更新日:2026年10月4日|新人・若手薬剤師向け/5分で整理
「何か気になることはありますか?」と聞いても、返ってくるのは「大丈夫です」。ところが次回来局時に、飲み忘れや薬への不安が分かることがあります。
患者さんとの信頼を築くには、説明を増やす前に、困りごとを聞き、認識を確認し、実行できる対応を一緒に考えることが大切です。この記事では、服薬指導で使える聞き方と例文、Teach-Back法、薬歴への残し方を整理します。会話例は説明用であり、実際の患者さんの発言や症例ではありません。
まず押さえたい、患者さんとの対話の流れ
最初からすべてを聞こうとすると、質問が続き、患者さんも答えにくくなります。「今日一番確認したいこと」を決め、必要な情報を順に確認しましょう。
| 順序 | 目的 | 声かけの例 |
|---|---|---|
| ①困りごとを聞く | 患者さんの話から始める | 「薬を使っていて、気になったことはありますか?」 |
| ②具体化する | いつ・どの薬・どんな状況か確認する | 「飲みにくいのは、どの時間の薬ですか?」 |
| ③要約する | 認識のずれを確かめる | 「昼は外出が多く、飲めない日があるということですね」 |
| ④対応を考える | 実行可能な方法を相談する | 「持ち歩く方法と、処方の相談が必要な点を分けて考えましょう」 |
| ⑤理解と次の行動を確認する | 帰宅後の行動につなげる | 「家ではどのように準備できそうですか?」 |
対話を始めること自体に苦手意識がある場合は、服薬指導がうまくいかない時に見直すべきポイントも参考にしてください。
「飲めていますか?」から一歩進む聞き取り
飲めない理由を、責めずに確認する
飲み忘れには、生活リズム、持ち歩きの難しさ、飲みにくさなどの事情があります。一方で、副作用への不安や薬の必要性への疑問から、服用を控えている場合もあります。NICEの服薬アドヒアランスのガイドラインでは、こうした理由を区別し、患者さんを責めない姿勢で話し合うことを勧めています。
「ちゃんと飲んでいますか?」よりも、「この1週間で、飲めなかった日はありましたか?」「どの時間が難しいですか?」と、期間や場面を具体化すると次の確認につなげられます。
「飲んでいない」と分かった時も、すぐに注意するのではなく、「教えてくださってありがとうございます。飲みにくかった理由を確認させてください」と返します。理由を把握したうえで、服薬支援や処方医への情報提供を検討します。
患者さんの考え・不安・希望を分けて聞く
薬剤師が説明したい内容と、患者さんが知りたい内容は一致するとは限りません。次の3つは、話を整理するための質問例です。すべてを機械的に聞く必要はありません。
- 考え:「この薬は、何のために使っていると聞いていますか?」
- 不安:「使ううえで、一番心配なことは何ですか?」
- 希望:「今日は、どのことを確認できるとよさそうですか?」
「副作用が怖い」と言われたら、「どの副作用が心配ですか?」「実際に症状がありましたか?」と分けて確認します。情報を見て不安になった場合と、服用後に症状が出た場合では、必要な対応が変わります。
共感したあとに、薬学的な確認を行う
「それは心配でしたね」と受け止めることと、「薬が原因です」と判断することは別です。症状がある時は、発現時期、程度、経過、薬の開始・変更との関係、併用薬などを確認します。
患者さん:「新しい薬を飲んでから、昼間に眠くて困っています」
薬剤師:「昼間の眠気で生活に支障があるのですね。いつから、どのくらい眠くなるか教えていただけますか?」
その後、薬剤ごとの注意事項と患者背景を確認し、受診の必要性や処方医への連絡を判断します。眠気があるからといって、一律に「寝る前に変えましょう」と提案しないことが大切です。服用時刻の変更可否は、処方指示や薬の特性に応じて確認します。
「飲みにくいので砕きたい」という相談も同様です。気持ちを受け止めたあとに、製剤の性質と処方内容を確認します。詳しい手順は、錠剤の粉砕・一包化で迷わないための確認ステップで整理しています。
「分かりましたか?」で終わらない、自然な理解確認
Teach-Back法は、説明した内容を患者さん自身の言葉で話してもらい、こちらの説明が伝わったかを確認する方法です。AHRQは、医療者の説明を患者さんや家族が理解できたか確認する手法として紹介しています。
ただ、現場で「説明した内容を教えてください」と切り出すと、患者さんを試すような雰囲気になることもあります。薬袋や実物を見ながら、これからの使い方を一緒に確認する言い方なら、普段の服薬指導に取り入れやすくなります。
「明日の朝に飲む分を、一緒に確認しておきましょうか」
「いろいろお伝えしたので、飲み方だけ最後に一緒に確認しましょう」
薬剤師がもう一度説明するだけで終わらず、患者さんに明日の朝に使う薬を選んでもらったり、いつ・どのように使う予定か話してもらったりします。説明と異なる理解があれば、責めずに短く言い換えてから再確認します。
| 場面 | 使いやすい言い回し |
|---|---|
| 服用時刻を生活に合わせる | 「朝の薬は、いつもの生活だと何時ごろに飲めそうですか?」 |
| 処方変更後の飲み方を確認する | 「明日の朝に飲む分を、一緒に確認しておきましょうか」 |
| 新旧の薬が混在している | 「家にある薬と今回の薬を、どう分けておくか確認しましょうか」 |
| 吸入薬などの手技を確認する | 「普段どおりに、一度やってみてもらってもいいですか?」 |
| 説明が多くなった | 「いろいろお伝えしたので、飲み方だけ最後に一緒に確認しましょう」 |
「飲めそうですか?」という質問は、生活の中で実行できるかを相談する入口です。その返答だけで、飲み方を理解できたとは判断しません。服用時刻は処方指示に沿って確認し、理解の確認が必要な場面では、実際に使う薬や手順まで一緒に確認します。
吸入薬などの手技が必要な薬は、言葉での確認に加え、実際の動作も確認します。デバイスごとの違いは、DPIとpMDIの違い・変更時の吸入指導を参照してください。
場面別の声かけと、避けたい一律の説明
| 場面 | 声かけの例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 説明が多くて覚えられない | 「今日大切な点を、一つずつ確認しますね」 | 服用手順と重要な注意事項を優先し、書面も活用する |
| 薬を飲む意味が分からない | 「効果を感じにくいことが、気になっているのですね」 | 処方目的を確認して説明し、疑問が残る点は処方医と共有する |
| 飲み忘れた | 「どの薬を、いつ飲む予定で、いつ気づきましたか?」 | 薬剤ごとの資料と処方指示を確認する。一律の追加服用は案内しない |
| 副作用が心配 | 「心配している症状と、今出ている症状を分けて確認しましょう」 | 根拠のない発現頻度や「大丈夫」で安心させず、必要な対応を説明する |
| 聞こえにくい・言語の理解が難しい | 「文字での説明など、分かりやすい方法はありますか?」 | 本人の希望に沿って筆談、資料、通訳などを検討する |
年齢や国籍だけで説明方法を決めつけず、目の前の患者さんがどの方法なら理解・実行しやすいかを確認します。家族と情報を共有する時も、本人の意向に配慮します。
会話を薬歴と次回の確認につなげる
「指導済み」だけでは、次の担当者に困りごとが伝わりません。患者さんの発言、具体的な服薬状況、薬剤師が確認・説明した内容、合意した対応、次回の確認点を残しましょう。
記録の構成例:「昼は外出が多く飲めない」との発言 → 直近1週間の服用状況・残薬を確認 → 持ち歩き時の管理方法を説明 → 本人が試す方法を選択 → 次回来局時に実施状況を確認。処方変更の検討が必要な場合は、処方医に共有した内容と回答も記録します。
これは記載項目の例です。実際の薬歴には、確認できた事実と行った対応を記載し、未確認事項を補って書かないようにします。
電話やメッセージによるフォローを行う場合は、連絡方法、対応時間、確認する内容を共有します。メッセージを受け取れることと、すぐに対応できることを混同させない説明も必要です。
忙しい日も、確認する一言を決めておく
時間が限られている日は、「今回変わった薬で困っていないか」「実際にどう使っているか」「今日の説明を家で実行できるか」など、その患者さんで優先する点を決めます。緊急性のある訴えは、通常の説明より先に対応します。
服薬指導の時間を確保できない状態が続くなら、個人の話し方だけでなく、業務分担や人員配置を見直すことも必要です。働き方を整理したい方は、薬剤師の働き方に迷ったときに読む経験談と判断材料をご覧ください。
まとめ|明日の服薬指導で試したいこと
まずは一人の患者さんに、「どの場面で困りましたか?」と具体的に聞き、聞き取った内容を一度要約してみてください。説明後は、重要な使い方を患者さんの言葉や動作で確認し、次に何をするかを共有します。
信頼関係は、すべての問題をその場で解決する約束ではありません。分からない点を確認し、必要な対応につなげ、その経過を次の対話で確かめる積み重ねです。
参考文献
以下は対話・理解確認の参考資料です。薬剤別の服用方法や副作用対応は、対象薬の最新資料で確認してください。閲覧日:2026年10月4日。
- AHRQ:Teach-Back: Intervention
- NICE:Medicines adherence(CG76)Recommendations(成人の服薬アドヒアランスに関するガイドライン)
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患者さんと話す時間を確保したいという希望があるなら、今の職場で改善できる点を整理したうえで、他の職場の人員配置や業務分担を比較する方法もあります。転職・派遣サービスを利用する際は、紹介先ごとの勤務条件や支援体制を確認してください。


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