管理薬剤師をしていると個別指導という言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。
厚生局から突然、個別指導の実施連絡が届くので、事前の対策をすることが重要です。個別指導の対策が不十分だと最悪の場合、保険薬局の取り消し処分になる可能性もあります。
今回は、薬剤師ができる個別指導の対策を解説します。
個別指導は薬局の正常運営が目的
個別指導は、健康保険法をもとに地方厚生局が実施するもので、調剤薬局の適切な運営や質的向上を目的とした制度です。通常は、保険薬局を対象とすることが多いですが、保険薬剤師の登録者が対象となることもあります。個別指導の実施通知が届いたら特別な理由がない限り、個別指導を受けることは義務なので欠席できません。
個別指導を実施された薬局は、指定された期日に地方厚生局で処方箋や調剤録、薬歴などの書類を調べ、実際に適切に薬局が運営されているかを調べます。不備や不正などがあった場合、調剤報酬の返金や監査などが待っています。
厚生労働省が発表している情報によると、2016年では個別指導や監査などの実施によって約89億円の返金があったと報告されています。そのため、個別指導を実施される前から適切な薬局運営を心がけることが経営的にも重要です。
個別指導にも種類がある
個別指導にはいくつかの種類が存在します。新規に薬局を開業した場合に必ず受ける必要があるものと開業後に年数が経ってから受けるものとが存在します。
集団的個別指導
集団的個別指導は、調剤報酬の1件あたりの平均点数(単価)が高い薬局が対象です。対象となった薬局の代表者(管理薬剤や開設者)を一定の場所に集めて講義形式でおこなわれます。集団個別指導でおこなわれた指導内容は、薬局の適切な運営をするためにも重要なものとなっているので、しっかりと講義内容を実施していくことが重要です。集団的個別指導の対象となった薬局は、翌年度の実績によって個別面談方式でおこなわれる個別指導の対象にもなります。
個別指導
個別指導は、さまざまな理由で実施されることがあります。集団的個別指導を受けた薬局以外にも調剤報酬を請求する際に、何らかの問題があったと情報提供があった場合や個別指導を実施して改善がみられない場合などでもおこなわれます。
新規個別指導
新規に開業した薬局は、1年以内に新規個別指導が実施されます。新規に保険薬局の登録を受けたら必ず実施されるので、対策がしやすいとも考えられます。
個別指導よりも厳しい監査
個別指導の結果によっては、さらに厳しい処置として「監査」があります。監査は、個別指導によって不正や問題が疑われる場合、適切な措置をとるためにおこなわれます。監査の対象となる行為として「無資格調剤」「架空請求」「付増請求」「振替請求」があります。
・無資格調剤
薬剤師以外の人間が調剤行為をおこなうことです。
・架空請求
調剤した事実がないのに調剤したことにして保険請求する
・付増請求
実際におこなった調剤に実際におこなっていない調剤内容を付け加えて保険請求する
・振替請求
実際におこなった調剤内容を点数(単価)の高い別の調剤内容にする
個別指導によって上記の内容が発覚した場合、監査が実施されて結果によって保険薬局の登録が抹消されることもあります。
薬剤師が個別指導でできることは?
個別指導の実施通知が届いたときには、できることはそんなに多くはありません。個別指導によって返金対応や監査などの厳しい処分にならないように事前に対策をすることが重要です。個別指導が実施される前に薬剤師ができることを解説します。
集団的指導で指摘されたことを実践する
新規個別指導や個別指導の前に集団的個別指導を受けることが多いです。集団的個別指導では、薬剤服用歴の記録についてや疑義照会の記載内容について過去に指導された内容などを解説しています。集団的個別指導でおこなわれる講義内容を通常の業務で実践していくことが必要です。
不正行為はしない
監査につながるような不正行為は絶対におこなわないようにしましょう。薬局の利益を追求するあまり、調剤報酬の不正請求や無資格調剤などをおこなうと高い確率で個別指導や監査によって保険薬局の取り消し処分になる可能性が高いです。
素直さが大事
個別指導で指摘された内容については、素直な態度で接する必要があります。あまりに態度がひどい場合、個別指導の実施担当者とも不要なトラブルを抱えることにもなります。指導を受けた場合は、素直に受け止めて改善することが重要です。
個別指導対策ができていない薬局は危険
個別指導では、処方箋の内容について適切な疑義照会がおこなわれているかや薬歴、調剤録の記載内容、調剤報酬の加算についての妥当性をみられることが多いです。そのため、個別指導の対策をおこなっていない薬局は、不正行為がおこなわれている可能性もあります。もし、薬局だけでなく薬剤師にも行政処分がくだされた場合、薬剤師としてのキャリアが終わってしまう可能性もあります。個別指導対策をおこなっていない薬局に勤務しているのであれば転職を考えてみるのも良いでしょう。
コメント