マイナ保険証「何が・いつ・どう変わる?」薬局で迷わない実務ガイド【2025年版】

薬剤師が解説

はじめに—なぜ今“マイナ保険証”なのか

マイナンバーカードを健康保険証として利用できる「マイナ保険証」が本格的に普及し始めています。これは、医療現場での本人確認をスムーズにし、情報の正確性を高めることが狙いです。たとえば、転職や引っ越しをしても資格情報が自動更新されるため、紙の保険証のように「古い保険証を持ってきてしまった」というトラブルが減ります。また、限度額管理や特定健診情報の確認など、診療や調剤に直結する情報も即時に確認できるようになります。

患者さんにとっては「カード1枚で保険証+本人確認」ができる便利さがあり、薬局にとっては「誤った保険証でレセプト返戻」という事務的負担が減る点も大きなメリットです。



タイムラインで理解する—いつ何が変わる?

  • 2024年12月2日:新規の健康保険証の発行が停止されました。つまり、これ以降は新しい紙の保険証は作られません。
  • すでに持っている保険証:有効期限までは使えます。ただし最長でも2025年12月1日まで。これが紙の保険証の「最後の日」と覚えておくとよいでしょう。
  • 2025年9月19日:スマートフォンを使ったマイナ保険証の利用が始まります。すべての医療機関や薬局で一斉に使えるわけではなく、準備が整ったところから順次スタートします。

つまり、2025年は「紙の保険証が徐々に姿を消し、スマホ版が登場する」過渡期です。薬局ではこの両方に対応する体制が必要になります。




仕組みを知る—受付から資格確認まで

薬局の受付に置かれている「顔認証付きカードリーダー」にマイナンバーカードをかざすと、本人確認と保険資格の確認が同時に行われます。

ここでよくある不安が「顔写真が保存されるのでは?」というものです。実際には、撮影された画像は一時的に読み取られるだけで、機器内にも外部にも保存されません。処理が終わると即時削除される仕組みになっています。

また、医療情報そのものはカードの中に保存されているわけではありません。カードはあくまで「本人確認の鍵」として機能し、同意を得たうえでオンラインで情報が参照されます。



スマホのマイナ保険証—始め方と注意点

2025年9月19日からは、スマートフォンに「マイナ保険証の機能」を入れることができます。これにより、カードを持ち歩かなくても、対応している薬局や病院ではスマホだけで受付できるようになります。

ただし注意点もあります。

  • 対応機関は限定的:すべての医療機関・薬局で即日使えるわけではありません。しばらくはカードを併用するのが安心です。
  • 子どもの利用:15歳未満は原則としてスマホ版マイナ保険証を利用できません。小児の受診には引き続きカードが必要です。
  • 準備:署名用パスワードの設定やマイナポータルアプリの登録が必要になります。患者さんに案内するときは「事前にアプリで設定してから薬局へ」と伝えるとスムーズです。




マイナ保険証がない人はどうする?

「まだカードを作っていない」「機械にうまく通らない」という人も安心してください。代わりに資格確認書というものが交付されます。

資格確認書は、保険者(健保組合や国保など)から自動的に無償で交付されるため、患者さん自身が申請する必要はありません。特に75歳以上の後期高齢者は暫定措置として全員に交付されます。有効期限は保険者によって異なりますが、最長で5年とされています。

万が一マイナ保険証が読み取れない場合でも、この資格確認書があれば従来どおり受診できます。



薬局の現場フロー—患者対応のコツ

薬局では、来局時の案内と受付時の対応が重要です。

  1. 来局前の周知
     ホームページやLINEで「マイナ保険証対応」「資格確認書でも受診可能」と案内しておくと、窓口での混乱が減ります。
  2. 受付フロー
     - マイナ保険証をかざす → 顔認証または暗証番号 → 保険資格確認
     - 資格確認書を提示 → 保険資格確認
     - 紙の保険証 → 有効期限内なら使用可能
  3. トラブル時の対応
     - 顔認証が通らない場合 → マスクや帽子を外して再認証
     - それでもダメなら → 暗証番号入力
     - 最終手段として → 目視確認(本人確認書類で確認)

患者さんには「順番に確認するのでご安心ください」と声をかけると不安が和らぎます。



誤解しやすいポイントまとめ

  • 保険証はすぐ廃止ではなく、有効期限まで使える(最長2025年12月1日)
  • スマホだけで使えるのは2025年9月19日からで、当面はカードも必要。
  • 子どものスマホ利用は不可、カードで対応。
  • 顔認証の写真は保存されない。
  • お薬手帳は引き続き必要(OTCや市販薬の情報は自動反映されないため)



薬局で今日からできること

  • 店内掲示を刷新して「紙の保険証最長2025年12月1日」「スマホ開始は9月19日」と明示する。
  • 新人スタッフでも対応できるよう、受付フローのマニュアルを作っておく。
  • SNSやHPで「よくある質問」を図解して発信し、患者さんの不安を減らす。



参考リンク

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