慢性腎臓病(CKD)は、薬局でも意識する機会が多い疾患です。
処方箋にCKDと書かれていなくても、検査値を見るとeGFRが低下していたり、腎機能に応じた用量調整が必要な薬が処方されていたりすることがあります。
CKDは進行するまで自覚症状が乏しい一方、悪化すると透析や腎移植が必要になる可能性があります。また、腎不全だけでなく、心筋梗塞や脳卒中、心不全などの心血管疾患とも深く関係する病気です。
薬剤師には、CKDの診断基準を知るだけでなく、処方薬の用量、腎機能を悪化させる要因、患者さんの体調変化まで確認することが求められます。
この記事では、新人・若手薬剤師が押さえておきたいCKDの基本と薬局での確認ポイントを解説します。
CKD(慢性腎臓病)とは
CKDは「Chronic Kidney Disease」の略で、日本語では慢性腎臓病と呼ばれます。
CKDの診断では、次のいずれか、または両方が3か月以上続いているかを確認します。
- 蛋白尿など、腎障害を示す所見がある
- GFRが60mL/分/1.73㎡未満である
重要なのは、検査値が1回悪かっただけではCKDと判断しないことです。
脱水や発熱、下痢、嘔吐、薬剤の影響などによって、一時的にクレアチニン値が上昇することもあります。慢性的な腎機能低下なのか、急性腎障害なのかを区別するためにも、これまでの検査値や経過を確認する必要があります。
また、CKDには高血圧、糖尿病、慢性糸球体腎炎、加齢など、さまざまな原因があります。原因疾患によって治療方針や注意点が異なるため、「eGFRが低い患者」と一括りにしないことが大切です。
eGFRと蛋白尿を組み合わせて評価する
CKDの重症度は、主に次の3つを組み合わせたCGA分類で評価します。
- C:原因疾患
- G:GFR区分
- A:蛋白尿・アルブミン尿区分
eGFRは、血清クレアチニン値、年齢、性別から腎臓のろ過機能を推算した数値です。数値が低いほど、腎機能が低下していると考えます。
GFR区分は以下のように分けられます。
| 区分 | eGFR(mL/分/1.73㎡) | 腎機能の目安 |
|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 正常または高値 |
| G2 | 60~89 | 正常または軽度低下 |
| G3a | 45~59 | 軽度~中等度低下 |
| G3b | 30~44 | 中等度~高度低下 |
| G4 | 15~29 | 高度低下 |
| G5 | 15未満 | 末期腎不全 |
ただし、eGFRが60以上でも、蛋白尿や血尿、画像・病理検査などで腎障害が確認されればCKDに該当する可能性があります。
一方、蛋白尿が少なくてもeGFRが大きく低下している患者では、腎不全や心血管疾患のリスクを無視できません。
そのため、eGFRだけ、あるいは蛋白尿だけを見るのではなく、両方を組み合わせて評価することが重要です。
CKD治療では腎機能の低下を抑える
CKD治療の目的は、腎機能低下の進行を抑え、透析導入や心血管疾患の発症をできるだけ防ぐことです。
治療内容は、原因疾患、蛋白尿、腎機能、血圧、糖尿病や心不全の有無などによって異なります。
血圧を管理する
高血圧はCKDの原因になるだけでなく、すでに低下している腎機能をさらに悪化させることがあります。
蛋白尿を伴う高血圧では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が選択肢になります。
これらは糸球体内圧を下げ、蛋白尿を減少させることで腎保護作用が期待されます。
一方、投与開始後や増量後には、血清クレアチニン値の上昇や高カリウム血症が生じることがあります。薬剤師は、検査値の変化やカリウムを上昇させる併用薬にも注意が必要です。
ACE阻害薬とARBの併用は、高カリウム血症や急性腎障害のリスクを高めるため、原則として行いません。
SGLT2阻害薬で腎機能低下を抑える
SGLT2阻害薬は、もともと糖尿病治療薬として使用されてきましたが、現在は糖尿病のないCKD患者でも腎保護効果が示されています。
CKDに適応を持つ薬剤には、ダパグリフロジンやエンパグリフロジンがあります。ただし、すべてのSGLT2阻害薬が同じ適応を持つわけではありません。処方監査では薬剤ごとの効能・効果を確認しましょう。
SGLT2阻害薬の開始後には、一時的にeGFRが低下することがあります。これを「イニシャルディップ」と呼びます。
一時的な低下だけで直ちに腎機能悪化と判断するのではなく、その後の経過や低下の程度、脱水の有無などを確認することが大切です。
服薬指導では、次のような点を確認します。
- 口渇や立ちくらみがないか
- 尿量が極端に増えていないか
- 発熱、下痢、嘔吐がないか
- 食事や水分をとれているか
- 尿路・性器感染症を疑う症状がないか
体調不良時の対応は、患者さんの病態や併用薬によって異なります。自己判断で中止や継続を決めるのではなく、あらかじめ医師や薬剤師へ相談するよう説明します。
原因疾患と生活習慣にも対応する
CKDでは、薬物治療だけでなく、原因となる疾患の管理も欠かせません。
糖尿病があれば血糖管理、高血圧があれば血圧管理、脂質異常症があれば心血管リスクを考えた治療を行います。
生活習慣では、減塩、禁煙、適正体重の維持、病態に応じた運動などが基本です。
ただし、蛋白質、カリウム、水分の制限は、すべてのCKD患者に一律で行うものではありません。過度な制限によって低栄養やフレイルにつながる可能性もあるため、腎機能や検査値、医師や管理栄養士の指示に合わせる必要があります。
腎機能に応じた投与量を確認する
CKD患者では、腎臓から排泄される薬が体内に蓄積し、副作用が出やすくなることがあります。
腎機能による用量調整が必要になりやすい薬の例は以下のとおりです。
| 薬剤群 | 主な薬剤例 | 注意するポイント |
|---|---|---|
| 抗菌薬 | レボフロキサシン、セフカペンなど | 腎機能に応じて用量・投与間隔を確認 |
| 抗凝固薬 | DOAC | 腎機能、年齢、体重などから用量を確認 |
| 糖尿病治療薬 | メトホルミンなど | 腎機能低下時の投与可否や用量に注意 |
| 神経障害性疼痛治療薬 | プレガバリン、ミロガバリン | 眠気、ふらつき、転倒にも注意 |
| 抗ウイルス薬 | バラシクロビルなど | 過量投与による精神神経症状に注意 |
| H₂受容体拮抗薬 | ファモチジンなど | 腎機能に応じた減量を検討 |
ここで注意したいのが、eGFRとクレアチニンクリアランス(Ccr)の違いです。
eGFRは体表面積1.73㎡で補正された数値です。一方、添付文書に記載された投与量の基準は、Cockcroft-Gault式によるCcrを用いている薬もあります。
特に高齢者や、体格が大きい・小さい患者では、eGFRと実際の腎排泄能に差が生じることがあります。「eGFRが○○だからこの用量」と機械的に判断せず、添付文書がどの指標を採用しているか確認しましょう。
筋肉量が少ない高齢者では、血清クレアチニン値が低くても腎機能が保たれているとは限りません。年齢、体重、筋肉量、これまでの検査値を含めて評価することが大切です。
CKD患者でNSAIDsに注意する理由
NSAIDsは、腎臓でプロスタグランジンの産生を抑え、輸入細動脈を収縮させることで腎血流を低下させることがあります。
特に注意したいのは、以下のような患者です。
- CKDがある
- 高齢者
- 発熱、下痢、嘔吐などで脱水している
- 食事や水分の摂取量が減っている
- 心不全がある
- 利尿薬を服用している
- ACE阻害薬やARBを服用している
ACE阻害薬またはARB、利尿薬、NSAIDsが重なる組み合わせは、急性腎障害のリスクを高める組み合わせとして知られています。
処方薬だけでなく、市販のロキソプロフェンやイブプロフェンを患者さんが使用していることもあります。
「痛み止めを飲んでいませんか」と聞くだけでは、患者さんが風邪薬や市販薬を申告しない可能性があります。
「ドラッグストアで買った痛み止めや風邪薬も含めて使っていませんか」と具体的に確認するとよいでしょう。
NSAIDsを一律に使用できないわけではありませんが、患者背景、使用量、投与期間、脱水、併用薬を踏まえて慎重に判断します。
薬剤師が服薬指導で確認したいこと
CKD患者への服薬指導では、薬の飲み方だけでなく、腎機能悪化を示す変化がないか確認します。
体調不良と脱水
発熱、下痢、嘔吐、食欲低下があると、脱水によって腎機能が急激に悪化することがあります。
特に、利尿薬、ACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬、NSAIDsなどを使用している患者では、体調不良時の状況を確認することが大切です。
患者さんには、食事や水分がとれない場合や症状が続く場合は、早めに医療機関へ相談するよう伝えます。
尿量・むくみ・体重の変化
尿量の低下、むくみの悪化、急な体重増加は、腎機能低下や体液貯留のサインになる可能性があります。
反対に、急な体重減少、強い口渇、ふらつきがある場合は、脱水や利尿過剰も疑います。
「尿は出ていますか」だけでなく、以前と比べた変化を聞くことがポイントです。
検査値と処方変更
腎機能に影響する薬が開始・増量された場合は、検査値が確認されているかを見ます。
特に確認したいのは以下の項目です。
- 血清クレアチニン
- eGFR
- 血清カリウム
- 尿蛋白・尿アルブミン
- 血圧
- 体重
前回値と比較して急激な変化がある場合は、処方医への確認や早めの受診につなげる必要があります。
CKDの処方で確認したいポイント
CKD患者の処方を確認するときは、次のように整理すると実践しやすくなります。
- CKDの原因疾患は何か
- eGFRだけでなく蛋白尿も確認できるか
- 腎機能に応じた用量になっているか
- 用量設定にはeGFRとCcrのどちらを使う薬か
- NSAIDsや市販薬を使用していないか
- ACE阻害薬・ARB使用中のカリウム値は問題ないか
- 脱水につながる体調不良がないか
- 尿量、むくみ、体重に変化がないか
- 最近、薬の開始や増量がなかったか
CKDは、処方箋だけでは把握しにくい疾患です。
病名の記載がなくても、検査値、年齢、体重、併用薬、患者さんの訴えを組み合わせることで、見逃していたリスクに気づけることがあります。
薬剤師としては「腎機能が悪いから減量する」という確認だけで終わらず、薬による腎機能悪化を防ぎ、治療を安全に継続できるよう支援することが大切です。
まとめ
CKDは、腎障害を示す所見またはeGFR 60mL/分/1.73㎡未満の状態が、3か月以上続く場合に診断されます。
重症度はeGFRだけでなく、原因疾患と蛋白尿・アルブミン尿を組み合わせて評価します。
薬剤師が特に確認したいポイントは次のとおりです。
- 腎機能に応じた投与量
- eGFRとCcrの使い分け
- NSAIDsや市販薬の使用
- 脱水につながる体調不良
- 尿量、むくみ、体重の変化
- 血清カリウムなどの検査値
CKDは早期発見と継続的な管理が重要です。
処方監査と服薬指導の両方から患者さんの変化を確認し、必要に応じて医師へ情報提供できるようにしておきましょう。

参考文献・情報源
- 日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
- 日本腎臓学会:CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation
- 厚生労働省:慢性腎臓病(CKD)ってなぁに?
- 日本腎臓学会:診療ガイドライン一覧
- 厚生労働省:腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準

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