新人薬剤師のための製剤変更チェックガイド【決定版】
はじめに

薬剤師として働き始めてまもないころ、
「この錠剤は砕いてもいいのか?」「一包化して大丈夫かな?」と処方内容に不安を感じたことはありませんか?
粉砕や一包化は、患者さんの服薬を助ける一方で、薬の効果や安全性に重大な影響を与える行為でもあります。
しかし、添付文書にはすべてが明記されているわけではなく、正確な判断には知識と情報収集スキルが求められます。
このガイドでは、製剤変更の判断に自信を持てない新人薬剤師でも、明日からすぐに実践できるように、
- 「粉砕・一包化とは何か?」
- 「判断を誤ると何が起きるのか?」
- 「どう調べ、どう伝えるか?」
- 「製剤ごとの具体的注意点」
- 「失敗しない調剤の習慣」
を整理しています。
1.粉砕・一包化とは?目的と注意点を正しく理解しよう

● 粉砕とは?
粉砕とは、錠剤を細かく砕いて粉状にすること。
高齢者や小児、嚥下障害のある患者さんにとって、服薬しやすくするために行われます。
ただし、薬には「ゆっくり効かせる」「胃ではなく腸で効かせる」「苦味をマスクする」といった、設計された工夫(製剤技術)が施されており、それを粉砕すると想定外の副作用や効果減弱につながる場合があります。
● 一包化とは?
一包化とは、服薬タイミングが同じ複数の薬を、1つの袋にまとめて分包すること。
飲み忘れを防いだり、ポリファーマシー患者の負担を軽減するために有効です。
しかし、薬と薬を混ぜることで化学反応や吸湿による劣化、安定性の低下が起こる可能性もあるため、十分な事前確認が必要です。
● 製剤変更が必要になるシーンとその背景
ケース | 具体例 | なぜ必要か? |
嚥下困難 | 脳梗塞後の高齢者 | 錠剤を飲み込めず、粉砕や細粒への変更が必要 |
小児の体重調整 | 小児用量で1/2錠使用 | 1錠に均一に有効成分が含まれているかを確認 |
経管投与 | 胃瘻・腸瘻を使う患者 | チューブに詰まらない形態である必要あり |
服薬コンプライアンス対策 | 高齢者で服薬回数が多い | 一包化で服薬の継続率が上がるが、薬の安定性に注意 |
2.調剤ミスを防ぐ!製剤変更のための5ステップ

ステップ1:添付文書を確認する
まずはPMDAの添付文書を確認しましょう。「割線の有無」「粉砕可否」「配合変化」の欄に注目します。
「割線があっても、粉砕してよいとは限らない」という点も忘れずに。
ステップ2:インタビューフォームを読む
IFには「粉砕した際の安定性」「湿度や光の影響」「分包後の有効期限」など、より詳細な情報が記載されています。
添付文書で不明な点があれば、必ずIFを確認して補完します。
ステップ3:実務資料で裏付けを取る
- 日本病院薬剤師会の「一包化ハンドブック」
- 日経DIの「粉砕・一包化可否データ」
- 院内マニュアル、調剤過誤事例集など
複数ソースで一致すれば信頼性が高くなります。
ステップ4:製薬会社DI室へ問い合わせる
疑問が残る場合は、製薬会社のDI室に電話やメールで確認を。
具体的な条件(温度、湿度、期間)を添えて聞くと正確な回答が得られやすくなります。
ステップ5:医師へ疑義照会する
粉砕・一包化の可否判断は最終的に医師の同意が必要です。
「薬剤Aは粉砕不可のため、散剤での代替をご提案します」と根拠と代替案をセットで伝えるのがポイントです。
3.製剤別|粉砕・一包化 NG・注意リスト

製剤例 | 粉砕 | 一包化 | なぜ注意が必要? |
徐放錠 | × | △ | ゆっくり効く構造が壊れ、急激に血中濃度が上がる |
腸溶錠 | × | △ | コーティングが湿気で壊れると、胃で溶けて刺激に |
カプセル | ×(開封NG) | ○ | 徐放ビーズ入りは開封NG。硬カプセルは一包化OK |
軟カプセル | × | △ | 内容液が漏れやすく、他の薬剤に影響を与える |
水分に不安定 | ○(短期) | △ | 湿気で変質・分解。防湿対策と14日以内の投与が基本 |
抗がん剤・ホルモン薬 | × | × | 調剤者や家族への曝露リスクが高く、特別な管理が必要 |
4.患者さんへの説明ポイントとトラブル回避

よくある質問と答え方
- 「粉にしたら苦くて飲めない」
→「粉砕すると味が出やすくなります。ゼリーなどで包むと飲みやすくなりますよ」 - 「まとめて飲めるのは助かるけど、薬が変色してる気がする」
→「一緒にすると少し色が変わることもありますが、効果には問題ありません。ご心配なら次回は別々にもできます」 - 「本当に砕いちゃって大丈夫なの?」
→「砕いて問題ないかどうか、製造元にも確認したうえでご用意しています。ご安心ください」
5.まとめ|判断力と対話力が、信頼される薬剤師を育てる

粉砕・一包化の判断は、単なる作業ではなく薬の品質と患者の安全を守る行為です。
新人のうちは不安になることも多いですが、以下のポイントを守れば着実に力がつきます。
- 判断に迷ったら「5ステップ」に立ち返る
- 情報の出典は必ず記録して薬歴に残す
- 患者には「なぜこの対応なのか」をわかりやすく説明する
あなたの一つひとつの確認が、患者さんの安全な服薬と信頼につながっていきます。
環境を変えることで、成長スピードが加速することも
「もっと経験豊富な先輩に相談しながら働きたい」
「調剤に追われるだけでなく、患者さんと向き合いたい」
そう感じている新人薬剤師のあなたにとって、今の職場が最適とは限りません。
転職エージェントでは、次のような職場を無料で紹介してもらえます。
- 教育制度やマニュアルがしっかりしている薬局
- 在宅や服薬指導に力を入れている環境
- 経験の浅い薬剤師を丁寧に育てる方針のある職場
「今のままでいいのか不安…」という気持ちが出てきたら、それは成長したい気持ちの表れです。
まずは、キャリア相談から一歩踏み出してみませんか?
▶︎ 薬剤師専門転職エージェントに無料相談してみる
コメント