量が不明なときは、自己判断で追加注射せず、状況を確認して対応を相談します。

自分で注射する部位は腹部または大腿部、訓練を受けた人が介助する場合は上腕部も選択肢になります。同じ部位でも場所をずらし、使用済み器具の廃棄方法まで説明します(参考文献3・4・6)。

打ち忘れと曜日変更は「72時間」の見方を分ける

両剤とも毎週同じ曜日に投与し、食事の時刻に合わせる必要はありません。打ち忘れた場合は次の予定投与まで72時間以上なら気づいた時点で投与、72時間未満ならその回は飛ばして次の予定曜日に投与します。曜日を変更する場合は、前回の投与から72時間以上空けます。忘れた分をまとめて2回分投与しません(参考文献1・2・6)。

薬局では、次の注射日をカレンダーやスマートフォンに登録するなど、患者さんが普段使う方法で予定を残すと確認しやすくなります。

消化器症状:「よくある副作用」で片づけない

軽い吐き気でも、生活への影響を聞く

両剤で吐き気、嘔吐、下痢、便秘などが起こり得ます。マンジャロでは特に投与開始時や増量時に注意します。「吐き気はありますか」だけでなく、「昨日は何をどれくらい食べられましたか」「水分はとれていますか」「仕事や外出に支障がありますか」と聞くと、継続の負担を把握しやすくなります。

軽い吐き気では、脂肪の多い食事を控える、1回の食事量を少なくする、満腹を感じたら無理に食べない、といった工夫があります。ただし、食事を減らし続けて栄養不足になる場合や症状が続く場合は、治療の見直しが必要か医師へ相談します。食後に注射すれば解決すると一律に説明しないようにします(参考文献3~5)。

速やかな受診につなげる症状

  • 嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛:急性膵炎が疑われる症状です。使用を中止し、速やかに医師の診断を受けるよう指導します。
  • 高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐:腸閉塞を含むイレウスの可能性を考え、速やかな受診につなげます。
  • 下痢・嘔吐が続いて水分がとれない、立ちくらみや尿量低下:脱水や腎機能への影響を考え、速やかに医師へ相談するよう説明します。

これらは「慣れるまで我慢する症状」として扱いません。持続性製剤のため、中止後も作用が続く可能性があります(参考文献1・2・5)。

併用薬の監査:DPP-4阻害薬・低血糖・重複を確認

DPP-4阻害薬は配合剤の中まで見る

両剤とも、DPP-4阻害薬との併用について有効性・安全性は確認されていません。併用を見つけた場合は禁忌と決めつけず、継続の意図を確認します。切替前の処方や他院の薬が残っていないか、DPP-4阻害薬を含む配合剤まで確認しましょう。

成分を確認する際は、DPP-4阻害薬9成分の違いと使い分けを併せて読むと、商品名からの見落としを減らせます。

SU薬・グリニド薬・インスリン併用では低血糖に注意

これらの併用薬がある場合は、低血糖リスクが増加するため、処方医が減量を検討することがあります。冷汗・ふるえなどの症状と対処を説明し、食事量の低下がないかも確認します。インスリンを患者さん自身の判断で中止しないことも大切です。

マンジャロでは同成分製剤と経口避妊薬も確認する

マンジャロはゼップバウンドなど他のチルゼパチド含有製剤と併用しません。同じ成分でも製品の適応を混同せず、他院処方も確認します。また、経口避妊薬は特に投与開始初期・増量後初期に効果が減弱するおそれがあるため、併用状況を聞き取り、適切な避妊法を医師と確認します(参考文献2)。

患者さんが続けられるか:薬局で確認したい5項目

以下は、電子添文と患者向け資材を薬局での聞き取りに落とし込んだ実務上の整理です。

確認すること 聞き取り・対応の例
投与日と実施状況 「最後に打ったのは何曜日ですか」。打ち忘れ・重複投与・残薬を確認
用量と増量後の変化 「今回から量が変わりましたか」。前回規格と増量日を照合
食事・水分・便通 「いつもの何割くらい食べられますか」。悪心の有無だけで判断しない
体重・体力・低血糖 急な体重減少、疲れやすさ、冷汗・ふるえがないか確認し、必要に応じて医師へ共有
操作・保管・負担 操作のつまずき、冷蔵保管、廃棄、費用や生活上の負担を確認

高齢者やもともと食が細い人では、体重が減ったことだけをよい変化と判断せず、食事量・活動量・体力も追います。確認する視点は、薬剤師が押さえたいフレイル対策でも整理しています。

手術や鎮静下の検査の予定も確認します。両剤には胃内容排出遅延に関する注意があるため、使用中であることを医療機関へ伝えてもらいます。休薬の要否や時期は自己判断せず、実施医療機関の指示を確認します。

まとめ:用量設計と「続けられる条件」をセットで確認する

トルリシティは0.75mgを週1回、状態に応じて1.5mgへ増量します。マンジャロは2.5mg開始、4週間後に5mgという用量設計です。両剤ともアテオスで投与しますが、規格・保管期間・増量ルールまで同じではありません。

薬局での確認は、薬の違いを説明して終わりにせず、実際の投与状況、食事・水分、体重、併用薬、操作の負担までつなげましょう。増量を続けられるか迷う変化を具体的に拾うことが、処方医との情報共有に役立ちます。

参考文献

  1. PMDA:トルリシティ皮下注0.75mg/1.5mgアテオス 電子添文(2026年9月、第12版)
  2. PMDA:マンジャロ皮下注アテオス 電子添文(2026年9月、第11版)
  3. 日本イーライリリー:トルリシティの使い方・よくある質問
  4. 日本イーライリリー:マンジャロの使い方・よくある質問
  5. 日本イーライリリー:マンジャロ服薬指導自己学習サポート
  6. PMDA:マンジャロ患者向医薬品ガイド

確認日:2026年10月8日。用量・注意事項は最新の国内電子添文を優先して確認してください。

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