DPIとpMDIの違い|変更時の吸入指導・吸気力・同調を薬剤師向けに整理

医薬品等解説
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吸入薬が変更になったとき、「成分や用量は確認したけれど、デバイスの違いまで説明できただろうか」と迷うことはありませんか。

とくに、ドライパウダー吸入器(DPI)と加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)では、薬を肺へ届けるために必要な動作が異なります。DPIは患者さん自身の吸気で粉末を吸い込み、pMDIは噴霧と吸入のタイミングを合わせます。

先に結論をまとめると、変更時に確認したい軸は次の4つです。

  • DPI:必要な吸気ができるか
  • pMDI:噴霧とゆっくりした吸入を合わせられるか
  • 補助具:pMDIではスペーサーが選択肢になるが、DPIには使用しない
  • 家族支援:準備を手伝えることと、本人が正しく吸えることを分けて確認する

この記事では、DPIとpMDIの違い、デバイス変更時に起こりやすい間違い、薬局での説明手順を比較表とチェックリストで整理します。

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DPIとpMDIの違いは「薬を動かす力」にある

DPIは、患者さんが吸い込む力を利用して粉末薬を分散させ、気道へ届けるデバイスです。一方、pMDIは、容器内の薬剤が噴霧剤によって一定量ずつエアゾールとして放出されます。

そのため、単に「強く吸う」「ゆっくり吸う」と覚えるのではなく、デバイスごとに必要な動作を整理することが大切です。

比較項目 DPI(ドライパウダー吸入器) pMDI(加圧式定量噴霧吸入器)
薬が出る仕組み 患者さんの吸気で粉末を取り込む ボンベを押すと薬剤が噴霧される
基本の吸い方 デバイスの指示に従い、一般に速く・強く・深く吸う 噴霧に合わせて、ゆっくり・深く吸う
吸気力 一定の吸気が必要 吸気流速の影響は比較的小さい
噴霧との同調 不要 必要。本体のみで難しければ補助具も検討する
スペーサー 使用しない 製品・処方指示に応じて使用できる
手指の操作 薬剤の装填、レバー、ボタン、カプセル操作などが必要 キャップを外し、製品により振とうしてボンベを押す
湿気への注意 粉末のため、吸入口へ息を吹き込まない・水洗いしない 手入れ方法は製品ごとに確認する
吸えた感覚 味や粉を感じないこともある 噴霧の感覚があっても、肺へ届いたとは限らない

DPIの必要吸気流速はデバイスによって異なります。「DPIならすべて同じ強さで吸えばよい」とは限りません。pMDIも振とうや空噴霧、洗浄方法が製品によって異なるため、説明書や製品別の指導箋を確認します。

吸入薬の成分であるICS・LABA・LAMAの役割を整理したい場合は、ICS・LABA・LAMAの違いと使い分けも参考にしてください。

DPIからpMDIへ変更したときの吸入指導

DPIに慣れた患者さんは、pMDIでも勢いよく吸い込みやすい点に注意します。pMDIでは、吸い始めに合わせて噴霧し、そのままゆっくり深く吸うことが基本です。

確認したいポイント

  1. キャップを外し、吸入口の異物を確認する
  2. 製品ごとに振とうや空噴霧の要否を確認する
  3. 吸入口から顔を離して、無理のない範囲で息を吐く
  4. 吸い始めに合わせてボンベを1回押す
  5. ゆっくり深く吸い、可能な範囲で数秒間息を止める
  6. 複数回吸入する場合は、製品の指示に従って間隔を空ける
  7. 吸入ステロイド薬を含む場合は、吸入後にうがいをする

「押してから吸う」でも「吸い終わってから押す」でも、薬剤が肺へ届きにくくなります。実演では、押す瞬間だけでなく、噴霧後もゆっくり吸い続けられているかを確認します。

同調が難しいときはスペーサーも選択肢

ボンベを押す力が弱い、吸い始めと噴霧を合わせられない、小児や高齢者で操作が複雑になる場合は、pMDI用スペーサーが選択肢になります。スペーサーを使うと噴霧と吸入を完全に同時に行う必要が小さくなります。

ただし、すべての製品・患者さんに同じ補助具を案内するのではなく、製品との適合、処方医の指示、マスクまたはマウスピースの選択、洗浄・乾燥方法まで確認します。スペーサー内へ複数回まとめて噴霧せず、原則として1噴霧ずつ吸入することも説明します。

pMDIからDPIへ変更したときの吸入指導

pMDIに慣れた患者さんは、DPIでもゆっくり吸ったり、ボタンを押すことに意識が向いて吸入が弱くなったりすることがあります。

DPIでは、患者さん自身の吸気で粉末を吸い込むため、吸入前の息吐きと、その後の力強く深い吸入が重要です。ただし、必要な吸気はデバイスごとに異なるため、製品別の手順に沿って確認します。

確認したいポイント

  1. カバー、レバー、ボタン、カプセルなど、1回分を正しく準備する
  2. 吸入口から顔を離して息を吐く
  3. 吸入口を唇でしっかりくわえる
  4. デバイスの指示に従って、十分に深く吸う
  5. 可能な範囲で数秒間息を止める
  6. 吸入口へ息を吹き込まない
  7. 吸入ステロイド薬を含む場合は、吸入後にうがいをする

強く吸えたかは音だけで判断できない製品もあります。「味がしなかったから、もう一度吸った」という自己判断による追加吸入を防ぐため、味や粉の感覚がなくても吸えている場合があると伝えます。

変更時は「7ステップ」で確認する

薬局では説明するだけで終わらず、患者さんに実際の動作を見せてもらうと、操作のずれを見つけやすくなります。

1.変更理由と中止する吸入薬を確認する

成分変更なのか、同じ治療目的でデバイスだけが変わるのかを確認します。旧デバイスが残っている場合は、併用するのか中止するのかを明確にし、重複使用を防ぎます。

2.1回量・回数・残量表示を確認する

「1回1吸入」と「1回2吸入」、「1日1回」と「1日2回」を混同しないよう、実際の時間帯まで落とし込みます。残量カウンターの位置と、0になったあとの扱いも確認します。

3.薬剤の準備動作を実演してもらう

カバーを開ける、レバーを操作する、カプセルを入れる、振とうするなど、製品固有の準備を確認します。握力、手指の痛み、振戦、視力低下があると、吸気以前に準備でつまずくことがあります。

4.息を吐く場所を確認する

吸入前に息を吐くことは共通しますが、DPIの吸入口へ息を吹き込むと、湿気で粉末に影響するおそれがあります。「くわえる前に、器具から離して吐く」と具体的に説明します。

5.吸い方を確認する

DPIは必要な吸気、pMDIは噴霧との同調とゆっくりした吸入が中心です。説明用デバイスがあれば、薬剤師が見本を示したあと、患者さんにも再現してもらいます。

6.息止め・うがい・手入れを確認する

吸入後は無理のない範囲で息を止めます。吸入ステロイド薬を含む場合は、口腔カンジダや嗄声などの局所副作用を減らすため、うがいを説明します。手入れは水洗いの可否を含め、製品別の説明書に従います。

7.患者さんの言葉で説明してもらう

最後に「ご自宅で使うつもりで、最初から見せてください」とお願いするティーチバックが有効です。「分かりましたか」と尋ねるだけでは、理解できていなくても「はい」と答えてしまうことがあります。

吸気力・手指・認知機能を患者背景から見る

吸気力が気になる患者さん

高齢、呼吸機能低下、増悪直後、強い息切れなどがある場合は、DPIを十分に吸えるかを確認します。会話ができることと、デバイスに必要な吸気を出せることは同じではありません。吸入状況に不安がある場合は、処方医とデバイス選択を共有します。

噴霧との同調が難しい患者さん

pMDI本体のみで、噴霧前に息を止めてしまう、吸い終わってから押す、複数回連続で噴霧するといった操作が見られる場合は、再指導やスペーサーの検討につなげます。

手指や視力に不安がある患者さん

DPIではカバーやレバー、ボタン、カプセルの操作、pMDIではボンベを押す力が問題になることがあります。残量表示が見えるか、左右どちらの手で操作するか、机上ならできるかまで試すと、生活に合う方法を考えやすくなります。

認知機能や理解に不安がある患者さん

工程が多いほど、順番の入れ替わりや重複吸入が起こりやすくなります。写真付きの指導箋、吸入時間の固定、保管場所の統一など、家族と一緒に続けられる仕組みを作ります。

家族には「手伝える部分」と「本人が行う部分」を分けて説明する

家族が薬をセットできても、本人が適切に吸入できるとは限りません。反対に、本人の吸入は良好でも、家族が残量や使用回数を把握していない場合もあります。

家族へは、次のように役割を具体化します。

  • 家族:薬剤の準備、残量確認、吸入時間の声かけ、使用後の確認
  • 本人:息を吐く、吸入口をくわえる、指示された速さで吸う、息を止める
  • 一緒に確認:うがい、手入れ、旧デバイスとの取り違え、症状悪化時の受診目安

説明例は、「準備はご家族ができますが、実際に吸う力はご本人に必要です。今日はお二人で一連の流れをやってみましょう」です。

患者さんの理解を引き出す質問や説明の組み立て方は、服薬指導がうまくいかない時に見直すべきポイントで詳しく整理しています。在宅で家族と情報を共有するときは、在宅訪問の報告書で確認したい項目と記載例も参考になります。

薬局で使える変更時チェックリスト

薬歴には、「説明済み」だけでなく、「DPIへの変更後、強く深い吸入を実演できた」「pMDIの噴霧が吸入より先行したため再指導」「家族が準備し、本人が吸入する手順を確認」など、できた動作と課題を記録すると次回へつながります。

まとめ|変更時は成分だけでなくデバイスの動作まで確認する

DPIとpMDIは、同じ吸入薬でも必要な操作が異なります。DPIでは吸気力、pMDIでは噴霧との同調が中心です。スペーサーはpMDIの同調を助ける選択肢になりますが、DPIには使用しません。

デバイス変更時は、薬剤師が説明したあとに患者さんや家族に実演してもらい、準備・息吐き・吸入・息止め・うがいまで一連の動作を確認します。次回来局時にも再評価し、「処方どおり使っている」だけでなく「薬が届く使い方ができているか」を確認しましょう。

※本記事は医療従事者向けの一般的な情報です。実際の指導は、各製品の電子添文・患者向け資材、処方医の指示、患者さんの状態に基づいて判断してください。

参考文献

  1. 一般社団法人日本喘息学会「吸入操作ビデオ」
    吸入操作ビデオ|一般社団法人日本喘息学会
    一般社団法人日本喘息学会より吸入操作ビデオをご紹介。正しい吸入操作によって,症状のない毎日を目指しましょう!
  2. 独立行政法人環境再生保全機構「正しい吸入方法を身につけよう」
    <吸入器別>正しい吸入方法|正しい吸入方法を身につけよう|成人ぜん息(ぜんそく、喘息)|ぜん息基礎知識|ぜん息などの情報館|大気環境・ぜん息などの情報館|独立行政法人環境再生保全機構
    吸入器ごとの吸入方法について解説しています。吸入器の種類、吸入器の特徴、長期管理薬、発作治療薬、インフルエンザ治療薬につ...
  3. 日本小児科学会「吸入ステロイド薬・pMDI製剤の供給不足に伴うドライパウダー製剤(DPI)への変更に関する提言」
    公益社団法人 日本小児科学会
    公益社団法人 日本小児科学会公式サイト
  4. Global Initiative for Asthma. Summary Guide for Asthma Management
    and Prevention, 2025.
    https://ginasthma.org/wp-content/uploads/2025/11/GINA-Summary-Guide-2025-WEB_FINAL-WMS.pdf
  5. 医薬品医療機器総合機構「パルミコート吸入液 審査報告書」
    https://www.pmda.go.jp/drugs/2006/P200600035/67022700_21800AMY10113_B100_1.pdf

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