患者との信頼を深める薬剤師コミュニケーション術

薬剤師の働き方

服薬指導で“また相談したい”と思わせる7つのポイント


「薬剤師さんに言いそびれたんだけど…」
後日こう打ち明けられた経験はありませんか? 患者さんとの間に信頼関係があれば、ちょっとした不安や疑問もその場で打ち明けてもらえるようになります。

薬の効果を最大限に引き出すには、適切な服薬と正しい理解が欠かせません。その土台となるのが、患者との信頼関係です。この記事では、信頼を築くための薬剤師の“聴く力”と、わかりやすい服薬指導の実践ポイントを、豊富な例とともに解説します。



なぜ“信頼関係”が薬の効果を左右するのか

信頼が不足すると起きる問題

  1. 自己判断で薬をやめてしまう
     →「副作用が怖い」「もう治ったから大丈夫」といった理由で服薬が中断され、再発リスクが高まります。
  2. 副作用や悩みを話してもらえない
     → 薬の変更や早期対応の機会を失い、重篤な副作用を見逃すことも。
  3. 「また来たい」と思ってもらえない
     → 信頼感が薄い薬局は、選ばれにくくなりがち。とくにSNSやクチコミの影響力が強い今は致命的です。

信頼は、薬の効果を高める“見えない処方箋”とも言えます。
だからこそ、日々の対応の中で一つひとつ積み上げる姿勢が大切です。



薬剤師の“聴く力”を磨く3ステップ

信頼関係の第一歩は「この人はちゃんと話を聞いてくれる」と思ってもらうことです。以下の3ステップを意識すると、患者さんとの距離がぐっと縮まります。

ステップ説明例文
① 傾聴(けいちょう)相づちや視線、うなずきで“聴いている姿勢”を見せる「それはご心配でしたね」など、感情に寄り添う
② 要約(ようやく)相手の言葉をかみ砕いて確認し、誤解を防ぐ「つまり、夜に薬を飲むと眠気が強く出るのですね」
③ フィードバック共感と解決策の提案をセットにして伝える「それなら、寝る直前に飲むことで眠気を活かす方法がありますよ」

患者さんの「不安」や「違和感」を丁寧にすくい上げて、具体的な提案に落とし込む。これが信頼を生む対話の基本です。



ICEモデルで「本音」に気づく

ICEモデルとは、患者さんの隠れた意図や不安を“見える化”する聞き方の手法です。以下の3つの視点で問いかけると、より本質的なコミュニケーションが可能になります。

要素質問例
Ideas(考え)「薬を飲み忘れるとのことですが、どのようにすれば飲み忘れを減らせそうですか?」
Concerns(不安)「どんな点が心配ですか?」
Expectations(期待)「今日はどんなことがわかれば安心ですか?」

診療現場でも使われている信頼性の高いモデルです。対話の深度がぐっと増します。



タイプ別アプローチ|こんな患者さんにはこの一言

患者さんは一人ひとり背景が異なります。同じ説明でも、伝え方次第で反応が大きく変わることも。よくあるタイプ別に、対応のコツを紹介します。

タイプよくある反応伝え方の工夫
高齢者「覚えきれない」「今日は朝の分だけ説明しますね」など情報を小分けに
小児の保護者「副作用が心配」「○○人に1人程度ですが、もし出ても□□すれば大丈夫です」
慢性疾患の方「体調悪くないし薬いらないかも」「大きな疾患を防ぐ“予防の薬”なんです」
外国ルーツの方「仕組みがよくわからない」多言語資料や通訳を活用し、不安を和らげる



伝わる服薬指導|5つの要点

  1. やさしい言葉で説明する
     → 専門用語は避け、「降圧剤」ではなく「血圧を下げる薬」と言い換えるなどの工夫を。
  2. Teach-Back法を活用する
     → 「〇〇は△△ですが、気になったことはありませんか?」と確認することで、理解度をチェックできます。
  3. 副作用は“確率と対処”で安心感を与える
     → 「1000人に1人くらいですが、出た場合はこのように対処できます」と伝えると冷静に受け止めてもらいやすくなります。
  4. 生活に関連づけて説明する
     → 「食後すぐに眠くなるので、夕食の片づけの後くらいに飲むといいですよ」など、患者さんの生活スタイルにあわせる。
  5. フォローの手段を示す
     → 「不安があれば電話でもご相談いただけます」と伝えると安心感がアップします。



デジタルツールで継続支援

薬局での対話だけでは限界があります。そこで、日常に寄り添うツールの活用が有効です。

  • 電子お薬手帳アプリ:副作用メモ、飲み忘れ防止アラームが便利
  • LINE公式アカウント:時間外も相談できる窓口に
  • 服薬管理アプリ:服薬状況を写真で記録、家族と共有できる機能も

ただし、個人情報保護やセキュリティにも配慮し、導入時はプライバシーポリシーの確認を忘れずに。



よくあるQ&Aと伝え方のヒント

質問回答例(+Teach-Back)
飲み忘れたら?「すぐ気づいたら1回分を飲んで大丈夫です。ただし次の服用が近い場合はスキップしましょう。どの時間帯が飲みやすいですか?」
食後すぐ寝てもいい?「食後10分ほど座ってから横になると、薬がスムーズに働きますよ。食後すぐに寝ることがありますか?」
ジェネリックって効くの?「成分は同じです。味や形状が少し違うだけです。不安なときはいつでも相談してくださいね」



まとめ|信頼は“1つの会話”から始まる

  • 傾聴・要約・フィードバックの3ステップで「この人は話を聴いてくれる」と感じてもらえる
  • ICEモデルで見えない本音を引き出し、個別最適な指導へ
  • わかりやすい言葉と生活に合ったアドバイスが、納得感と安心感につながる

小さな信頼の積み重ねが、やがて“相談される薬剤師”という評価につながります。



信頼を築ける薬局で、あなたらしく働く選択も

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