パーキンソン病の患者さんに「ヴィアレブ配合持続皮下注」が処方されていたら、薬剤師としてどこを確認すればよいでしょうか。
ヴィアレブは一般的な内服のパーキンソン病治療薬とは異なり、専用ポンプを使って24時間持続的に皮下投与する薬剤です。
そのため、
- どんな患者さんに使われるのか
- 内服のレボドパ製剤との関係
- 注入部位のトラブル
- ポンプが止まったときの対応
- 薬局での保管方法
など、薬剤師が知っておきたいポイントがいくつもあります。
この記事では、ヴィアレブについて「薬局で処方を受けたら何を見るか」という視点から整理します。
ヴィアレブはどんな薬?
ヴィアレブ配合持続皮下注は、
ホスレボドパ+ホスカルビドパ水和物
を配合したパーキンソン病治療薬です。
ホスレボドパは体内でレボドパへ、ホスカルビドパはカルビドパへ速やかに変換される「プロドラッグ」です。
つまり、考え方としてはレボドパ・カルビドパ製剤に近いのですが、大きな違いは内服ではなく持続皮下注で投与できることです。
適応は、
レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の症状の日内変動(wearing-off現象)の改善
です。
パーキンソン病では、長期間レボドパ治療を続けるなかで、薬が効いている「オン」と、効果が切れて症状が出てくる「オフ」の変動が問題になることがあります。
ヴィアレブでは薬剤を24時間持続的に皮下投与することで、血中レボドパ濃度を安定させることを狙います。
海外第Ⅲ相試験では、経口レボドパ・カルビドパ群と比較して、日常生活に支障をきたすジスキネジアを伴わないオン時間が有意に増加しました。

薬剤師がまず知っておきたい「24時間持続皮下注」
ヴィアレブで最初に押さえておきたいのが、単なる「皮下注射」ではないということです。
専用輸液ポンプ「ヴィアフューザー」と輸液セット、シリンジ、バイアルアダプタを使用して、24時間持続皮下投与します。
一般的な自己注射薬のように「1日1回注射する」といった使い方ではありません。
基本注入速度は患者さんごとに設定され、必要に応じて、
- 負荷投与
- 基本注入速度の調節
- 低い注入速度
- 高い注入速度
- オフ症状に対する追加投与
などが行われます。
患者さん自身が追加投与を行う場合もありますが、当然ながら自由に投与量を決めるわけではなく、医師があらかじめポンプに設定した範囲で使用します。
薬局で患者さんから、
「最近オフが多いので自分で量を増やしている」
「夜は調子がいいのでポンプを切っている」
などの話が出た場合には注意が必要です。
自己判断で投与量や投与時間を変更していないか確認しましょう。
導入時は「今まで飲んでいた薬」に注意
ヴィアレブ導入患者さんの処方を見るときには、従来のパーキンソン病治療薬との整理も重要です。
電子添文では、ヴィアレブ投与開始時に使用している
すべてのレボドパ含有製剤およびCOMT阻害薬を中止する
こととされています。
たとえばレボドパ・カルビドパ製剤などが漫然と処方に残っていないかは確認したいところです。
一方、ドパミン受容体作動薬など他のパーキンソン病治療薬が併用されるケースはあります。
「ヴィアレブが始まった=パーキンソン病薬を全部中止する」
というわけではありません。
薬剤師としては、導入前後で処方内容が大きく変わりやすい薬と考え、持参薬・他院処方も含めた薬剤整理を意識しておくとよいでしょう。
最重要ポイントは注入部位のトラブル
ヴィアレブで薬剤師が特に注意したいのが、注入部位反応と注入部位感染です。
電子添文では重大な副作用として注入部位感染が32.7%、その内訳として注入部位蜂巣炎22.0%、注入部位膿瘍8.5%と記載されています。
また、その他の副作用として、
- 注入部位紅斑:44.7%
- 注入部位結節:23.6%
- 注入部位浮腫:16.4%
- 注入部位疼痛:15.7%
などが報告されています。
「皮下注だから少し赤くなることもありますよ」で済ませず、
赤みが強くなっていないか
腫れや痛みが悪化していないか
熱を持っていないか
膿が出ていないか
などを確認することが重要です。
特に蜂巣炎や膿瘍が疑われる場合は、速やかな医療機関への相談につなげる必要があります。
投与部位は腹部が推奨され、臍から半径5cmの範囲を避けます。また、圧痛、あざ、発赤、硬結など皮膚に異常がある場所への投与は避けます。
輸液セットは少なくとも3日ごとに新しいものを使用し、投与部位を変更します。新しい投与部位は、過去12日間に使用した部位から2.5cm以上離すことが望ましいとされています。
在宅患者さんの場合には、本人だけでなく家族や訪問看護師などから皮膚の状態を聞くことも有用でしょう。
「ポンプが止まった」は重要な情報
ヴィアレブを使用している患者さんから、
「昨日、ポンプが止まっていた」
「チューブが外れてしまった」
と言われた場合も注意が必要です。
電子添文では、投与を1時間以上中断した場合には、新しい輸液セットを使用して投与部位を変更することが望ましいとされています。
さらに3時間を超えて中断した場合には、患者自身で負荷投与を行って速やかに症状をコントロールするよう指導するとされています。
長時間、具体的には24時間を超えて中断・中止した場合には、経口レボドパ・カルビドパ製剤など適切なドパミン作動薬の投与が必要です。
ここで重要なのが、バックアップ用の経口レボドパ製剤です。
電子添文でも、ポンプの故障や誤作動、一時的な中断などに備えて、
経口レボドパ・カルビドパ水和物製剤を常に用意しておく
よう記載されています。
薬剤師としては、
「予備の飲み薬はありますか?」
という確認を習慣にしておくとよいでしょう。
自己判断で急に中止しない
ヴィアレブでは「投与が止まること」自体にも注意が必要です。
レボドパ製剤を急激に減量・中止すると、悪性症候群を起こす可能性があります。
高熱、意識障害、高度の筋強剛、精神状態の変化、自律神経症状などがみられ、重症化すると横紋筋融解症につながることもあります。
そのため、
「体調が悪いから今日は使っていない」
「注射部位が痛いので自分で止めた」
といった話が出た場合には要注意です。
注入部位トラブルがあるからといって、患者さん自身の判断で長時間中止してしまわないよう説明する必要があります。
幻覚・眠気・ジスキネジアにも注意
ヴィアレブは投与方法こそ新しいものの、体内ではレボドパ・カルビドパとして作用します。
そのため、レボドパ製剤としての副作用にも注意します。
特に確認したいのが幻覚です。
電子添文では重大な副作用として幻覚20.4%が記載されています。ドパミン受容体作動薬を併用している患者では、幻覚がより高頻度に発現する可能性があります。
患者本人だけでなく、
「最近、人がいると言うようになった」
「夜中に誰かと話している」
など、家族から得られる情報も重要です。
そのほか、
- ジスキネジア
- 悪心
- 起立性低血圧
- 傾眠
- 突発的睡眠
- 衝動制御障害
などにも注意します。
突発的睡眠などが起こる可能性があるため、自動車運転など危険を伴う機械操作には従事させないよう注意することとされています。
パーキンソン病では高齢患者も多く、認知症治療薬が併用されるケースもあります。
→ 認知症治療薬4剤の違いと使い分けはこちら
薬局では「冷蔵保存」に注意
調剤時に忘れてはいけないのが保管条件です。
ヴィアレブは原則として、
2~8℃で保存
します。
一方で、室温30℃以下であれば28日間まで保管可能です。
そのため薬局では、
- 冷蔵庫で適切に保管できているか
- 患者さんが自宅でどのように保管しているか
- 旅行などで長期間持ち運ぶ予定がないか
まで確認できると安心です。
旅行時には、薬剤だけではなくシリンジ、バイアルアダプタ、輸液セットなど必要な構成品と予備を準備する必要があります。メーカーの患者向け資料でも、旅行日数分に加えて予備を用意することが案内されています。
24時間使用するからこそ「生活」について聞く
ヴィアレブは24時間ポンプを使用する治療です。
そのため服薬指導では薬の説明だけでなく、生活上の困りごとも聞いてみましょう。
たとえば、
「寝るとき邪魔になりませんか?」
「入浴するときは大丈夫ですか?」
「外出時に困ることはありませんか?」
といった質問です。
メーカー資料では、夜間も投与を継続するため、カニューレが引っ張られたりポンプが落下したりしないよう注意することが案内されています。
また輸液ポンプは防水ではないため、入浴時にはポンプを停止して外す必要があります。MRI検査や放射線治療などでは、一時的にポンプを外す場合もあります。
こうした「日常生活で困っていること」は、診察室より薬局で話してもらえるケースもあります。
薬剤師が確認したいポイントをまとめると
ヴィアレブの処方を受けたら、次のような点を確認してみましょう。
① 注入部位
赤み・腫れ・痛み・硬結・熱感などがないか。特に蜂巣炎や膿瘍には注意します。
② ポンプ
停止、アラーム、チューブ外れなどのトラブルが起きていないか確認します。
③ バックアップ薬
ポンプの故障や長時間の中断に備えた経口レボドパ・カルビドパ製剤が手元にあるか確認します。
④ パーキンソン症状
オフ時間が増えていないか、追加投与が増えていないかを確認します。追加投与が頻回になっている場合は主治医への情報提供も検討します。
⑤ 副作用
幻覚、ジスキネジア、傾眠、起立性低血圧、悪心、衝動制御障害などを確認します。
⑥ 保管
原則2~8℃で保存します。室温30℃以下で保管する場合も28日を超えないよう注意します。
新しい薬や在宅医療に対応していると、「今の職場でもっと経験を積めるだろうか」と考えることもあります。
薬局によって、扱う処方箋や在宅医療への取り組み、教育体制はかなり異なります。
今すぐ転職するつもりがなくても、自分の経験がどのくらい評価されるのかを知っておくことは、働き方を考える材料になります。
まとめ|ヴィアレブでは「薬+デバイス+皮膚」を見る
ヴィアレブは、単に新しいレボドパ製剤として覚えるだけでは十分ではありません。
薬剤師として特に押さえておきたいのは、
「薬」だけではなく「ポンプ」と「注入部位」まで確認する
という点です。
特に、
注入部位感染
ポンプの中断
バックアップの経口レボドパ
幻覚やジスキネジア
冷蔵・室温管理
は薬局でも確認しやすく、患者さんの安全にもつながるポイントです。
ヴィアレブを使用する患者さんは、すでに複数のパーキンソン病治療薬を経験し、日内変動に悩んできたケースが多いと考えられます。
「薬は出ています」で終わるのではなく、
「注射するところは赤くなっていませんか?」
「ポンプが止まったことはありませんか?」
「予備の飲み薬は手元にありますか?」
と一歩踏み込んで確認できることが、薬剤師の重要な役割ではないでしょうか。

参考文献
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ヴィアレブ配合持続皮下注 電子添文」
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ヴィアレブ配合持続皮下注 医薬品情報」
- アッヴィ合同会社「ヴィアレブによる治療に関するQ&A」
薬剤師としてできることを増やしたいと感じたら
ヴィアレブのような新しい治療薬を扱うと、薬剤師にも薬だけではなく、デバイスや在宅での生活まで見る力が求められていると感じます。
一方で、経験できる業務は薬局によって大きく異なります。
「在宅をもっと経験したい」
「専門性を身につけたい」
「今の職場以外ではどんな働き方ができるのか知りたい」
という方は、一度求人を見てみるだけでも今後のキャリアを考える材料になります。

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