手足口病・ヘルパンギーナ・とびひの違い|薬剤師が押さえたい治療と服薬指導

薬剤師が解説
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夏になると、小児科の処方箋で目にする機会が増えるのが「手足口病」「ヘルパンギーナ」「とびひ」です。

どれも小児に多い疾患ですが、

「手足口病とヘルパンギーナは何が違う?」
「とびひには抗菌薬が必要?」
「保護者には何を伝えればいい?」

と、いざ服薬指導をしようとすると迷うこともあります。

特に新人・若手薬剤師の場合、病名だけを覚えるのではなく、原因・症状・治療・服薬指導をセットで整理しておくことが大切です。

この記事では、手足口病・ヘルパンギーナ・とびひの違いと、薬局で押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。


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手足口病・ヘルパンギーナ・とびひの違い

まず、大きな違いから押さえておきましょう。

疾患主な原因特徴治療の基本
手足口病ウイルス口・手・足などに水疱性の発疹対症療法
ヘルパンギーナウイルス発熱、のどの奥の水疱・潰瘍対症療法
とびひ細菌水疱・びらん・かさぶたが広がる抗菌薬など

手足口病とヘルパンギーナはいずれもウイルス感染症なので、基本的には抗菌薬で治療する疾患ではありません。

一方、とびひ(伝染性膿痂疹)はブドウ球菌や溶血性連鎖球菌などによって起こる細菌感染症です。

この違いを理解しておくと、処方内容を見るときにも判断しやすくなります。

手足口病|口の痛みと脱水に注意する

手足口病は、主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどによって起こる感染症です。

代表的な症状は、

  • 口の中
  • 手のひら
  • 足の裏や足の甲

などに現れる水疱性の発疹です。

厚生労働省によると、発熱は38℃以下のことが多く、多くは3〜7日程度で自然に改善します。

特別な治療薬はなく、治療は基本的に対症療法です。

発熱や痛みに対してアセトアミノフェンなどが処方されることがあります。

薬剤師が特に確認したいのは「水分が取れているか」

手足口病で薬剤師が意識したいのは、発疹そのものだけではありません。

口の中に水疱や潰瘍ができると痛みから水分を嫌がり、特に乳幼児では脱水につながることがあります。

服薬指導では、

「お水やお茶は飲めていますか?」
「おしっこの回数はいつもと比べて減っていませんか?」

など、具体的に確認するとよいでしょう。

口が痛い場合は、熱いもの、酸味や塩味の強いものは刺激になりやすいため、冷たいゼリーなど食べやすいものを選ぶ方法もあります。

また、手足口病は多くの場合自然に改善しますが、まれに髄膜炎や脳炎などの合併症を起こすことがあります。

高熱が続く、嘔吐を繰り返す、ぐったりしている、頭痛が強いなど普段と様子が違う場合は、再受診を勧めることが大切です。

ヘルパンギーナ|「のどの奥」と高熱がポイント

ヘルパンギーナも夏に乳幼児を中心に流行するウイルス感染症です。

手足口病との大きな違いは、のどの奥に水疱や潰瘍が現れることです。

発熱とのどの痛みが主な症状で、高熱になることもあります。

一方、手足口病のように手のひらや足の裏に特徴的な発疹が現れる疾患ではありません。

治療は手足口病と同じく対症療法が中心です。

解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンなどが処方されることがあります。

「薬を飲めるか」だけでなく「水分を取れるか」を聞く

ヘルパンギーナでは、のどの痛みが強くなると子どもが飲食を嫌がることがあります。

薬局では薬の服用状況だけではなく、

  • 水分が取れているか
  • 尿が出ているか
  • 食事をどの程度取れているか
  • ぐったりしていないか

まで確認したいところです。

保護者には、

「一度にたくさん飲ませなくてもいいので、少量ずつこまめに水分を取らせてください」

と説明すると実践してもらいやすくなります。

水分がほとんど取れない、尿量が明らかに少ない、ぐったりしている、呼吸状態がおかしいといった場合は、早めの医療機関への相談が必要です。

とびひ|ウイルスではなく細菌感染症

とびひの正式名称は「伝染性膿痂疹」です。

ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌などによって起こる皮膚の細菌感染症で、特に小児でよくみられます。

虫刺されや湿疹などを掻き壊したところに細菌が感染し、水疱やびらんが生じます。

さらに患部を掻いた手で別の場所を触ることで、火事の「飛び火」のように症状が広がっていくため「とびひ」と呼ばれています。

とびひでは抗菌薬が使われる

手足口病やヘルパンギーナと異なり、とびひでは細菌に対する治療が必要です。

症状がごく軽い場合には外用薬だけで治療することもありますが、症状や範囲によっては内服抗菌薬が使用されます。

ここで薬剤師が確認したいのが、

「どこに、どの薬を、どのくらい塗るのか」

という点です。

軟膏が複数処方されている場合には、保護者が塗布部位を混同していないか確認しましょう。

「この薬は赤くなっているところに塗ってください」
「こちらはこの部分だけです」

など、実際の患部を想定しながら説明すると伝わりやすくなります。

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とびひの服薬指導では感染拡大を防ぐ

とびひでは薬の説明と同じくらい、家庭での対応が重要です。

特に伝えたいのは、

  • 患部を清潔にする
  • 爪を短くする
  • 患部をできるだけ掻かない
  • タオルなどの共用を避ける
  • 病変部を適切に覆う

といったポイントです。

「お風呂に入れていいですか?」と聞かれることもあります。

日本皮膚科学会では、患部を石けんを使ってきれいに洗い、シャワーでよく流すことなどが案内されています。

「濡らしたらダメ」と考えている保護者もいるため、処方医から特別な指示がなければ、患部を清潔に保つことの大切さを説明しましょう。

とびひになったら保育園・学校は休む?

保護者からよく聞かれる質問です。

とびひだからといって、一律に学校や保育園を休まなければならないわけではありません。

日本皮膚科学会などの統一見解では、適切な治療を受け、病変部がきちんと覆われていれば、必ずしも学校を休む必要はないとされています。

ただし、病変が広範囲に及ぶ場合や全身症状がある場合などは休む必要があります。

園や学校ごとの対応もあるため、

「病変の状態によって違うので、医師や園・学校にも確認してください」

と案内するのが現実的です。

なお、とびひが治るまではプールや水泳は避けます。

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処方箋を見たときに薬剤師が確認したいポイント

手足口病、ヘルパンギーナ、とびひの処方を受けたときは、薬だけを見るのではなく子どもの状態まで確認することが重要です。

① 年齢と体重

小児では体重によって用量が決まる薬が多いため、体重確認は重要です。

特にアセトアミノフェンなどが処方されている場合は、処方量が体重に対して適切か確認します。

「前回来局したときの体重」が登録されていても、成長期の子どもでは現在の体重と大きく違っている可能性があります。

② 水分が取れているか

手足口病やヘルパンギーナでは特に重要です。

「食事は取れません」という場合でも、水分が取れて尿が出ていれば、ある程度状態を判断する材料になります。

一方、

  • ほとんど水分が取れない
  • 尿量が明らかに減っている
  • 口の中が乾いている
  • ぐったりしている

といった場合は脱水が疑われます。

③ 発熱だけで判断しない

「39℃だから危険」「38℃だから大丈夫」と体温だけで判断するのは避けたいところです。

子どもの全身状態、水分摂取、意識、呼吸状態などもあわせて確認します。

④ 保護者が困っていることを聞く

小児の服薬指導では、本人だけでなく保護者への支援も重要です。

「薬を飲んでくれない」
「口が痛くて何も食べない」
「軟膏をどこまで塗ればいいかわからない」

など、困っていることを一つ聞くだけでも服薬指導の質が変わります。

薬の説明を一方的にするのではなく、家庭で実際に困っていることを拾うのも薬剤師の役割です。

手足口病・ヘルパンギーナ・とびひで再受診を考えたい症状

薬局では「どんなときにもう一度病院へ行けばいいですか?」と聞かれることもあります。

たとえば、

  • 水分がほとんど取れない
  • 尿が明らかに減っている
  • ぐったりして反応が悪い
  • 嘔吐を繰り返している
  • 呼吸が苦しそう
  • 高熱が続き全身状態が悪い
  • 発疹や皮膚症状が急激に広がる
  • とびひの治療をしても改善しない

といった場合には、医療機関への相談を勧めます。

特に乳幼児は自分で症状をうまく伝えられません。

保護者に「何かおかしい」と感じる変化がある場合も、早めに相談するよう伝えておくと安心です。

まとめ|病名より「何を確認するか」を覚えよう

手足口病、ヘルパンギーナ、とびひは、いずれも夏の小児科でよく目にする疾患です。

しかし、

手足口病・ヘルパンギーナ=ウイルス感染症で対症療法が中心

とびひ=細菌感染症で抗菌薬による治療を行うことがある

という大きな違いがあります。

薬剤師としてさらに重要なのは、病名を覚えることだけではありません。

手足口病やヘルパンギーナなら「水分は取れているか」。

とびひなら「正しく外用できているか」「感染を広げる行動をしていないか」。

そして小児では「現在の体重に対して処方量は適切か」。

こうした視点を持って処方箋を見ると、服薬指導で確認すべきことが自然と見えてきます。

小児の処方では薬の説明だけで終わらず、「家に帰ってから困りそうなこと」まで考えて一言添えることが、薬剤師として価値のある服薬指導につながります。


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参考文献

  1. 厚生労働省「手足口病」
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html
  2. 厚生労働省「ヘルパンギーナ」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/herpangina.html
  3. 公益社団法人 日本皮膚科学会「とびひ」
    https://qa.dermatol.or.jp/qa13/index.html
  4. 公益社団法人 日本皮膚科学会「皮膚の学校感染症に関する統一見解について」
    https://www.dermatol.or.jp/public/publicnews/4294/
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