更新日:2026年10月11日/薬剤師向け実務解説
「リブレのグラフが夜中に下がっています」「HbA1cは良いのに、低い値が出るのはなぜですか?」。血糖センサーの画面を見せられたとき、薬局ではどこから確認すればよいでしょうか。
最初に確認したいのは、低血糖の有無と、そのときの症状です。目標範囲内の時間が長くても、低血糖が繰り返されていれば安全面の確認が必要です。この記事では、CGMの指標を短時間で整理し、服薬・食事・生活の聞き取りや処方医への情報提供につなげる方法を解説します。
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CGMの見方は「症状・低血糖→データ量→時間帯」から
CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続グルコース測定)は、皮下の間質液中のグルコースをセンサーで測定する仕組みです。指先から採血して測る血糖値とは測定対象が異なり、急な変化の際などに値がずれることがあります。[1,3]
画面を見るときは、次の順番を実務の目安にすると整理しやすくなります。これは本記事で提案する確認手順です。
- 今の体調:冷汗、ふるえ、意識の変化などはないか。低値が出たとき、どう対応したか。
- データの条件:集計期間、欠測、機器名、治療変更の時期を確認する。
- 低値の時間帯:夜間、食事前、運動後などに繰り返し下がっていないか。
- 高値と生活の関係:食事、服薬・注射の時刻、飲み忘れ・打ち忘れと照らし合わせる。
日本糖尿病学会のステートメントでも、HbA1cにかかわらず、TBR(低値の時間)を可能な限り小さくすることが大原則とされています。[2] 数値を良くすることだけに集中せず、低血糖を増やさない視点を持ちます。
TIR・TBR・TAR・GMIを比較表で整理
以下は主に妊娠していない成人の1型・2型糖尿病で用いられる一般的な目安です。高齢者や低血糖リスクの高い方、妊娠中の方には、そのまま当てはめず、主治医の個別目標を確認します。[1,6]
| 指標 | 何を表すか | 一般的な目安・確認点 |
|---|---|---|
| TIR:Time in Range | 70〜180 mg/dLにある時間の割合 | 70%超。低血糖を増やさず達成する |
| TBR:Time Below Range | 70 mg/dL未満にある時間の割合 | 4%未満。うち54 mg/dL未満は1%未満 |
| TAR:Time Above Range | 180 mg/dLを超える時間の割合 | 25%未満。うち250 mg/dL超は5%未満 |
| GMI:Glucose Management Indicator | 平均センサーグルコース値から算出する指標 | 検査で測ったHbA1cとは別の値 |
| CV:変動係数 | 平均値に対するばらつき | 国際コンセンサスでは36%以下が目安 |
TBRの「70 mg/dL未満」には「54 mg/dL未満」も含まれます。TARの「180 mg/dL超」にも「250 mg/dL超」が含まれるため、それぞれを足し合わせるものではありません。
GMIとHbA1cのずれを「変動が大きい」と決めつけない
GMIは採血の結果ではなく、センサーデータから計算した値です。検査のHbA1cと異なることがあり、ずれだけで治療の良し悪しや変動の大きさを判断できません。[5]
薬局では「いつのHbA1cか」「センサーの集計期間はいつか」「最近薬や食生活が変わったか」を聞き取ります。ずれを理由に、患者さんが自己判断で薬を増減していないかも確認しましょう。
AGPは全体像、日別グラフは具体的な出来事を見る
AGP(Ambulatory Glucose Profile)は、複数日のデータを時刻ごとにまとめた図です。低くなりやすい時間帯を見つけたら、日別グラフでその日に何があったかを確かめます。[1] 全体の形だけを見て「夕食が原因」と決めず、患者さんの話と照合することが大切です。
短い期間や欠測の多いデータは、普段の状態を十分に反映しないことがあります。国際コンセンサスでは、代表的な評価条件として14日間、データ取得率70%以上が示されています。[6] 現在の低血糖への対応を、この日数がそろうまで待つ必要はありません。
リブレ2・Dexcom G7で確認したい機器の違い
同じ血糖センサーでも、使用期間や表示方法は機器・アプリによって異なります。患者さんが使っている製品名を確かめて説明します。
| 製品 | 使用期間 | 薬局で確認すること |
|---|---|---|
| FreeStyleリブレ2 | 最長14日間 | 対応アプリへのリアルタイム送信、アラート設定、通信状態 |
| Dexcom G7 CGMシステム | 10日間+12時間の猶予期間 | 5分ごとの送信、30分のウォームアップ、対応機器 |
リブレ2を一律に「かざさないと値が見られない機器」と説明するのは適切ではありません。現在の国内公式情報では、センサーからアプリへのリアルタイム送信が案内されています。[3] リーダーとアプリの違いも含め、実際の組み合わせを確認してください。上表のG7は国内公式ページで案内される10日間モデルです。[4]
保険適用は機器ごとの算定要件を確認する
CGMの保険適用は機器や診療上の要件によって異なります。「インスリンを使っていればすべて同じ条件」「GLP-1製剤を使っていれば対象」とまとめず、導入する医療機関で適用と費用を確認します。[3] 薬局では、製品名、処方・導入元、交換予定、必要な消耗品を整理しておくと説明がつながります。
服薬指導で使える声かけと確認項目
グラフを見ながら、患者さんが思い出しやすい時間帯や出来事に質問を絞ります。以下は実際の症例報告ではなく、薬局での聞き取りを想定した会話例です。
「夜中に低い値が出ています」と言われたら
「この時間に、汗をかいたり、目が覚めたりしたことはありますか?」「低い値が出たとき、指先の測定や、病院で教わった対応はできましたか?」
続けて、夕食を食べた時刻、服薬・注射をした時刻、普段と違う活動があったかを確認します。「いつもと同じ量を使ったか」「自分で追加や減量をしたか」も、責める言い方を避けて聞き取ります。
「食後に高いので薬を追加していいですか?」と言われたら
「いつ食べて、いつ薬を飲んだり注射したりしましたか?」「病院から、追加するときの具体的な指示はありますか?」
単発の高値だけで追加投与を勧めず、医師からの調整指示があるかを確認します。処方変更後なら、開始日や実際の使用状況も記録し、必要に応じて処方医へ伝えます。
注射薬の違いを整理したい方は、トルリシティとマンジャロの違い・注射方法・服薬指導も確認できます。内服薬の特徴は、DPP-4阻害薬9成分の違いと使い分けにまとめています。
数値の説明だけで終わらせない
「次に気になる値が出たら、その時刻と、食事・薬・体調を一緒にメモしておきましょう」と、受診時に役立つ行動につなげます。アラートの意味や対応方法が分からない場合は、導入元の指示や製品の取扱説明書を一緒に確認します。
センサー値と症状が合わないとき・医療機関につなぐとき
センサーの値が症状と一致しないときや、測定値の正確性に疑問があるときは、血糖自己測定(SMBG)で確認します。両メーカーの国内案内でも、こうした場合の血糖自己測定が示されています。[3,4,7]
意識が悪い、けいれんしている、自力で安全に飲み込めないなど、重い低血糖が疑われる場合は救急対応が必要です。無理に飲食させず、救急要請などを優先します。重症でなくても、低値が繰り返される場合や、対応しても改善しない場合は、受診間隔を待たずに医療機関への連絡を検討します。[1]
医師への情報提供では、「TIRが低い」という評価だけでなく、次の事実を添えると状況が伝わりやすくなります。
- 機器名、集計期間、データ取得状況
- 低値・高値の時刻、持続時間、繰り返しの有無
- そのときの症状、SMBGでの確認結果、行った対応
- 処方内容と実際の服薬・注射時刻、自己調整の有無
- 食事や活動など、普段と異なる出来事
薬歴には、患者さんの申告・画面で確認した事実・薬剤師の判断・実施した対応を分けて残します。原因を確認できていない場合は、推測を断定として記載しないようにします。
まとめ|数字を生活と服薬につなげる
CGMを読むときは、まず症状と低血糖を確認し、データの条件、時間帯、服薬や生活の出来事を順に整理します。TIRだけで判断せず、TBR・TAR・GMIも役割を分けて見ると、患者さんへの質問が具体的になります。
薬局でできるのは、気になる変化を聞き取り、患者さんが受けている治療指示を確認し、必要な情報を処方医へつなぐことです。次の服薬指導では「この時刻には何をしていましたか?」という一言から始めてみてください。
患者支援に取り組める働き方を考えたい方へ
継続した聞き取りや情報提供に取り組むには、薬局の人員配置、相談できる体制、教育時間も確認したい条件です。働き方を整理したい方は、管理薬剤師になって思うこと|責任・しんどさ・成長も参考にしてください。
職場を比較する際は、求人票の条件に加えて、患者対応に使える時間や研修体制を具体的に確認すると判断材料が増えます。情報収集の選択肢として、次のサービスを紹介します。
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参考文献・公式資料
- Nishimura R, et al. Consensus statement on novel glucose-related metrics obtained through advanced medical devices: English version. 2025. https://link.springer.com/article/10.1007/s13340-025-00820-2
- 日本糖尿病学会「先進医療機器により得られる新たな血糖関連指標に関するコンセンサスステートメント(英語版)」公表案内。https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=446
- アボットジャパン「FreeStyleリブレ2」公式製品情報。https://www.freestyle.abbott/ja-jp/products/freestyle-libre-2.html
- Dexcom「Dexcom G7 CGMシステム」医療従事者向け公式製品情報。https://www.dexcom.com/ja-JP/healthcare-professionals/dexcom-g7-cgm-system
- Bergenstal RM, et al. Glucose Management Indicator (GMI): A New Term for Estimating A1C From Continuous Glucose Monitoring. 2018. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6196826/
- Battelino T, et al. Clinical Targets for Continuous Glucose Monitoring Data Interpretation: Recommendations From the International Consensus on Time in Range. 2019. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6973648/
- アボットジャパン「別途自己血糖測定器を携帯する必要はありますか?」。https://www.freestyle.abbott/ja-jp/support/faq-25.html
資料確認日:2026年10月11日。機器の使用は国内の取扱説明書と導入医療機関の指示に従ってください。


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