関節リウマチの治療では、メトトレキサートをはじめ、JAK阻害薬、TNF阻害薬、IL-6阻害薬など、作用の異なる薬が使用されます。
薬剤の種類が多いため、処方を見ても「なぜこの薬が選ばれているのか」「服薬指導では何を確認すればよいのか」と迷うこともあるのではないでしょうか。
抗リウマチ薬は、単に痛みを抑える薬ではありません。関節の炎症を抑え、将来的な関節破壊を防ぐことが治療の大きな目的です。
この記事では、代表的な抗リウマチ薬について、作用や投与方法、感染症への注意点、薬局で確認したいポイントを整理します。
関節リウマチ治療では炎症を抑えることが重要
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こり、腫れや痛み、朝のこわばりなどが続く疾患です。
炎症が長期間続くと、軟骨や骨が傷つき、関節の変形や機能低下につながる可能性があります。そのため、痛みを一時的に軽くするだけでなく、病気の進行そのものを抑える治療が必要です。
ここで使用されるのが、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)です。
非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛薬は、痛みや炎症を和らげるために使用されます。一方、DMARDは関節リウマチの疾患活動性を抑え、関節破壊の進行を防ぐ目的で使用されます。
両者は似たような目的で処方されているように見えても、治療上の役割が異なります。
抗リウマチ薬は3つに分けると整理しやすい
関節リウマチに使用されるDMARDは、大きく次の3つに分けられます。
従来型合成抗リウマチ薬
従来から使用されている内服薬で、メトトレキサート、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、タクロリムスなどが含まれます。
なかでもメトトレキサートは、関節リウマチ治療の中心となる薬剤です。
分子標的合成抗リウマチ薬
細胞内の炎症シグナルを抑える内服薬です。主にJAK阻害薬が該当します。
注射ではなく内服で使用できる一方、感染症や帯状疱疹、血栓塞栓症など、患者背景に応じた安全性の確認が必要です。
生物学的抗リウマチ薬
炎症に関係するサイトカインや受容体を選択的に抑える薬です。
TNF阻害薬、IL-6阻害薬、T細胞選択的共刺激調節薬などがあり、皮下注射または点滴で使用されます。
メトトレキサートは治療の中心となる薬
メトトレキサートは、関節リウマチ治療で広く使用される従来型合成抗リウマチ薬です。
効果と安全性のバランスに優れ、治療開始時の中心薬として選択されることが多くあります。効果が十分でない場合には、生物学的製剤やJAK阻害薬を追加することもあります。
薬局で特に注意したいのが、独特な服用方法です。
関節リウマチに対するメトトレキサートは、基本的に1週間単位で服用します。製剤や処方内容によっては、決められた曜日に1回または複数回に分けて服用し、その後は休薬します。
毎日服用すると重篤な副作用につながるおそれがあるため、新規処方だけでなく継続処方でも、服用する曜日や回数を確認することが大切です。
服薬指導では、次の点を確認します。
・服用する曜日を理解しているか
・葉酸製剤を服用する曜日と混同していないか
・口内炎、強い倦怠感、発熱、咳、息切れなどがないか
・定期的に血液検査を受けているか
・妊娠の可能性や妊娠希望がないか
・腎機能に影響する薬剤を併用していないか
発熱や咳などがある場合も、患者さんの判断だけで服用を中止または再開するのではなく、処方医へ連絡するよう説明します。
JAK阻害薬は内服できるが安全性確認が欠かせない
JAK阻害薬は、炎症性サイトカインから細胞内へ情報を伝えるJAK-STAT経路を抑える薬です。
トファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、ペフィシチニブなどがあります。
生物学的製剤とは異なり内服できるため、注射に抵抗がある患者さんにとっては選択肢の一つになります。また、比較的早い段階で症状の改善を感じる患者さんもいます。
一方で、感染症には十分な注意が必要です。特に帯状疱疹は、JAK阻害薬で意識したい感染症の一つです。
服薬指導では、皮膚の痛みや違和感、水疱が現れた場合には早めに受診するよう説明します。帯状疱疹は、発疹が出る前にピリピリした痛みや違和感から始まることがあります。
そのほか、発熱や咳だけでなく、次のような症状も確認します。
・息切れや呼吸のしづらさ
・排尿時の痛み
・長引く下痢
・傷口の腫れや化膿
・いつもとは違う強い倦怠感
JAK阻害薬では、悪性腫瘍、心血管系事象、静脈血栓塞栓症などについても患者背景を踏まえた評価が必要です。
薬局で薬の危険性を過度に強調する必要はありませんが、「どのような症状が出たら相談するのか」を具体的に伝えることが重要です。
TNF阻害薬は導入前の感染症確認が重要
TNFは、関節リウマチの炎症に深く関与するサイトカインです。TNF阻害薬はTNFの働きを抑えることで、関節の炎症や症状を改善します。
代表的な薬剤には、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ ペゴルなどがあります。
皮下注射または点滴で使用され、メトトレキサートと併用されることもあります。
TNF阻害薬では、治療開始前に結核やB型肝炎などの感染症を確認することが重要です。治療開始後も感染症の発症や再活性化に注意します。
薬局では、次のような症状がないか確認します。
・発熱が続いている
・咳や痰が長引いている
・息苦しさがある
・体重減少や寝汗がある
・傷が治りにくい
・皮膚が赤く腫れている
自己注射製剤では、注射手技や保管方法、注射部位反応についても確認します。
注射部位は毎回少しずつ変え、赤みや腫れが強い場合には医療機関へ相談するよう説明します。
IL-6阻害薬では発熱やCRPだけで判断しない
IL-6は、関節リウマチの炎症に関係するサイトカインの一つです。
IL-6の働きを抑える薬として、トシリズマブやサリルマブなどがあります。皮下注射または点滴で使用されます。
IL-6阻害薬で注意したいのは、感染症があっても発熱やCRP上昇などの炎症反応が目立ちにくくなる可能性があることです。
そのため、「熱がないから感染症ではない」「CRPが低いから問題ない」とは限りません。
薬局では検査値だけでなく、患者さんの自覚症状を確認することが大切です。
・咳や息切れが続いている
・強い倦怠感がある
・腹痛が続いている
・傷口が悪化している
・食欲が低下している
・普段と違う体調不良が続いている
このような症状がある場合には、発熱の有無にかかわらず、早めに医療機関へ相談するよう説明します。
また、肝機能障害、好中球減少、血小板減少、脂質異常などにも注意が必要です。定期検査が行われているか、検査値に大きな変化がないかも確認します。
4つの薬剤群の違いを比較
| 薬剤群 | 主な特徴 | 投与方法 | 薬局で特に確認したいこと |
|---|---|---|---|
| メトトレキサート | 関節リウマチ治療の中心薬 | 内服・皮下注射 | 服用曜日、葉酸製剤との区別、血液障害、肝機能、間質性肺炎 |
| JAK阻害薬 | 細胞内の炎症シグナルを抑える | 内服 | 帯状疱疹、感染症、血栓塞栓症などのリスク |
| TNF阻害薬 | TNFを選択的に抑える | 皮下注射・点滴 | 結核やB型肝炎、感染症、自己注射の手技 |
| IL-6阻害薬 | IL-6の働きを抑える | 皮下注射・点滴 | 感染兆候、肝機能、血球減少、脂質異常 |
薬剤の優劣だけで使い分けるのではなく、疾患活動性、これまでの治療歴、年齢、合併症、感染症リスク、妊娠希望、通院や自己注射の可否などを踏まえて選択されます。
薬剤師としては、「なぜこの薬なのか」を一つの理由に決めつけず、患者背景と処方経過を合わせて考えることが大切です。
感染症について薬局で確認したい質問
抗リウマチ薬の服薬指導では、「風邪をひいていませんか」と聞くだけでは、感染症の兆候を十分に拾えないことがあります。
次のように、症状を具体的に聞くと確認しやすくなります。
・発熱、咳、痰、息切れはありませんか
・排尿時の痛みや頻尿はありませんか
・下痢や腹痛が続いていませんか
・皮膚の痛み、水疱、化膿はありませんか
・歯の痛みや腫れはありませんか
・傷が治りにくくなっていませんか
・いつもと違う強いだるさはありませんか
症状がある場合には、患者さんへ一律に休薬を指示するのではなく、処方医へ連絡して服用や投与の可否を確認するよう案内します。
ワクチンは生ワクチンかどうかを確認する
免疫を抑える治療を受けている患者さんでも、すべてのワクチンが接種できないわけではありません。
インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、新型コロナワクチン、組換え帯状疱疹ワクチンなど、生ワクチンではないワクチンは接種が検討されます。
一方、生ワクチンは、使用している抗リウマチ薬や免疫抑制の程度によって接種できないことがあります。
特に帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンがあります。「帯状疱疹ワクチンを受ける」と聞いたときは、どちらの製剤を接種する予定なのか確認が必要です。
また、メトトレキサート使用中のインフルエンザワクチン接種では、病状が安定している場合に限り、ワクチン接種後の休薬が検討されることがあります。
ただし、休薬によって関節リウマチが悪化する可能性もあるため、患者さんの自己判断で休薬しないよう説明し、処方医の指示を確認します。
まとめ
抗リウマチ薬は、作用の違いだけでなく、投与方法や感染症への注意点を合わせて整理すると理解しやすくなります。
メトトレキサートでは、週単位の服用方法と副作用の確認が重要です。JAK阻害薬では帯状疱疹をはじめとする感染症や、患者背景に応じた安全性評価が欠かせません。
TNF阻害薬では結核やB型肝炎などの感染症、IL-6阻害薬では発熱やCRP上昇が目立たない感染症に注意します。
薬局では、患者さんを不安にさせるだけの説明ではなく、「どのような症状が出たら、どこへ相談すればよいのか」を具体的に伝えることが大切です。
参考文献
・日本リウマチ学会「関節リウマチ診療ガイドライン2020」
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00843/
・2022 American College of Rheumatology Guideline for Vaccinations in Patients With Rheumatic and Musculoskeletal Diseases
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10291822/
・2019 update of EULAR recommendations for vaccination in adult patients with autoimmune inflammatory rheumatic diseases
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31413005/
・厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/index.html


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