「管理薬剤師になりませんか?」
若手薬剤師の中には、いつかこんな話をされる人もいると思います。
管理薬剤師と聞くと、
- 給料が上がりそう
- 店舗の責任者になる
- キャリアアップになりそう
- 大変そうだけど、一度は経験した方がいいのかな
そんなイメージがあるのではないでしょうか。
僕も、だいたい同じように考えていました。
ただ、実際に管理薬剤師を経験してみると、想像していた以上に大変でした。
僕が初めて管理薬剤師になったのは、薬剤師2年目です。
十分に経験を積んでから管理薬剤師になったわけではありません。
人手不足の影響もあり、M&Aで新しく会社の店舗となった薬局を、急遽任されることになりました。
今振り返ると、
「よく2年目でやっていたな」
と思います。
今回は、そんな僕が管理薬剤師を経験して感じたことを書いてみます。
薬剤師2年目で、突然管理薬剤師になった
管理薬剤師になる前の僕は、
「責任者になるんだから大変だろうな」
とは思っていました。
一方で、
「管理薬剤師になれば給料も上がるのかな」
という期待も少しありました。
実際に管理薬剤師になってみると、最初に感じたのは、
想像していたより、はるかにきつい。
ということでした。
当時はまだ薬剤師2年目。
薬剤師としての通常業務だけでも分からないことが多い時期です。
それなのに、突然店舗を任されました。
調剤、監査、服薬指導、薬歴だけではありません。
在庫管理、保健所への対応、店舗運営、スタッフとのやり取りなど、これまで自分が意識していなかった仕事まで一気に増えました。
さらに個別指導への対応もありました。
当然、分からないことだらけです。
「これはどうすればいいんですか?」
「この場合はどう対応するんですか?」
と、とにかく周囲の人に質問しました。
分からなければ他店舗の人に聞く。
それでも分からなければ会社に聞く。
場合によっては保健所にも直接確認する。
そんなことを繰り返しながら、なんとか乗り切っていました。
管理薬剤師というと、
「何でも知っている人」
のようなイメージを持つかもしれません。
でも実際には、最初からすべて分かる人なんていません。
分からないことを放置せず、
誰に聞けば答えにたどり着けるのかを考えることも、管理薬剤師に必要な能力だった
と今では思っています。
一人薬剤師で、すべての仕事を抱えていた
当時は一人薬剤師でした。
つまり、薬剤師業務は基本的にすべて自分でやります。
患者さんが来れば調剤する。
服薬指導をする。
薬歴を書く。
在庫も確認する。
何か問題が起これば対応する。
クレームがあれば自分で対応する。
さらに管理薬剤師としての仕事もあります。
当然、業務時間内ですべて終わるわけではありません。
かなり残業しました。
管理薬剤師になったことで給与が大きく上がったわけではありません。
前職でも現在の職場でも、僕の場合は
「管理薬剤師になったから基本給が大きく上がった」
という経験はありませんでした。
前職では残業が非常に多かったため、結果的に年収は100万円ほど増えました。
ただ、それは管理薬剤師手当で増えたというより、
大量の残業代で増えただけ
です。
今考えると、あまり健全な年収の上がり方ではなかったと思います。
「管理薬剤師=給料が大きく上がる」
とは限りません。
もし管理薬剤師を打診されたのであれば、責任だけではなく、
- 管理薬剤師手当はいくらなのか
- 基本給は変わるのか
- 残業時間はどの程度なのか
- 一人薬剤師になる時間はあるのか
- 管理業務をする時間が確保されているのか
こうした条件は、事前に確認しておいた方がいいと思います。
僕自身、新人〜若手の頃は仕事の余裕がほとんどありませんでした。新人時代に何がつらかったのかは、こちらの記事でも詳しく書いています。

一番つらかったのは、人間関係だった
業務量も大変でしたが、個人的につらかったのは人間関係です。
当時、事務スタッフとの関係がうまくいかず、職場で孤立してしまった時期がありました。
今振り返れば、僕自身のコミュニケーションにも問題があったと思います。
薬剤師2年目で余裕もなく、
「店舗を回さないといけない」
「自分が何とかしないといけない」
という気持ちが強すぎました。
ただ、自分一人で店舗は運営できません。
管理薬剤師だからといって、何でも自分の言う通りにできるわけでもありません。
むしろ、
周囲の人と協力して仕事ができる環境を作ること
も管理薬剤師の大切な仕事だと思います。
このときの失敗は、今の自分にもかなり影響しています。
現在も管理薬剤師として働いていますが、当時に比べると人間関係はかなり落ち着いています。
相手にどう伝えるか。
自分の考えを押し付けていないか。
困ったときに相談できているか。
情報共有ができているか。
以前よりも、こうしたことを意識するようになりました。
管理薬剤師になった経験は、自分のコミュニケーション能力の問題点を知るきっかけにもなったと思っています。
管理薬剤師になると「他人のミス」も自分の仕事になる
一般薬剤師だった頃は、困ったことがあれば管理薬剤師や上司に相談できます。
もちろん一般薬剤師にも責任はあります。
ただ、最終的な判断を管理薬剤師に相談できる場面は多いです。
一方、管理薬剤師になると立場が変わります。
何かトラブルが起きたとき、
「自分がやったミスではありません」
では済まないことがあります。
スタッフが起こしたミスであっても、必要であれば患者さんに謝罪します。
なぜミスが起きたのかを考えます。
そして、
「次に同じことを起こさないためにはどうするか」
を考えて、再発防止策を店舗内で共有します。
管理薬剤師になってから、
個人のミスを見るのではなく、店舗の仕組みを見る
という意識が少しずつ身につきました。
これは管理薬剤師になって変わった大きな部分だと思います。
現在は、売上や加算についても以前より見るようになりました。
薬剤師2年目の頃は、正直、売上のことなんてほとんど分かっていませんでした。
今では、
「この薬局に何が足りないのか」
「どの加算を算定できる可能性があるのか」
「そのためには、店舗として何を改善する必要があるのか」
といったことも考えるようになりました。
管理薬剤師になると、薬剤師として患者さんを見るだけではなく、
薬局全体を見る視点
が必要になってきます。
これは大変な部分でもありますが、面白さでもあると思います。
管理薬剤師になってよかったこともある
ここまで大変だった話ばかり書きました。
では、管理薬剤師になったことを後悔しているかというと、そうではありません。
管理薬剤師になったことで、自分に足りないものがかなり見えました。
知識。
経験。
コミュニケーション能力。
人に頼る力。
判断力。
問題が起きたときに対応する力。
店舗全体を見る力。
特に大きかったのは、
分からないことを人に聞くことへの抵抗がなくなったこと
かもしれません。
管理薬剤師という立場になると、自分で判断しなければならないことが増えます。
しかし、自分だけで判断してはいけないこともあります。
分からなければ聞く。
詳しい人に教えてもらう。
必要なら行政にも確認する。
最終的な責任を持つことと、一人ですべてを解決することは違います。
むしろ管理薬剤師だからこそ、
適切な人に助けを求める力が必要
なのだと思います。

今、若手薬剤師に「管理薬剤師になった方がいいですか?」と聞かれたら
たぶん最初にこう答えます。
「給料が変わらないなら、やめとけ」
少し乱暴に聞こえるかもしれません。
でも、管理薬剤師になると責任は確実に増えます。
スタッフの問題。
患者さんとのトラブル。
在庫。
行政対応。
店舗運営。
売上。
加算。
会社とのやり取り。
何かあれば、最終的に管理薬剤師が動かなければならない場面は少なくありません。
それなのに給与も待遇もほとんど変わらないのであれば、
「管理薬剤師という肩書きが付くから」
という理由だけで引き受ける必要はないと僕は思っています。
もちろん、管理薬剤師になること自体に意味がないわけではありません。
自分の責任で店舗を運営してみたい。
店舗をもっと良くしたい。
マネジメントを経験したい。
将来、エリアマネジャーや本部業務などにも関わりたい。
そういった目的があるのであれば、管理薬剤師を経験する価値はあります。
逆に、
「会社から言われたから」
「なんとなくキャリアアップになりそうだから」
という理由だけなら、一度立ち止まって考えてもいいと思います。
「管理薬剤師になるなら、仕事内容だけでなく給与や人員体制まで確認した方がいいと思います。僕自身、現在は転職して同じ管理薬剤師でも以前より落ち着いて働けています。
管理薬剤師になることが、薬剤師の正解ではない
薬剤師として働いていると、
一般薬剤師から管理薬剤師へ。
管理薬剤師からエリアマネジャーへ。
そんなキャリアが「順調なキャリアアップ」のように見えることがあります。
でも僕は、必ずしもそうではないと思っています。
患者さんへの服薬指導を極めるのもいい。
在宅医療に力を入れるのもいい。
専門性を高めるのもいい。
プライベートを優先して働くのもいい。
管理薬剤師を目指さない選択も、当然ありです。
大切なのは、
何のために管理薬剤師になるのか
だと思います。
給料を上げたいのか。
マネジメントを経験したいのか。
店舗づくりをしたいのか。
将来のキャリアにつなげたいのか。
目的によって、管理薬剤師になる価値は変わります。
僕自身、薬剤師2年目で突然管理薬剤師になり、かなり苦労しました。
人間関係でも失敗しました。
残業もたくさんしました。
分からないことだらけで、いろいろな人に質問しました。
それでも、その経験が今の自分につながっている部分は確実にあります。
だからこそ、今伝えたいのは、
「管理薬剤師になった方がいい」でも「絶対にやめた方がいい」でもありません。
管理薬剤師になるなら、
目的を持ってなりましょう。
肩書きではなく、その経験を自分の働き方や将来にどうつなげたいのか。
そこまで考えてから選んでも遅くないと思います。


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