※この記事には広告・アフィリエイトリンクが含まれます。制度・資料の確認日:2026年9月26日。
「新規個別指導の通知が届いたけれど、何から手をつければよいのだろう」「薬歴や加算の算定に不備がないか心配」。初めて対応する管理薬剤師にとって、日々の業務と並行して指導の準備を進めるのは大きな負担です。
まず取り組みたいのは、実施通知の確認、担当者の分担、処方箋・調剤録・薬歴・レセプトの照合です。資料をそろえるだけでなく、「実際に何を確認し、どう判断し、何を行って請求したか」を記録に沿って説明できる状態にしていきましょう。
この記事では、新規個別指導を受ける保険薬局を想定して、通知受領後から指導後の改善までを整理します。以下の表やチェック項目は準備のための実務例です。提出書類、対象期間、出席者、提出期限は、届いた実施通知と管轄厚生局の案内を優先してください。
新規個別指導とは?通知が届いた意味を整理する
新規個別指導は、新たに指定された保険薬局などを対象に、保険調剤の取扱いや請求について個別に確認する指導です。新規指定を理由とする指導の通知が届いたこと自体は、不正が疑われているという意味ではありません。厚生労働省の流れ図でも、新規指定を受けた施設への指導と、情報提供などによる指導は区別されています。出典:厚生労働省「指導・監査の流れ」
名前が似ている制度も、次のように分けると理解しやすくなります。
| 区分 | 押さえておきたい違い |
|---|---|
| 集団指導 | 新規指定時や報酬改定時などに、保険調剤のルールを講習等で周知するもの。 |
| 新規個別指導 | 新規指定を受けた薬局などに対して行われる個別の指導。 |
| 集団的個別指導 | レセプト1件当たりの平均点数が高いなどの基準で選定される指導。新規指定時の集団指導とは別のもの。 |
| 個別指導 | 選定理由に応じ、関係書類や個々の調剤・請求内容を面談方式で確認するもの。 |
| 監査 | 不正や著しい不当が疑われる場合などに、事実関係を確認し、必要な措置を判断するもの。 |
制度の全体像は、厚生労働省「保険調剤の理解のために・令和8年度版」の指導・監査の章で確認できます。新規個別指導を受けたからといって、直ちに指定取消になるわけではありません。一方、指導と監査は別の手続きであり、不正等が疑われれば監査に移る場合があります。
また、保健所による薬局開設許可の更新・立入検査とも区別して準備します。許可と保険薬局の指定の違いは、薬局の保健所・許可更新を完全ガイドで整理しています。
通知が届いたら、最初に確認する7項目
最初から薬歴を全部読み直すよりも、まず通知に書かれた条件を1枚にまとめると、作業の抜けを減らせます。
- 指導の種類:新規個別指導であることを通知の表題・本文で確認する。
- 日時・会場:集合時刻、移動時間、当日の薬局の勤務体制を確認する。
- 出席者:開設者・管理薬剤師・その他の担当者について、出席の指定を確認する。
- 事前提出資料:様式、提出先、期限、提出方法、部数を確認する。
- 当日持参資料:原本・写しの区別や、対象期間を確認する。
- 対象患者等の連絡:通知済みか、別途連絡されるか、連絡の受取担当を確認する。
- 電子薬歴等の提示方法:印刷の範囲、端末持参の可否など、不明点を窓口に確認する。
関東信越厚生局では、実施通知を受け取った薬局に「保険薬局の現況及び連絡票」の作成・提出を案内しています。近畿厚生局では「保険薬局の現況」の様式と提出方法が示されています。他県の体験談や以前の様式だけで準備を進めず、自局宛ての通知に合わせることが大切です。関東信越厚生局の案内/近畿厚生局の案内
不明点を問い合わせるときは、質問をまとめ、回答日・窓口・回答内容を控えておきます。出席や提出が難しい事情があれば、自己判断で変更せず、早めに通知記載の窓口へ相談しましょう。
準備を一人で抱えないための進め方
次の表は、残り日数に合わせて調整するための作業例です。公式に定められた準備日程ではありません。
| 段階 | 進めること | 担当の例 |
|---|---|---|
| 通知を受け取ったとき | 期限と必要資料を一覧化し、開設者・本部へ共有する。 | 管理薬剤師・開設者 |
| 対象患者等の連絡を待つ間 | 現況資料、届出控え、日常の請求確認手順を整理する。電子薬歴の出力方法も確認する。 | 本部・事務担当・システム担当 |
| 対象が分かった後 | 指定された範囲の資料を患者ごと・時系列にそろえ、調剤と請求を照合する。 | 担当薬剤師・請求担当 |
| 持参前の最終確認 | 不足資料、未解決事項、資料の並び順、当日の役割を確認する。 | 出席者全員 |
| 指導終了後 | 指摘内容を共有し、通知に沿って改善・自主点検等を進める。 | 開設者・管理薬剤師・本部 |
事務担当者には資料の抽出や整理を依頼し、薬学的判断や算定要件の確認は薬剤師が行う、というように分担します。通常業務への応援や準備時間の確保も、開設者・本部に具体的に依頼してください。
必要書類は「提出用」「当日用」「確認用」に分ける
以下は準備候補の整理表です。すべての薬局で一律に提出・持参する書類一覧ではありません。通知に照らし、必要な範囲を確定してください。
| 資料のまとまり | 準備候補 | 準備するときの確認点 |
|---|---|---|
| 通知・現況 | 実施通知、現況資料、連絡票、事前提出資料の控え | 記載内容、提出期限、提出済みかどうか。 |
| 患者ごとの調剤 | 処方箋、調剤録、薬歴、疑義照会記録、提供文書等 | 指定された患者・期間がそろい、経過を追えるか。 |
| 請求・会計 | レセプト、算定内容の確認資料、一部負担金に関する資料等 | 実施内容と請求、患者負担に食い違いがないか。 |
| 指定・届出・体制 | 保険薬局の指定、保険薬剤師の登録、施設基準届出、勤務体制等の資料 | 届出内容と対象期間の実態を確認できるか。 |
| 個別の算定の根拠 | 同意、情報提供、訪問、研修等に関する記録 | 自局が算定した項目に応じて、根拠となる記録を示せるか。 |
患者別の資料には、通知で指定された順序に沿って見出しを付けると探しやすくなります。複数のシステムに記録が分かれている場合は、記録の所在も整理しましょう。
電子薬歴は、画面で確認できる内容が印刷では省略されることもあります。前回の記録、患者の基本情報、別画面の照会記録など、必要な情報を提示できるか試しに出力して確認します。患者情報の持ち出し・送付は、薬局の管理手順と厚生局の指定に従ってください。
点検の中心は、処方箋・調剤録・薬歴・レセプトの照合
資料を別々に読むと、食い違いを見落としがちです。患者1人分を並べ、処方内容→確認した情報→判断と対応→記録→請求の順にたどる方法をおすすめします。
処方箋と疑義照会は、確認の理由から結果までたどれるか
処方箋の記載や使用期間に問題がないか、用量・重複・相互作用などの疑問にどう対応したかを確認します。疑義照会を行った場合は、「照会済み」という言葉だけでなく、何を確認し、どのような回答を受け、処方・調剤がどうなったかを追えることが重要です。
厚生労働省が公表する令和7年度の指摘事項でも、不備のある処方箋への対応や、疑義照会内容の記録不足が挙げられています。これは特定共同指導・共同指導の事例であり、新規個別指導の質問を予告する資料ではありませんが、点検の参考になります。出典:令和7年度の主な指摘事項(薬局)
薬歴は、その患者に対する判断と対応が分かるか
薬歴を読むときは、文章量よりも次のつながりを確認します。
- その日に把握した服薬状況や困りごとは何か。
- その情報を踏まえて、薬剤師が何を判断したか。
- 実際に行った説明・照会・情報提供などは何か。
- 継続して確認すべきことがあれば、次回へ引き継がれているか。
たとえば、これは記録を振り返るための問いの例です。
「残薬あり」と記録されているが、何の薬がどの程度残り、理由をどう確認したのか。処方調整などを行ったなら、その経過はどこで分かるか。
問いへの答えが記録から分からない場合は、確認できる事実と記録の不足を分けて整理します。準備のために、行っていない聞き取りや指導を後から付け加えてはいけません。
日常の書き方を見直す際は、薬歴が書けないときの時短・質向上の工夫も参考になります。定型文やSOAPは整理の手段であり、それだけで算定要件を満たすものではありません。
加算・管理料は、実施・記録・請求を分けて確認する
レセコンに項目が表示されることと、算定できることは同じではありません。自局が実際に請求した項目を一覧にし、それぞれについて次の問いを当てはめます。
- その患者・調剤は、対象や回数などの条件を満たしていたか。
- 必要な行為を実施し、その記録が残っているか。
- 同意や医療機関への情報提供が要件なら、根拠を確認できるか。
- 届出が必要な項目なら、対象日に届出と施設基準の条件を満たしていたか。
- 併算定の制限や請求内容に誤りがないか。
これらは確認の枠組みです。具体的な点数・対象・必要記録は、各項目の告示、留意事項通知、疑義解釈等で確認してください。
過去の請求は、調剤当時に適用されていた要件で点検します。2026年9月26日に確認した厚生労働省の「保険調剤確認事項リスト」は、令和7年度改訂版・令和6年度調剤報酬改定対応です。令和8年度改定後の算定を、このリストだけで判断しないようにしましょう。保険調剤確認事項リスト(薬局)/令和8年度改定の公式案内
改定の全体像は、令和8年度(2026年度)調剤報酬改定の解説も併せて確認できます。
在宅の請求がある場合は、訪問と報告の記録もつなげる
対象に在宅患者が含まれる場合は、処方箋と薬歴に加え、指示・計画・訪問時の対応・報告等の関連資料を、算定した項目に応じて照合します。医療保険と介護保険の区分、実施日と請求内容にも注意して確認してください。
報告内容を整理する際は、在宅訪問の報告書で確認したい10項目と記載例を参考にできます。ただし、報告書の記載例だけで個々の算定可否は判断できません。
不備を見つけたときは、記録を取り繕わず対応を整理する
準備中に不備が見つかったら、まず開設者・管理薬剤師・本部などで共有します。問題の種類により、対応を分けると整理しやすくなります。
| 見つかったこと | 対応の考え方 |
|---|---|
| 記録上の誤記 | 薬局の訂正手順に従い、元の記録と訂正の経過を確認できる形で扱う。 |
| 必要な記録が不足 | 当時の資料から確認できる事実と、確認できないことを分ける。実施したことにするための追記はしない。 |
| 請求誤りの疑い | 対象日・算定項目・根拠・影響範囲を整理し、請求訂正や返還の扱いを関係窓口に確認する。 |
| 現在も続く運用上の問題 | 今後の誤りを止める対応を先に進め、担当者と見直し日を決める。 |
後日に事実を補足する必要がある場合も、当時の記録と区別できるよう、記載日時・記載者・理由・確認根拠が分かる形で扱います。これは当時の記録不足を解消したり、過去の算定を正当化したりする保証にはなりません。
紙の記録を消して書き直す、電子薬歴の日付をさかのぼらせる、実施していない指導を追加する、といった対応は避けてください。確認できないことを、記憶だけで実施済みと断定しない姿勢が大切です。
当日は、質問に対して記録と根拠を示す
当日の進行は通知や担当者の案内に従います。準備としては、資料を探す人、説明する人、指摘内容を控える人を決め、必要なページをすぐに開けるようにしておくと対応しやすくなります。
以下は説明の練習用の問いであり、必ず聞かれる質問ではありません。
- この処方で、薬学的に何を確認しましたか。
- 疑義照会の理由と回答は、どこに記録されていますか。
- この算定項目の根拠となる行為・記録はどれですか。
- 請求前の確認は、誰がどのように行っていますか。
答える際は、「事実→判断→対応→記録の場所」の順に整理します。たとえば「照会の理由はこの記録、回答はこの欄、変更後の調剤はこの内容です」と示せるようにします。
その場で確認できないときは、推測で答えず、「手元の資料では確認できないため、確認方法と回答期限をご相談したい」と伝えます。指摘の意味が分からない場合は、対象の調剤日・算定項目・要件を具体的に確認しましょう。
指導後は、改善を日常業務に定着させる
指導の結果には、概ね妥当・経過観察・再指導・要監査などの区分があり、指摘事項に応じた改善報告が求められます。口頭の説明を控え、正式な結果通知で対応事項と期限を確認してください。出典:厚生労働省「指導大綱、監査要綱」
改善報告を「今後気をつけます」で終えず、誰が、何を、いつから変え、どう点検するかを決めます。
| 課題の例 | 改善方法の例 | 再確認 |
|---|---|---|
| 照会の経過を探しにくい | 照会理由・回答・対応結果を記録する場所を職員間で統一する。 | 管理薬剤師が一定期間後に抜き取り確認する。 |
| 請求前の要件確認が不十分 | 間違いが生じた項目の確認担当と確認手順を決める。 | 翌月の請求前に実施状況を確認する。 |
| 記録時間を確保できない | 業務分担と人員配置を開設者・本部と見直す。 | 未記載の発生状況と勤務時間を振り返る。 |
自主点検や返還の指示があれば、対象項目・期間・提出先・期限を確認して進めます。返還期間や金額を他局の事例から決めつけず、自局に対する指示を確認してください。患者の一部負担金への対応が必要かも含め、関係窓口に確認します。
新規個別指導の準備チェックリスト
- □ 実施通知を読み、期限・出席者・必要書類を一覧化した。
- □ 開設者・本部と分担し、準備時間と当日の勤務体制を確保した。
- □ 事前提出資料を提出し、控えを保存した。
- □ 指定された患者・対象期間の資料をそろえた。
- □ 処方箋・調剤録・薬歴・レセプトを患者ごとに照合した。
- □ 算定した項目を、調剤当時の要件で確認した。
- □ 不備・未解決事項を共有し、事実と推測を区別した。
- □ 電子記録の提示・印刷と、資料の安全な持ち運びを確認した。
- □ 当日の説明・資料提示・メモの担当を決めた。
- □ 指導後の改善・自主点検を進める担当者を決めた。
このチェックリストは準備の補助であり、指摘がないことを保証するものではありません。まずは通知の整理と患者1人分の照合から始め、そこで分かった課題を薬局全体の改善につなげていきましょう。
管理薬剤師だけに負担が集中しているときは
新規個別指導への対応をきっかけに、「確認する人が自分しかいない」「本部に相談しても準備時間を確保してもらえない」といった課題に気づくこともあります。まずは必要な作業と時間を具体的に伝え、支援体制の見直しを依頼しましょう。
負担が続く場合は、管理薬剤師を辞めたいと思ったときの考え方も参考にしてください。働き方を見直す際は、人員数だけでなく、算定の相談先や管理薬剤師への支援体制も比較する視点になります。
参考資料・最新情報の確認先
厚生局の様式や掲載資料は更新されます。手元の通知と、以下の公式ページに掲載されている資料の版・対象年度を確認してください。
- 厚生労働省:保険診療における指導・監査(保険調剤の理解のために、確認事項リスト、指導大綱等)
- 関東信越厚生局:個別指導・新規個別指導に係る事前提出書類
- 近畿厚生局:新規個別指導・個別指導に係る事前提出資料
- 関東信越厚生局:令和8年度診療報酬改定について


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