薬学部は留年しやすい?退学率・卒業率と留年を防ぐための対策を薬剤師が解説

薬剤師が解説
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「薬学部は留年する人が多いと聞いたけれど、本当だろうか」

「薬剤師になりたいけれど、6年間きちんと通い続けられるか不安」

薬学部への進学を考えている高校生や保護者のなかには、このような不安を感じている人もいるでしょう。

6年制薬学部では、化学や生物などの基礎科目から、薬理学、薬剤学、病態・薬物治療学、法規、実務実習まで幅広く学びます。大学に合格することがゴールではなく、進級、実務実習、卒業試験、薬剤師国家試験まで長期間にわたって勉強を続けなければなりません。

一方で、「薬学部に入ったら高確率で留年する」というわけでもありません。大学による違いが大きく、入学後の学習習慣や早めの対策によって防げる留年もあります。

この記事では、薬学部の退学率や卒業率を見るときの注意点、留年しやすくなる原因、留年を防ぐためにできることを、調剤薬局で12年以上働いてきた薬剤師の立場から解説します。

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薬学部では留年や退学が多いのか

文部科学省は、6年制薬学部について大学ごとの退学等の割合、卒業率、標準修業年限内での卒業率などを公表しています。

最新の2025年度調査を確認すると、退学等の割合や6年間で卒業できた学生の割合には、大学によって大きな差があります。ほとんど退学者が出ていない年度のある大学がある一方、入学者の2~3割前後が退学・転学・除籍などに至っている年度のある大学もあります。

ここで注意したいのは、文部科学省の「退学等」には、本人の意思による退学だけでなく、転学、転学部、転学科、除籍なども含まれていることです。そのため、数字だけを見て「全員が勉強についていけず退学した」と判断することはできません。

また、次の3つはそれぞれ意味が異なります。

  • 6年間で卒業した割合
  • 留年しても最終的に卒業した割合
  • 卒業後に薬剤師国家試験へ合格した割合

大学を比べるときは、その年の国家試験合格率だけでなく、入学者のうち何人が6年間で卒業できたのかを見ることが重要です。

国家試験合格率だけでは大学の実態がわからない

2026年に実施された第111回薬剤師国家試験では、全体の合格率が68.49%、新卒者の合格率が86.25%でした。

この数字を見ると、「新卒なら8割以上が合格できる」と感じるかもしれません。

しかし、新卒合格率の分母になるのは、基本的に大学を卒業して国家試験を受験した人です。入学後に退学した人、留年中の人、その年に卒業できなかった人は、新卒合格率には含まれません。

そのため、志望校を調べる際は、国家試験合格率だけでなく、次の項目を合わせて確認しましょう。

  • 入学者数
  • 6年間での卒業率
  • 退学等の割合
  • 国家試験の受験者数
  • 新卒者の国家試験合格率
  • 進級・学習支援制度

国家試験合格率が高いという理由だけで、必ずしも留年しにくい大学とは限りません。

薬学部で留年しやすくなる主な原因

薬学部で留年する原因は、単純に「頭がよいかどうか」だけではありません。高校までの学習方法との違いや、複数科目を同時に進める難しさも影響します。

基礎科目の理解が不十分なまま進んでしまう

薬学部では、化学、生物、物理、数学などの基礎知識を土台として専門科目を学びます。

たとえば、有機化学や生化学の理解が不十分なままだと、薬理学や薬物動態学を学ぶ段階で苦労することがあります。

薬学部の勉強は、単語を暗記するだけでは対応できません。薬が効く仕組みや体内での動きを、基礎科目と結び付けて理解する必要があります。

苦手な科目を放置していると、学年が上がるほど理解できない部分が積み重なってしまいます。

試験直前だけの勉強では間に合わない

薬学部では、複数の専門科目の試験が短期間に集中することがあります。試験範囲も広いため、高校までのように試験前の数日間だけ勉強して乗り切るのは簡単ではありません。

普段から講義内容を復習せず、試験前に初めて教科書を開く状態が続くと、単位を落とすリスクが高くなります。

長時間の勉強を一度だけ行うよりも、講義当日や週末に短時間でも復習する方が、知識を定着させやすくなります。

欠席や生活リズムの乱れが続く

大学では高校よりも自由な時間が増えますが、その分、自分で生活を管理しなければなりません。

夜更かしやアルバイトなどによって欠席が増えると、講義内容だけでなく、試験範囲、提出物、実習に関する連絡を把握できなくなる可能性があります。

一度の欠席ですぐ留年するわけではありませんが、欠席と学習の遅れが重なると、立て直すのが難しくなります。

一人で抱え込み、相談が遅れる

薬学部では、わからない部分を自分だけで何とかしようとしているうちに、試験直前になってしまうことがあります。

大切なのは、友人の数ではありません。講義でわからなかった部分を確認できる相手や、困ったときに相談できる窓口を確保しておくことです。

大学の教員、担任・チューター、学生相談室、学習支援室など、利用できる制度は大学によって異なります。成績が下がってからではなく、「少し理解が遅れている」と感じた段階で相談した方が立て直しやすくなります。

アルバイトと勉強のバランスが崩れる

薬学部の学費や生活費を補うため、アルバイトが必要な学生もいます。アルバイトそのものが留年の原因になるわけではありません。

ただし、勤務日数が多く、復習や睡眠の時間まで削られている場合は注意が必要です。

特に定期試験前や実習期間中は、勤務日数を減らせるよう、早めに勤務先へ相談しておくことが大切です。

薬学部で留年しないためにできること

入学直後から復習する習慣を作る

最初から毎日何時間も勉強しようとすると、長続きしないことがあります。

まずは、講義を受けた日に資料を見直し、「理解できた部分」と「わからなかった部分」を分ける習慣を作りましょう。

1日30分でも継続できれば、試験直前にすべてを覚え直す負担を減らせます。

必修科目と進級条件を確認する

大学によって、進級に必要な単位数や必修科目、再試験の条件は異なります。

「1科目落としただけなら大丈夫だろう」と考えていたところ、その科目が進級に必要だったということも考えられます。

入学後は、学生便覧や履修要項を確認し、次の点を把握しておきましょう。

  • 必修科目
  • 進級条件
  • 再試験・追試験の条件
  • 実務実習へ進むための条件
  • 卒業試験の有無
  • 留年した場合に必要となる学費

わからない場合は、教務課や担当教員へ確認するのが確実です。

過去問だけに頼らない

定期試験の傾向を知るために過去問が役立つ場合はあります。

しかし、過去問の答えだけを暗記していると、出題方法が変わったときに対応できません。薬剤師国家試験でも、知識をそのまま答えるだけでなく、症例や検査値から判断する問題が出題されます。

過去問は理解度を確認するために使い、教科書や講義資料で「なぜその答えになるのか」まで説明できるようにしておきましょう。

わからない状態を長期間放置しない

一つの科目でつまずいても、早い段階であれば十分に取り戻せます。

教員へ質問することに抵抗がある場合は、質問する前に次の内容を整理しておくと伝えやすくなります。

  • どの部分まで理解できているか
  • どの用語がわからないか
  • 自分でどの資料を調べたか
  • どのように考えたか

これは、薬剤師として働き始めてから先輩や医師へ相談するときにも役立つ習慣です。

志望校は偏差値と国家試験合格率だけで決めない

薬学部を選ぶときは、偏差値や国家試験合格率だけでなく、6年間通い続けられる環境かどうかも考える必要があります。

確認したい項目は次のとおりです。

  • 6年間での卒業率
  • 退学等の割合
  • 学生への学習支援制度
  • 再試験や補講の仕組み
  • 自宅からの通学時間
  • 6年間の学費と生活費
  • 留年した場合に追加で必要となる費用
  • 実務実習先や就職先
  • 奨学金の返済額

私立大学の薬学部では、6年間の学費が大きな負担になることがあります。合格できるかどうかだけでなく、卒業まで通えるか、卒業後に奨学金を返済できるかまで考えておくことが重要です。

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薬学部の勉強は大変だが、過度に怖がる必要はない

薬学部では、6年間にわたり多くの科目を学び、実務実習や卒業試験、薬剤師国家試験を乗り越える必要があります。決して簡単な道ではありません。

しかし、入学した学生の全員が留年するわけではありません。講義への出席、日頃の復習、早めの相談といった基本的な行動を続けることで、留年のリスクを下げられます。

また、留年したからといって、その人が薬剤師に向いていないと決まるわけでもありません。体調や家庭の事情、経済的な問題など、学力以外の理由が影響することもあります。

大切なのは、薬剤師という職業のよい面だけを見るのではなく、6年間の学習内容、学費、卒業率、国家試験、卒業後の働き方まで確認したうえで進学を決めることです。

薬学部への進学を検討している人は、大学が公表している数字だけでなく、文部科学省の資料も確認し、自分が6年間学び続けられる環境かどうかを考えてみてください。

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参考文献

1.文部科学省.薬学部における修学状況等
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_d/1361518.htm

2.文部科学省.薬学部における修学状況等 2025年(令和7年)度調査結果
https://www.mext.go.jp/content/20260116-mxt_igaku-100000059_03.pdf

3.文部科学省.薬学部の6年制課程における退学状況等
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_d/1361518_00001.htm

4.文部科学省.薬学部の6年制課程における退学状況等 2025年(令和7年)度調査結果
https://www.mext.go.jp/content/20251031-mxt_igaku-000027071_04.pdf

5.厚生労働省.第111回薬剤師国家試験 大学別合格者数
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001678072.pdf

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