「マイナ保険証が読み取れないのですが……」
「資格確認書って保険証と同じですか?」
「スマホだけでも受付できますか?」
薬局の受付で、こうした質問を受ける機会が増えてきました。
従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終了し、現在はマイナ保険証または資格確認書による資格確認が基本となっています。
さらに、2025年9月からはスマートフォンを使ったマイナ保険証もスタートしています。
制度が変わるたびに対応方法を覚えるのは大変ですが、薬局で必要なのは制度を丸暗記することではありません。
大切なのは、
- 患者さんが何を持ってきたのか
- その方法で資格確認できるのか
- 読み取れなかった場合にどう対応するのか
を整理しておくことです。
この記事では、2026年現在のマイナ保険証について、薬局で働く薬剤師が知っておきたいポイントをできるだけ実務目線で整理します。
2026年現在、従来の健康保険証は原則使えない
まず押さえておきたいのが、従来の健康保険証の扱いです。
2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新しく発行されなくなりました。
その後は手元にある保険証を有効期限まで使用できる経過措置が設けられていましたが、すべての従来型健康保険証の有効期限は2025年12月1日で終了しています。
さらに、有効期限切れに気付かず従来の健康保険証を持参した患者さんについては一定期間利用できる暫定対応がありましたが、こちらも2026年7月31日で終了しました。(厚生労働省)
そのため、2026年8月現在、薬局受付で基本となるのは次の2つです。
マイナ保険証を持っている人
→ マイナ保険証で資格確認
マイナ保険証を持っていない人
→ 資格確認書で資格確認
まずはこの2つを基本として覚えておけば、受付対応を整理しやすくなります。
マイナ保険証とは?
マイナ保険証とは、健康保険証として利用登録したマイナンバーカードのことです。
薬局では顔認証付きカードリーダーなどを使い、オンラインで保険資格を確認します。
マイナ保険証を利用するメリットは、単に「保険証の代わりになる」だけではありません。
患者さんが情報提供に同意すれば、薬局側で過去の薬剤情報などを確認できるため、より正確な服薬状況の把握につながります。
たとえば、
「他の病院でも薬をもらっているけれど、名前が分からない」
という患者さんは珍しくありません。
こうした場面で薬剤情報を確認できれば、重複投薬や相互作用を確認する際の重要な情報源になります。
マイナ保険証は受付業務だけの仕組みではなく、薬剤師が患者さんの薬物治療を把握するための医療DXの一部として考えると分かりやすいでしょう。

「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」は違う
薬局の受付で特に混乱しやすいのが、
「資格確認書」
「資格情報のお知らせ」
の違いです。
名前が似ていますが、役割は異なります。
資格確認書
マイナ保険証を持っていない人などに交付される書類です。
資格確認書を医療機関・薬局の窓口で提示すれば、従来の健康保険証と同じように保険資格を確認できます。
当分の間、マイナ保険証を保有していない人には、資格確認書が無償で、原則として申請によらず交付されます。(厚生労働省)
資格情報のお知らせ
一方、「資格情報のお知らせ」は、自分が加入している健康保険の資格情報を確認するための書類です。
資格情報のお知らせだけを窓口に持参しても、原則としてそれ単独では資格確認に使用できません。
ここは患者さんも間違えやすいため、受付スタッフを含めて薬局内で共有しておきたいポイントです。(デジタル庁)
「紙を持ってきたから大丈夫」と判断するのではなく、それが資格確認書なのか、資格情報のお知らせなのかまで確認する必要があります。
マイナ保険証が読み取れないときはどうする?
薬局で困るのが、
「カードリーダーでマイナ保険証が読み取れない」
というケースです。
通信障害やカードリーダーの不具合、マイナンバーカードのICチップ破損など、オンライン資格確認ができない状況は起こり得ます。
しかし、読み取れない=その場で10割負担と単純に判断するわけではありません。
厚生労働省は、マイナ保険証で資格確認できない場合の代替方法を示しています。
たとえば、
マイナンバーカード+マイナポータルの資格情報画面
または
マイナンバーカード+「資格情報のお知らせ」
などを使って資格確認できるケースがあります。(厚生労働省)
患者さんからすると、
「いつも使えていたのに、今日は使えない」
という状況だけでも不安になります。
薬局側が対応方法を理解しておけば、
「読み取れなくても、別の方法で資格を確認できますので順番に確認しますね」
と案内できます。
制度の知識だけでなく、こうした説明まで含めて受付フローを統一しておくことが大切です。
電子証明書の有効期限にも注意
マイナ保険証を利用するときに意外と見落としやすいのが、電子証明書の有効期限です。
マイナンバーカードそのものの有効期限とは別に、カードに搭載されている電子証明書にも有効期限があります。
電子証明書の有効期限は原則5年です。
ただし、有効期限までに更新できなかった場合でも、期限切れから3か月間はマイナ保険証として利用できる仕組みがあります。(厚生労働省)
「カードは持っているのに読み取れない」という場合には、機器の問題だけでなく電子証明書の期限も確認ポイントになります。
これからマイナ保険証の利用期間が長くなるにつれて、薬局でも遭遇する可能性が高くなるトラブルでしょう。
スマートフォンもマイナ保険証として使える
2025年9月19日から、対応している医療機関・薬局ではスマートフォンをマイナ保険証として利用できるようになりました。(厚生労働省)
健康保険証利用登録をしたマイナンバーカードを対応スマートフォンに追加しておけば、実物のカードを取り出さずに受付できます。
ただし、ここで注意したいのが、
すべての薬局でスマホ対応しているわけではない
という点です。
薬局側にも対応する読み取り環境が必要なため、施設によって利用可否が異なります。
患者さんから、
「スマホに入れているからカードは持ってきていません」
と言われるケースも考えられます。
自薬局がスマートフォンのマイナ保険証に対応しているのか、受付スタッフだけでなく薬剤師も把握しておいたほうがよいでしょう。
15歳未満は原則スマホ版を利用できない
もうひとつ覚えておきたいのが、小児への対応です。
厚生労働省の案内では、15歳未満は原則としてスマートフォンのマイナンバーカードを利用できません。
そのため、スマートフォンのマイナ保険証も原則利用できません。(厚生労働省)
小児科の処方箋を多く受け付ける薬局では、保護者から質問される可能性があります。
成人患者だけを想定して受付マニュアルを作らず、小児の場合の対応も共有しておくと安心です。
マイナ保険証があっても、お薬手帳は確認したい
マイナ保険証によって薬剤情報を確認できるようになると、
「それなら、お薬手帳はいらないのでは?」
と思う患者さんもいるかもしれません。
しかし、薬剤師としてはマイナ保険証とお薬手帳はどちらか一方ではなく、補完して使うものと考えておいたほうがよいでしょう。
オンラインで確認できる情報には反映までの時間差が生じることがありますし、市販薬やサプリメントなど、患者さん自身で使用しているものをすべて把握できるわけではありません。
実際の服薬指導では、
「マイナ保険証で確認した情報」
「お薬手帳」
「患者さん本人への聞き取り」
を組み合わせて確認することが重要です。
デジタル化が進んでも、患者さんへの聞き取りが不要になるわけではありません。
むしろ、得られる情報が増えたからこそ、それをどう整理して薬学的判断につなげるかが薬剤師に求められます。
薬局で決めておきたい受付フロー
マイナ保険証への対応は、受付スタッフだけに任せるのではなく、薬局全体で流れを共有しておくとスムーズです。
たとえば、次のように整理できます。
① マイナ保険証を持参
顔認証付きカードリーダーなどでオンライン資格確認を行う。
② 資格確認書を持参
資格確認書に記載された情報で資格確認を行う。
③ マイナ保険証が読み取れない
機器や通信状況などを確認し、マイナポータルの資格情報画面や資格情報のお知らせなど、代替の資格確認方法を検討する。
④ スマートフォンを提示
自薬局がスマートフォンのマイナ保険証に対応しているか確認する。
⑤ 従来の健康保険証を提示
2026年8月現在、従来型の健康保険証による暫定的な資格確認の取り扱いは終了しているため、マイナ保険証または資格確認書などによる確認へ案内する。
こうしたフローを受付の近くに置いておけば、新人スタッフでも対応しやすくなります。
薬剤師として注目したいのは「受付」よりその先
マイナ保険証というと、どうしても
「カードリーダーをどう使うか」
「資格確認をどうするか」
という受付業務に目が向きがちです。
もちろん、それも重要です。
ただ、薬剤師としてもう一歩考えたいのは、オンラインで確認できる医療情報を服薬指導や処方監査にどう生かすかです。
たとえば薬剤情報を確認することで、
- 他院から同じ薬効の薬が出ていないか
- 併用薬との相互作用はないか
- 患者さんが伝え忘れている薬はないか
- 継続して処方されている薬は何か
などを確認できる可能性があります。
マイナ保険証を「新しい保険証」とだけ考えると、薬剤師業務への影響は小さく見えます。
しかし、オンライン資格確認や電子処方箋などを含めた医療DX全体で考えると、薬剤師が扱える患者情報はこれからさらに増えていきます。
その情報を安全に扱い、患者さんの薬物治療に生かしていくことが、これからの薬剤師に求められる役割のひとつだと考えています。

まとめ|2026年は「移行期」ではなく新しい受付方法を定着させる段階へ
マイナ保険証をめぐる制度はここ数年で大きく変わりました。
2026年8月現在、薬局で特に押さえておきたいのは次のポイントです。
- 従来の健康保険証の有効期限は終了
- 期限切れ保険証に対する暫定対応も2026年7月31日で終了
- 基本は「マイナ保険証」または「資格確認書」
- 「資格情報のお知らせ」単独では原則受診できない
- マイナ保険証が読み取れない場合にも代替の資格確認方法がある
- スマートフォンのマイナ保険証は対応施設で利用可能
- 15歳未満は原則スマホ版を利用できない
- マイナ保険証だけに頼らず、お薬手帳や患者さんへの聞き取りも重要
2025年までは「健康保険証からマイナ保険証への移行」が大きなテーマでした。
2026年からは、新しい資格確認の仕組みを薬局の通常業務として定着させる段階に入ったと考えたほうが分かりやすいでしょう。
制度はこれからも変更される可能性があります。
薬局内で最新情報を共有しながら、「患者さんに聞かれたときに誰でも同じ説明ができる状態」を作っておくことが、現場で一番役立つ対策だと思います。
医療DXや制度改定への対応が、現場の薬剤師任せになっている薬局もあります。
「今の職場でこれから必要なスキルを身につけられるのか」と感じている方は、他の薬局の求人や教育体制を見てみることも、働き方を考える材料になります。
参考文献
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08277.html - 厚生労働省「資格確認方法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_50657.html - 厚生労働省「資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45470.html - 厚生労働省「スマートフォンのマイナ保険証利用について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_60802.html - 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40406.html - デジタル庁「マイナンバーカードの健康保険証利用」
https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/insurance-card



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