抗ヒスタミン薬の違いと選び方|薬剤ごとの特徴・眠気・相互作用を薬剤師がわかりやすく解説

医薬品等解説

はじめに

抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹に欠かせない薬です。しかし「眠気が出る薬」「食事の影響を受ける薬」など、薬ごとに性質が大きく異なります。患者さんに合った薬を選ぶには、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。本記事では、薬剤ごとに特徴を整理し、服薬指導に役立つ情報を解説します。



第一世代と第二世代の違い

第一世代抗ヒスタミン薬は中枢神経に移行しやすく、強い眠気や口渇、便秘などの副作用が出やすいのが特徴です。ジフェンヒドラミン(レスタミン)、クロルフェニラミン(ポララミン)などが代表的です。

第二世代抗ヒスタミン薬は脳に移行しにくく、眠気が弱く、作用時間が長いため1日1回の服用で済む薬が多いです。アレルギー性鼻炎や慢性蕁麻疹では第一選択とされています。代表的な薬にはフェキソフェナジン(アレグラ®)、ビラスチン(ビラノア)、セチリジン(ジルテック)があります。



ビラスチン(ビラノア)

ビラスチンは第二世代の中でも「非鎮静性」が大きな特徴です。運転や学習に影響が少ないため、日中の活動が多い患者に適しています。ただし、食事や果汁で吸収が大きく低下するため「空腹時に水で服用」が必須です。

特徴・注意点

  • 特徴:眠気がほとんどないため日中活動の多い患者に適する
  • 用法:20mgを1日1回、空腹時に服用(食前1時間または食後2時間以上)
  • 食事・飲み物:グレープフルーツジュース、オレンジジュース、リンゴジュースで吸収が低下 → 水で服用する
  • 相互作用:腎機能低下で血中濃度上昇、P糖蛋白阻害薬(エリスロマイシン、ジルチアゼムなど)で影響あり

参考URL:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/diquiz/202003/564706_2.html



フェキソフェナジン(アレグラ®)

フェキソフェナジンも眠気が少なく、日中に適した薬です。ただし果汁の影響を受けやすいため、水での服用を徹底する必要があります。

特徴・注意点

  • 特徴:非鎮静性で日常生活に支障が出にくい
  • 注意点:グレープフルーツジュース、オレンジジュース、リンゴジュースで吸収が低下するため水で服用。小児の服薬指導においてジュース以外のもので服用するように説明することも必要。

参考URL:https://maruyaku.com/topics/topics01/



セチリジン(ジルテック)/レボセチリジン(ザイザル)

効果が比較的早く現れるため、蕁麻疹など痒みの強い疾患に使いやすい薬です。眠気はやや出やすいので、就寝前の服用が推奨されることもあります。

特徴・注意点

  • 特徴:発現が早く蕁麻疹にも有効
  • 副作用:眠気が中等度に出やすい
  • 注意点:腎排泄型のため腎機能障害時は減量が必要



ロラタジン(クラリチン)/デスロラタジン(デザレックス)

眠気が少なく日中の使用に適した薬です。肝臓で代謝を受けるため、一部の薬との相互作用に注意が必要です。

特徴・注意点

  • 特徴:非鎮静性で日中の使用に向く
  • 注意点:CYP3A4阻害薬との併用に注意(臨床上大きな問題になることは少ない)



エバスチン(エバステル)

効果の持続時間が長く、1日1回で安定した効果が得られる薬です。QT延長のリスクがあるため、心疾患や電解質異常がある患者では注意が必要です。

特徴・注意点

  • 特徴:効果の持続性が強み
  • 注意点:QT延長リスクがある患者では注意



エピナスチン(アレジオン)/オロパタジン(アレロック)/ベポタスチン(タリオン)

アレルギー性鼻炎から蕁麻疹まで幅広く使える薬です。眠気は少〜中等度で、日常診療で使いやすい位置づけです。

特徴・注意点

  • 特徴:幅広いアレルギー症状に有効
  • 副作用:眠気は少〜中等度



ケトチフェン(ザジテン)/メキタジン(ゼスラン)

眠気がやや強く、夜間の痒みで眠れない患者に処方されることがあります。第一世代に近い性質も持つため、高齢者では副作用に注意が必要です。

特徴・注意点

  • 特徴:やや鎮静性があり夜間の痒みに有効
  • 注意点:高齢者では転倒や抗コリン作用に注意



ルパタジン(ルパフィン)

抗ヒスタミン作用に加えて血小板活性化因子(PAF)拮抗作用を併せ持つ薬です。痒みが強い蕁麻疹に適応されることがあります。

特徴・注意点

  • 特徴:PAF拮抗作用を持つユニークな薬
  • 適応場面:痒みの強いタイプの蕁麻疹に有効




まとめ

抗ヒスタミン薬は薬ごとに「眠気」「食事・果汁の影響」「相互作用」「腎・肝機能での注意点」が異なります。

  • ビラスチン(ビラノア):非鎮静性だが空腹時必須、水で服用。運転を仕事にする人にはおすすめ。
  • フェキソフェナジン(アレグラ):非鎮静性だが果汁に注意、水で服用。日中の眠気を避けた人に。
  • セチリジン(ジルテック)、レボセチリジン(ザイザル):効果速め、眠気中等度、腎機能注意。夜間に掻きむしってしまう人や痒みで眠れない人におすすめ。

患者さんに合った薬を選び、服薬タイミングや飲み合わせまで含めて説明することが薬剤師の大切な役割です。


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