「ロゼレムが市販薬として買えるようになる」
このニュースを見て、驚いた薬剤師も多いのではないでしょうか。
アリナミン製薬は2026年5月20日、ラメルテオンを配合した睡眠改善薬「ロゼレムS」の製造販売承認を取得したと発表しました。発売予定日は2026年7月28日です。
ロゼレムSは、医療用のロゼレム錠8mgと同じラメルテオンを8mg配合しています。しかし、医療用医薬品と市販薬では、使用できる目的や販売方法が異なります。
この記事では、ロゼレムSの特徴や医療用ロゼレムとの違い、従来の市販の睡眠改善薬との違い、薬剤師が販売時に確認したいポイントを解説します。
ロゼレムSが2026年7月28日に発売予定
ロゼレムSは、医療用医薬品として使用されてきたラメルテオンを、市販薬へ転用したスイッチOTC医薬品です。
アリナミン製薬が発表している概要は、次のとおりです。
| 項目 | ロゼレムS |
|---|---|
| 製品名 | ロゼレムS |
| 分類 | 要指導医薬品 |
| 有効成分 | ラメルテオン8mg |
| 効能 | 一時的な不眠による「寝つきが悪い」症状の緩和 |
| 対象年齢 | 15歳以上 |
| 1回量 | 1錠 |
| 服用回数 | 1日1回 |
| 服用時期 | 就寝前30分以内 |
| 発売予定日 | 2026年7月28日 |
これまで市販の睡眠改善薬には、主にジフェンヒドラミン塩酸塩などの抗ヒスタミン成分が使用されてきました。
ラメルテオンを配合した睡眠改善薬が市販されるのは国内で初めてです。市販の睡眠改善薬に新しい選択肢が加わることになります。
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ロゼレムSは要指導医薬品
ロゼレムSは、購入者が自分で棚から選んで自由に購入できる一般用医薬品ではなく、要指導医薬品として販売されます。
要指導医薬品を販売する際は、薬剤師による対面での情報提供と薬学的知見に基づいた指導が必要です。
そのため、ロゼレムSについて「処方箋なしで購入できるようになる」という説明は間違いではありませんが、「誰でも自由に買えるようになる」と表現するのは正確ではありません。
薬剤師が症状や使用者本人の状態、服用中の薬などを確認したうえで、使用の可否を判断することになります。
インターネット販売についても、要指導医薬品として扱われている期間は認められません。
ロゼレムSはどのように眠りへ導くのか
ラメルテオンは、メラトニン受容体作動薬に分類される成分です。
メラトニンは、夜になると分泌量が増え、睡眠と覚醒のリズムに関わるホルモンです。ラメルテオンは、視交叉上核に存在するMT1受容体とMT2受容体に作用し、睡眠と覚醒のリズムを睡眠側へ傾けます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬などのように、GABA受容体を介して中枢神経の働きを抑える薬ではありません。
いわゆる「強い鎮静作用で眠らせる」というよりも、睡眠に向かう体内のリズムを整えて、寝つきを改善する薬と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、「自然な眠り」という表現から、副作用がなく、誰でも安全に使用できる薬だと受け取られないよう注意が必要です。ラメルテオンでも眠気、めまい、頭痛、倦怠感などが現れる可能性があります。
医療用ロゼレム錠8mgとの違い
ロゼレムSと医療用のロゼレム錠8mgには、どちらもラメルテオンが8mg配合されています。
一方、効能・効果や使用できる場面には違いがあります。
| 比較項目 | ロゼレムS | 医療用ロゼレム錠8mg |
|---|---|---|
| 区分 | 要指導医薬品 | 処方箋医薬品 |
| 有効成分 | ラメルテオン8mg | ラメルテオン8mg |
| 対象 | 15歳以上 | 成人 |
| 効能・効果 | 一時的な不眠による寝つきの悪さの緩和 | 不眠症における入眠困難の改善 |
| 用法 | 1日1回1錠、就寝前30分以内 | 1回8mgを就寝前に服用 |
| 入手方法 | 薬剤師の説明を受けて購入 | 医師の診察と処方が必要 |
最大の違いは、ロゼレムSの対象が「一時的な不眠」に限定されることです。
長期間にわたって眠れない人や、不眠によって日常生活に支障が出ている人、精神疾患や身体疾患が背景にあると考えられる人は、市販薬だけで対応するのではなく医療機関の受診が必要です。
「成分と含量が同じだから、医療用ロゼレムの代わりになる」と単純に考えることはできません。
ロゼレム以外の睡眠薬についても違いを整理したい方は、以下の記事をご覧ください。

従来の市販の睡眠改善薬との違い
従来の市販の睡眠改善薬には、ジフェンヒドラミン塩酸塩を配合した製品が多くあります。
ジフェンヒドラミンは第一世代抗ヒスタミン薬です。ヒスタミンH1受容体を遮断したときに生じる眠気を利用し、一時的な不眠を緩和します。
これに対して、ロゼレムSのラメルテオンは、メラトニン受容体に作用して睡眠と覚醒のリズムを調整します。
| 比較項目 | ロゼレムS | 従来の睡眠改善薬の例 |
|---|---|---|
| 主な成分 | ラメルテオン | ジフェンヒドラミン塩酸塩 |
| 作用点 | MT1・MT2受容体 | ヒスタミンH1受容体 |
| 眠りへの作用 | 睡眠・覚醒リズムを睡眠側へ傾ける | 抗ヒスタミン作用による眠気を利用する |
| 抗コリン作用 | 基本的に問題になりにくい | 口渇、排尿困難などに注意 |
| 主な対象症状 | 一時的な寝つきの悪さ | 一時的な不眠 |
抗ヒスタミン成分を使用した睡眠改善薬では、口渇、便秘、排尿困難などの抗コリン作用が問題になることがあります。前立腺肥大や緑内障などの既往歴にも注意が必要です。
ロゼレムSは作用機序が異なるため、従来の睡眠改善薬を使いにくかった人の選択肢になる可能性があります。
一方で、ラメルテオン特有の相互作用や注意点があるため、「抗ヒスタミン成分ではないから安全」と判断することはできません。
薬剤師が販売時に確認したいポイント
ロゼレムSの販売時には、単に「寝つきが悪い」という症状だけでなく、不眠の期間や背景を確認する必要があります。
一時的な不眠かを確認する
市販の睡眠改善薬が対象とするのは、一過性または一時的な不眠です。
例えば、次のような状況が考えられます。
- 仕事や家庭のことで一時的にストレスを感じている
- 旅行や環境の変化によって寝つきが悪くなった
- 生活リズムが一時的に乱れている
- 翌日の予定が気になって眠れない
一方、眠れない状態が長く続いている場合は、不眠症やほかの疾患が隠れている可能性があります。
「いつから眠れないのか」「毎晩なのか」「日中の生活に影響があるか」まで確認することが重要です。
症状が「寝つきの悪さ」かを確認する
ロゼレムSの効能は、一時的な不眠のうち「寝つきが悪い」症状の緩和です。
夜中に何度も目が覚める中途覚醒や、予定より早く目が覚める早朝覚醒、十分な時間眠っても熟睡感がないといった訴えを、すべてロゼレムSで対応できるわけではありません。
購入者が「眠れない」と訴えた場合は、その内容を具体的に聞く必要があります。
服用中の薬を確認する
医療用ロゼレムでは、フルボキサミンマレイン酸塩との併用が禁忌です。
ラメルテオンは主にCYP1A2で代謝されます。フルボキサミンによって代謝が強く阻害されると、ラメルテオンの血中濃度が大きく上昇する可能性があります。
そのほか、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬などを使用していないか確認する必要があります。
発売後は、ロゼレムSの使用上の注意と販売時のチェックシートに基づいて判断してください。
医療機関で不眠症の治療を受けていないか確認する
すでに医療機関から睡眠薬を処方されている人が、自己判断でロゼレムSを追加することは避けるべきです。
医療用のロゼレムやラメルテオン後発医薬品を服用している場合は、成分の重複にもつながります。
処方薬の効果が不十分だから市販薬を追加したいという相談では、自己調整を勧めず、処方医へ相談するよう案内する必要があります。
肝機能障害の有無を確認する
医療用ロゼレムは、高度な肝機能障害のある患者には禁忌です。
ラメルテオンは肝臓で代謝されるため、肝機能障害の程度によって血中濃度が上昇する可能性があります。
肝臓病で治療中の人や、過去に肝機能異常を指摘された人については、ロゼレムSの正式な使用上の注意を確認したうえで慎重に判断する必要があります。
服用時に伝えたい注意点
ロゼレムSを販売する際には、正しい服用方法も具体的に説明する必要があります。
就寝前30分以内に服用する
ロゼレムSは、1日1回1錠を就寝前30分以内に、水またはお湯で、かまずに服用します。
服用後に仕事や家事を続けるのではなく、眠る準備を整えてから服用するよう説明することが大切です。
食事と同時または食直後を避ける
医療用ロゼレムでは、食後に服用すると空腹時よりも血中濃度が低下する可能性があるため、食事と同時または食直後の服用を避けることとされています。
ロゼレムSについても、発売後の使用上の注意を確認し、夕食が遅くなった場合の服用方法を説明できるようにしておく必要があります。
服用後は運転しない
ラメルテオンの影響が翌朝以降まで残り、眠気、注意力や集中力、反射運動能力の低下が起こることがあります。
服用後や翌朝に眠気が残っている場合は、自動車の運転や危険を伴う機械の操作を避けなければなりません。
飲酒と一緒に使用しない
寝酒を目的にアルコールを摂取している人もいますが、飲酒と睡眠改善薬の併用は勧められません。
アルコールは一時的に寝つきをよくするように感じても、睡眠の質を低下させたり、夜中に目が覚める原因になったりします。
販売時には飲酒習慣も確認し、ロゼレムSをアルコールと一緒に使用しないよう説明することが重要です。
受診を勧めたい不眠の特徴
不眠は、うつ病や不安障害、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、甲状腺疾患など、さまざまな病気によって起こることがあります。
次のような場合は、市販薬だけで対応せず、医療機関への受診を勧めます。
- 不眠が長期間続いている
- 不眠を繰り返している
- 日中の強い眠気や集中力低下がある
- 気分の落ち込みや意欲低下がある
- 大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された
- 脚の不快感によって眠れない
- 痛み、咳、頻尿などによって眠れない
- 睡眠薬やアルコールに頼る状態が続いている
- すでに精神科や心療内科などで治療を受けている
- 市販薬を使用しても改善しない
「薬を販売すること」だけでなく、市販薬で対応できる不眠かを見極めることが薬剤師の重要な役割です。
ロゼレムSの登場で睡眠改善薬の選択肢が広がる
ロゼレムSは、ラメルテオンを国内で初めて市販薬として配合した睡眠改善薬です。
従来の抗ヒスタミン成分を中心とした睡眠改善薬とは作用機序が異なり、一時的な寝つきの悪さに対する新しい選択肢となります。
一方、医療用ロゼレムと成分・含量が同じでも、使用できる目的は同じではありません。
ロゼレムSはあくまで一時的な不眠による寝つきの悪さを対象とする要指導医薬品です。慢性的な不眠や、疾患が背景にある可能性が高い不眠に対して、市販薬を漫然と使用することは避けなければなりません。
薬剤師には、症状の期間や内容、併用薬、治療歴などを確認し、セルフメディケーションで対応できる人と受診が必要な人を見極める役割が求められます。
発売後は、正式な使用上の注意や販売時チェックシートを確認し、適正販売につなげていきましょう。
参考文献
- アリナミン製薬株式会社「市販薬初!医療用成分『ラメルテオン』を配合した睡眠改善薬『ロゼレムS』が製造販売承認取得」
https://alinamin-pharma.co.jp/news/assets/pdf/APC_Press_Release_20260520.pdf - PMDA「ロゼレム錠8mg 医療用医薬品情報」
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/02/1190016F1024?user=1 - 厚生労働省「2024年12月20日 薬事審議会 要指導・一般用医薬品部会 議事録」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64871.html

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