ジャスケイド(ネランドミラスト)とは?作用機序・副作用・併用時の注意点を薬剤師向けに解説

医薬品等解説
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作成・情報確認日:2026年10月27日
対象:新人・若手薬剤師、処方監査・服薬指導で要点を整理したい薬剤師
基準資料:ジャスケイド電子添文2026年9月改訂(第3版、PMDA掲載日9月30日)

「オフェブやピレスパと何が違う?」「9mgへの減量は、どの患者さんでもできる?」「他の薬と一包化してもよい?」

ジャスケイドの処方を受けたときは、新しい作用機序だけでなく、併用薬による用量の違いと、家庭での薬の管理方法まで確認したいところです。

先に結論を整理すると、ジャスケイドは、特発性肺線維症・進行性肺線維症に用いる、PDE4Bに対する選択性の高い阻害薬です。通常は1回18mgを1日2回服用しますが、併用薬によって「9mgへ減量する場合」と「9mgへ減量しない場合」があります。 また、光に不安定なため、服用直前までPTPシートで保管することも重要です。[1]

この記事では、オフェブ・ピレスパとの違いから、下痢への対応、相互作用、一包化の相談時に確認することまで、薬局実務に沿って解説します。

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ジャスケイドとは?まず押さえたい基本情報

項目 内容
商品名 ジャスケイド錠9mg・18mg
一般名 ネランドミラスト
薬効 PDE4B阻害剤/抗線維化・免疫調整剤
国内販売開始 2026年7月
適応 特発性肺線維症、進行性肺線維症
通常用量 成人に1回18mg、1日2回
食事との関係 食事の有無にかかわらず服用可能
特に確認する点 併用薬に応じた用量、下痢・食欲・体重、PTPでの保管

出典:[1]。減量には例外があるため、用量だけを切り離して判断しないでください。

どのような病気に使うのか

特発性肺線維症(IPF)は、原因を特定できない肺の線維化が進み、肺が硬くなって呼吸機能が低下していく病気です。一方、進行性肺線維症(PPF)は、IPF以外の間質性肺疾患で、進行性の線維化を示す患者集団を指します。[2]

PPFでは、間質性肺疾患という病名だけで適応を判断することはできません。電子添文では、肺機能・呼吸器症状・胸部画像所見を総合的に評価し、進行性線維化が認められる患者に投与するよう示されています。[1]

患者さんには、線維化した肺を元に戻すと説明するのではなく、「肺の機能が落ちていく速さを抑えるための薬です」と伝えると、治療を続ける目的を共有しやすくなります。

効果は「肺機能の低下を抑える」という視点で見る

承認の根拠となった主な試験は、IPFを対象としたFIBRONEER-IPF試験と、PPFを対象としたFIBRONEER-ILD試験です。いずれも52週時点の努力性肺活量(FVC)の変化を主要評価項目とし、ネランドミラスト群ではプラセボ群に比べて低下が小さくなりました。[1,2]

ここで大切なのは、「飲むとすぐに息切れがよくなる」という評価とは異なることです。また、これらはオフェブやピレスパとの直接比較試験ではありません。新薬であることや作用機序の違いだけで、既存薬より優れていると順位づけることはできません。

オフェブ・ピレスパとは作用機序がどう違う?

3剤とも肺の線維化に関わる治療薬ですが、働きかける場所と服用方法が異なります。

比較項目 ジャスケイド オフェブ ピレスパ
一般名 ネランドミラスト ニンテダニブ ピルフェニドン
作用の中心 PDE4B阻害による細胞内cAMP増加 PDGFR・FGFR・VEGFRなどの受容体チロシンキナーゼ阻害 サイトカイン・増殖因子の産生調節など
国内適応 IPF、PPF IPF、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患、PPF IPF
通常の服用方法 1回18mg、1日2回。食事の有無を問わない 1回150mg、1日2回、朝・夕食後 1回200mg、1日3回食後から開始し、状態を見て1回600mgまで漸増
指導で意識する違い 併用薬による減量条件、光を避けた保管 下痢、肝機能、出血など 光線過敏症、食欲不振・悪心など

出典:[1,4,5]。通常用量の比較であり、個々の患者さんの用量・中断・再開は各薬剤の電子添文と処方指示を確認します。表は副作用の全項目を示したものではありません。

ジャスケイドはPDE4Bを阻害し、細胞内のcAMPを増やす

ホスホジエステラーゼ(PDE)4は、細胞内で情報を伝える環状アデノシン一リン酸(cAMP)を分解する酵素です。ネランドミラストはPDE4Bを優先的に阻害し、cAMPの細胞内濃度を増やすことで、線維化や炎症に関わる因子の発現を抑えます。[1]

オフェブが増殖因子の受容体を介したシグナル伝達を抑えるのに対し、ジャスケイドはcAMPの分解に働きかける、と整理すると違いをつかみやすくなります。ピレスパは、複数のサイトカインや増殖因子の産生調節などを通じて抗線維化作用を示す薬です。[4,5]

なお、「PDE4Bに対する選択性が高い」という性質から、副作用が起こらないとはいえません。日常の服薬指導では、作用機序の説明と同時に、下痢を早めに相談できるよう準備することが大切です。

用法用量と減量時の注意点|併用薬で対応が変わる

通常は1回18mgを1日2回服用し、忍容性に応じて1回9mgを1日2回へ減量できます。ただし、次の併用条件を先に確認します。[1]

併用状況 電子添文上の用量の扱い 理由
ピレスパ(ピルフェニドン)併用 1回9mg・1日2回へ減量しない ジャスケイドの曝露量が低下し、作用が弱まるおそれ
強い、または中程度のCYP3A誘導剤併用 1回9mg・1日2回へ減量しない 代謝が促進され、曝露量が低下するおそれ
強いCYP3A阻害剤併用 1回9mg・1日2回へ減量する 代謝が阻害され、曝露量が上昇するおそれ

出典:[1]第7項・第10項。

ピレスパ併用中は「副作用があるから9mg」と単純に考えない

ピルフェニドン併用患者では、ネランドミラストの定常状態のトラフ血漿中濃度が約50%低下しています。このため、電子添文では9mgへの減量を行わないよう規定されています。[1]

たとえば、ピレスパ併用中にジャスケイドが18mgから9mgへ変更された場合は、併用継続の有無と変更意図を確認する場面です。副作用が疑われるときも、患者さんに我慢を勧めるのではなく、症状と併用状況を処方医へ伝え、対応を相談します。

クラリスロマイシンなどが追加されたら、短期間でも用量を確認する

強いCYP3A阻害剤の例は、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リトナビルです。一方、誘導剤の例として、リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、ボセンタンなどが記載されています。[1]

「呼吸器の薬は前回と同じ」でも、他院から抗菌薬などが追加されていれば確認が必要です。阻害剤を終了した後も、ジャスケイドの用量をどう戻すかまで処方医と共有すると、減量用量の継続を防ぎやすくなります。

ピルフェニドンと強いCYP3A阻害剤など、用量に関する条件が重なる場合は、どちらか一方の規定だけで決めず、処方医・製造販売元への確認を含めて整理します。

サプリメントでは、セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)にも注意します。患者向医薬品ガイドでは、これを含む食品を控えるよう案内されています。[3]

副作用は下痢を中心に、食欲・体重まで確認する

電子添文に記載された重大な副作用は重度の下痢(1.3%)です。その他の副作用には、下痢(30.8%)、食欲減退、悪心、体重減少などがあります。[1]

ここで示した頻度は電子添文第11項の数値です。個別試験の有害事象発現率とは集計が異なり、他剤の数値と並べるだけで安全性を比較することはできません。

「下痢はありますか?」から一歩進めて聞く

確認したいのは、普段から何回増えたか、水のような便か、いつから続いているか、食事や水分を取れているかです。尿量の減少、ふらつき、口の渇き、体重の変化も一緒に聞くと、生活への影響を把握しやすくなります。

以下は、電子添文の注意を薬局での聞き取りに落とし込んだ実務上の提案です。水様便が続く、水分を取れない、尿が明らかに少ない、強いふらつきがある場合は、次回受診まで待たず、その日のうちに医療機関へ相談するよう案内します。意識がおかしい、立てないなどの強い症状は救急受診を含む対応が必要です。

オフェブを併用している場合は、もともとの便の状態と、ジャスケイド追加後の変化を分けて記録します。どちらの薬が原因かを薬局だけで決めず、開始・増減量の時期、症状の経過、食事量をまとめて処方医へ伝えます。

食欲減退・体重減少も継続の負担になる

「食べられていますか?」だけでは、少しずつ食事量が減っていることを見落としがちです。「以前の何割くらい食べられますか」「最近、体重は変わりましたか」と具体化すると、次回との比較がしやすくなります。

患者さんには、自己判断で量を減らす前に相談できることを伝え、薬局・医療機関の連絡先と相談する症状を共有しておきます。

腎機能・肝機能、妊娠に関する確認点

軽度から高度の腎機能障害でも、透析非実施の患者については用量調整不要と考えられています。ただし、末期腎不全(eGFR 15mL/min/1.73m²未満)では、薬物動態試験や有効性・安全性を評価する臨床試験が実施されていません。「腎機能に関係なく使える」と広げないことが大切です。[1]

重度肝機能障害(Child-Pugh C)では治療は推奨されません。これは電子添文上の禁忌とは区別して扱います。禁忌は、本剤成分に対する過敏症の既往です。[1]

妊婦・妊娠の可能性がある女性への投与は避けることが望ましく、妊娠可能な女性には投与中と最終投与後4日間の避妊が必要です。授乳については、治療と母乳栄養の有益性を踏まえて継続・中止を検討します。[1]

一包化・粉砕など、調剤時はどう考える?

光に不安定なため、通常の一包化は避ける

電子添文では、服用直前にPTPシートから取り出すよう指導することとされています。したがって、通常の一包化や、取り出した錠剤を数日分まとめて薬ケースに入れる運用は避け、PTPのまま交付・保管することを基本にします。[1]

これは、電子添文の保管指示から導く実務上の対応です。「一包化禁忌」という記載があるわけではありませんが、遮光袋を使えば一律に一包化できる、とも判断できません。服薬支援上どうしても別の管理が必要なときは、最新の安定性資料と製造販売元の情報を確認します。

他の薬が一包化されている患者さんでは、ジャスケイドだけPTP管理になることを本人・家族・訪問看護師などと共有します。服用時点が分かる表示や服薬カレンダーを活用し、飲み忘れと重複服用を防ぐ工夫が必要です。

噛まずに服用し、粉砕・分割を安易に勧めない

服用方法は、噛まずにコップ一杯の水で飲むことです。飲みにくいという相談に、その場で粉砕・分割を勧めることは避けます。18mg錠の半錠を9mg錠と同じ扱いにせず、減量時は処方規格を確認します。[1]

嚥下やPTPの取り出しに困難がある場合は、どの動作が難しいかを具体化し、家族の介助や支援方法を相談します。

薬を実際に管理できているかを生活の中で確認する視点は、薬剤師の往診同行で服薬管理の課題を見つけた事例でも紹介しています。

飲み忘れたら、気づいた時点で追加しない

患者向医薬品ガイドでは、飲み忘れた分は飛ばし、次の決められた時間に1回分を飲むよう案内されています。2回分を一度に飲まないこともセットで説明します。[3]

薬局で使える処方監査・服薬指導の確認表

確認する場面 聞くこと・見ること 次の対応
初回処方 IPF・PPFの治療目的、既存薬からの切替か追加か 中止薬と継続薬を整理する
9mg処方・減量時 ピルフェニドン、CYP3A誘導剤・阻害剤の併用 用量条件と処方意図を照合する
他院薬の追加 抗菌薬・抗真菌薬などの新規処方、サプリ 追加薬と終了予定を確認する
継続処方 便回数・性状、飲水、食欲、体重、服薬状況 前回との差を記録し、必要時に医師へ連絡する
調剤・交付 PTP管理が可能か、一包化の希望がないか 服用直前の取り出しを説明し、支援者と共有する

服薬指導では、たとえば次のように伝えます。

肺の機能が落ちていく速さを抑えるための薬です。下痢が続く、食事や水分が取れない、体重が減ってきたときは、早めにご相談ください。他の病院で薬が追加されたときも確認が必要です。薬は光に弱いので、飲む直前までシートに入れたまま保管してください。

この説明例は実務向けの提案です。実際には患者さんの理解度、処方内容、医療機関の指導内容に合わせます。

呼吸器疾患の治療で吸入薬も使用している患者さんでは、内服薬の管理とあわせて吸入手技も確認します。デバイスの違いは、DPIとpMDIの違い・変更時の吸入指導で整理しています。

まとめ|「併用薬・下痢・PTP管理」を一緒に確認する

ジャスケイドは、PDE4B阻害による抗線維化作用・免疫調整作用をもつ、IPF・PPFの治療薬です。オフェブ・ピレスパとは作用機序が異なり、薬局では切替・追加の意図を確認することが出発点になります。

処方監査では、9mgか18mgかに加えて併用薬を確認します。ピルフェニドンや強い・中程度のCYP3A誘導剤との併用時は9mgへ減量せず、強いCYP3A阻害剤との併用時は9mgへ減量する、という違いが重要です。[1]

服薬指導では、下痢・食欲・体重の変化を継続して聞き取り、服用直前までPTPで保管できているかも確認しましょう。用量の数字と、患者さんの生活の両方を見ることが、治療を支える一歩になります。

参考文献

  1. PMDA「ジャスケイド錠9mg/ジャスケイド錠18mg」電子添文、2026年9月改訂(第3版)。第4〜7、9〜11、14、16〜18項。
    ジャスケイド錠9mg/ジャスケイド錠18mg
    独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:医薬品副作用被害救済や稀少病認定薬の研究振興調査などの業務案内。
  2. 日本ベーリンガーインゲルハイム「ジャスケイド錠9mg・18mg 医薬品インタビューフォーム」2026年9月改訂(第3版)。疾患の位置づけ、臨床試験、製剤情報を参照。
    https://www.bij-kusuri.jp/products/files/jas_t9_if.pdf
  3. PMDA「患者向医薬品ガイド ジャスケイド錠9mg/18mg」。服用方法、飲み忘れ、患者への注意事項を参照。
    https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/650168_3999071F1021_1_09G.pdf
  4. PMDA「オフェブカプセル100mg/150mg」電子添文、2026年5月改訂(第8版)。第4、6、11、18項。
    オフェブカプセル100mg/オフェブカプセル150mg
    独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:医薬品副作用被害救済や稀少病認定薬の研究振興調査などの業務案内。
  5. PMDA「ピレスパ錠200mg」電子添文HTML(本文の改訂表示:2022年3月、第1版)。第4、6、8、11、18項。
    ピレスパ錠200mg
    独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:医薬品副作用被害救済や稀少病認定薬の研究振興調査などの業務案内。
    ※本記事は医療従事者向けの情報整理です。実際の処方監査・調剤では最新の電子添文と患者情報を確認し、個々の治療判断は処方医と連携してください。

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