ロトリガとエパデールの違い|成分・適応・用法・エビデンスを薬剤師が解説

医薬品等解説

はじめに

「オメガ3」という言葉は、健康食品やサプリメントの宣伝などでよく目にします。そのため、処方薬であるロトリガエパデールも「サプリと同じようなもの」と誤解されがちです。

しかし、両者は医師が処方する“医薬品”であり、サプリメントとは成分の純度や含有量、効果を裏付ける臨床試験の有無などが大きく違います。

  • エパデールは「イコサペント酸エチル(EPA)」だけを有効成分とした薬。
  • ロトリガは「EPA」と「ドコサヘキサエン酸(DHA)」を合わせた混合薬。

どちらも血中の中性脂肪(トリグリセリド)を下げる薬ですが、作用や注意点には違いがあります。特にロトリガは「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が上がることがある」と注意されています。

この記事では、薬剤師の立場から両者の違いを整理し、患者さんへの説明に使えるポイントもまとめます。



製剤の基本情報を比べてみよう

エパデール(イコサペント酸エチル)

  • 成分:イコサペント酸エチル(EPA)単独。EPAは青魚に多く含まれる脂肪酸ですが、薬としては高純度に精製されています。
  • 効能・効果
    • 高脂血症(血中脂質異常症)
    • 従来型カプセルには「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍・疼痛・冷感の改善」も記載されています。つまり、血流が悪くなることで起こる手足の冷えや痛みにも効果があるとされます。
  • 用法・用量
    • 通常は 900mgを1日2回 または 600mgを1日3回、必ず食直後に服用します。
    • さらに、1回2gを1日1回で内服できる「エパデールEM」という大きめのカプセルもあり、飲み忘れを減らす工夫になっています。
  • 注意点:血小板の働きを抑える作用があるため、抗凝固薬(ワルファリンなど)や抗血小板薬(アスピリンなど)を併用している患者さんでは出血傾向に注意します。



ロトリガ(オメガ-3脂肪酸エチル)

  • 成分:EPAに加えて、DHA(脳や神経の働きに関与する脂肪酸)も含まれています。つまり、EPAとDHAの両方を含む混合薬です。
  • 効能・効果:高脂血症。特に中性脂肪の高い患者さんに用いられます。
  • 用法・用量
    • 通常は 2gを1日1回 食直後に内服。
    • 効果が不十分な場合は、1日2回まで増量できます。
  • 注意点:添付文書に「LDLコレステロールが上昇する可能性がある」と明記されています。中性脂肪を下げてもLDLが上がってしまうと動脈硬化のリスクに逆効果となる場合があるため、血液検査でのモニタリングが欠かせません。



作用機序と脂質への影響の違い

両薬とも基本的な働きは似ていて、

  • 肝臓から分泌される中性脂肪(VLDL)の量を減らす
  • 血液中から中性脂肪を取り除きやすくする

という二つの経路で血中の中性脂肪を下げる効果があります。

ただし、臨床現場で注意すべき違いは以下の通りです。

  • エパデール:中性脂肪低下に加え、心血管イベント抑制を示した大規模試験があります。
  • ロトリガ:中性脂肪を下げる一方で、LDLコレステロールが上がることがあるため、スタチンなどと組み合わせて管理する必要があります。



臨床試験でわかっていること

エパデール(EPA単剤)

  • JELIS試験(日本):スタチン治療に加えてEPAを1.8g/日投与した群は、心筋梗塞などの冠動脈イベントが有意に減少しました。

参考URL:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(07)60527-3/abstract?utm_source=chatgpt.com

  • REDUCE-IT試験(海外):高リスク患者にEPA 4g/日を追加した結果、主要な心血管イベントが明らかに減少しました。ただし、心房細動の発症や出血傾向が増えるという副作用シグナルも観察されています。

参考URL:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1812792?utm_source=chatgpt.com


ロトリガ(EPA+DHA混合)

  • STRENGTH試験(海外):EPA+DHAの高用量を投与した試験では、心血管イベント抑制効果は示されませんでした。逆に心房細動のリスクが増える傾向が報告されています。

参考URL:https://www.acc.org/Latest-in-Cardiology/Clinical-Trials/2020/11/11/21/29/STRENGTH?utm_source=chatgpt.com

👉 まとめると、EPA単剤(エパデール)は心血管イベント抑制効果を裏付ける試験がある一方、EPA+DHA混合薬(ロトリガと同系統)では有効性が一貫していないという違いがあります。



実務での薬剤師のチェックポイント

  1. 処方意図を確認
    TG低下目的か、心血管リスク低下目的か、あるいはPAD症状の改善か。患者の背景によって処方理由が変わります。
  2. LDL-Cの推移を追跡
    ロトリガを処方された患者さんでは、数か月ごとの血液検査でLDL-Cの動きを必ず確認。必要に応じてスタチンの調整などが検討されます。
  3. 併用薬チェック
    抗凝固薬や抗血小板薬を使っている患者さんでは、鼻血・皮下出血・便潜血など出血のサインに注意。患者さんにセルフチェックの方法を伝えます。
  4. 服用タイミングを徹底
    どちらの薬も食直後でないと吸収が悪くなり、効果が十分に出ません。「食後すぐ」を強調することが大切です。



患者さんに伝えたい説明例

  • 「この薬はサプリではなく、治療薬です。純度や量が決まっていて、効果が確認されているので、サプリと置き換えることはできません。」
  • 「必ず食後すぐに飲んでください。飲み忘れた場合は自己判断で2回分飲まず、次の食後に1回分だけにしてください。」
  • 「ロトリガを飲むとLDLコレステロールが上がることがあるので、血液検査でしっかり確認します。」
  • 「血をサラサラにする薬を使っている方は、出血しやすくなることがあるので注意して見てください。」



まとめ

  • エパデール=EPA単剤。中性脂肪低下+心血管イベント抑制の試験結果あり。従来カプセルはPAD症状改善の適応あり。
  • ロトリガ=EPA+DHA混合。中性脂肪低下はあるが、LDL-C上昇の可能性に注意。
  • どちらも食直後内服が必須で、抗凝固薬併用中の患者は出血傾向に注意。
  • 心血管アウトカムの裏付けはEPA単剤が相対的に強い

薬剤師は、患者さんの処方意図を把握し、血液データの変化や副作用のリスクをモニターしながら説明・指導することが重要です。


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