「副鼻腔炎だから抗菌薬を長く飲む?」「鼻づまりが残るなら点鼻薬を増やす?」。処方の意図を読むには、鼻茸の有無、好酸球性炎症の可能性、急性増悪かどうかを先に確認すると整理しやすくなります。この記事では慢性鼻副鼻腔炎の治療を薬剤師向けに整理し、服薬指導と処方監査で見る点をまとめます。
先に結論:鼻洗浄や局所治療を土台に、非好酸球性の病態ではマクロライド少量長期療法が検討されることがあります。一方、好酸球性・鼻茸を伴う難治例では手術、短期間の全身ステロイド、生物学的製剤などを個別に検討します。抗菌薬も注射薬も、全員が順番に使う治療ではありません。
慢性副鼻腔炎では病型を最初に確認する
鼻閉、鼻漏・後鼻漏、嗅覚障害などが長く続く場合、症状だけで決めず鼻内所見や画像所見を含めて耳鼻咽喉科で評価します。鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎(CRSwNP)と鼻茸を伴わない病型(CRSsNP)があり、日本では好酸球性鼻副鼻腔炎かどうかも治療を考える上で重要です。鼻茸があるだけで好酸球性と断定はできません。
| 確認すること | 治療を読む手がかり |
|---|---|
| 鼻茸・嗅覚障害・喘息の有無 | 難治性・好酸球性の病態や専門的治療を検討する材料 |
| 鼻漏・後鼻漏の強さと経過 | 症状の評価、マクロライド療法の効果判定の材料 |
| 発熱や急な疼痛・鼻汁の悪化 | 急性増悪や別の疾患について再評価する材料 |
治療薬は「何を改善するためか」で整理する
鼻洗浄・点鼻ステロイド
生理食塩水による鼻洗浄は、鼻汁などを洗い流す補助療法です。器具は清潔に保ち、使用する水や調製方法は製品の説明に従います。局所ステロイドは鼻症状の管理や術後の再発予防などで用いられます。ただし国内の一般的な鼻噴霧用ステロイドには、慢性副鼻腔炎そのものの保険適用がない製品があります。処方目的が合併するアレルギー性鼻炎なのか、副鼻腔炎に対する使用なのかを確認し、薬剤ごとの添付文書・適応を確かめてください。
例えばフルチカゾンフランカルボン酸エステル(アラミスト)、モメタゾンフランカルボン酸エステル(ナゾネックス)、デキサメタゾンシペシル酸エステル(エリザス)は別の成分です。元記事でエリザスをモメタゾン製剤としていた記載は誤りでした。噴霧は製剤ごとの手順を優先し、液剤では鼻中隔へ直接当てないよう指導します。剤形によって操作が違うため、点鼻薬の種類と使い分けも参照してください。
抗菌薬・マクロライド少量長期療法
慢性副鼻腔炎の急性増悪時に細菌感染が疑われる場合、重症度などに応じて抗菌薬を検討します。アモキシシリン(サワシリンなど)は選択肢の一つですが、漫然と抗菌薬を続けることとは別です。
クラリスロマイシン(クラリスなど)、ロキシスロマイシン(ルリッド)などの少量長期療法は、好中球性炎症や鼻漏・後鼻漏が主体の病型で検討されます。好酸球性の鼻茸を伴う病型にも一律に有効という意味ではありません。効果と継続期間を確認し、クラリスロマイシンでは特に併用薬、QT延長のリスク、相互作用を監査します。抗菌薬の適正使用については薬剤耐性(AMR)と薬剤師の実務もご覧ください。
全身ステロイド・生物学的製剤・手術
鼻茸を伴う重症・難治例などではプレドニゾロン(プレドニンなど)の短期投与や内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)が検討されます。全身ステロイドは血糖上昇などの有害事象に注意し、反復・長期使用を前提にしません。
既存治療で効果が不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎には、デュピルマブ(デュピクセント)やメポリズマブ(ヌーカラ)が選択肢になります。適応患者や施設の要件を踏まえて専門医が判断します。鼻茸のない患者全般へ使う薬という意味ではありません。注射薬の導入後も症状、喘息の合併、従来治療の継続内容を確認します。
薬局で確認したい5つのポイント
- 目的:今回の処方は急性増悪、慢性期の症状管理、術後管理、合併するアレルギー性鼻炎のどれを意図しているか。
- 手技:点鼻薬の回数・左右の噴霧数・残量、鼻出血の有無、鼻洗浄器具の管理。
- 抗菌薬の安全性:開始日、予定期間、効果判定時期、併用薬、QT延長リスク。長期処方の意図が不明なら処方医に確認。
- 症状の変化:鼻閉、鼻漏、嗅覚障害、喘息症状、発熱や痛みの急な悪化を継続的に把握。
- 受診につなぐ変化:片側だけの強い症状、眼周囲の腫れ、視力の変化、激しい頭痛などがあれば早めの医学的評価を促す。
抗ヒスタミン薬は合併するアレルギー性鼻炎などの症状に応じて位置づけます。例えばフェキソフェナジン(アレグラ)やロラタジン(クラリチン)を、副鼻腔炎そのものへの一律の治療として扱いません。薬剤別の注意点は第二世代抗ヒスタミン薬の違いと選び方にまとめています。
まとめ
慢性副鼻腔炎の処方は「鼻茸・好酸球性炎症の可能性」「急性増悪か慢性期か」「薬剤の目的」の3点から読むと整理できます。特に点鼻ステロイドの国内適応、マクロライドの相互作用と漫然投与、難治例の専門医による治療選択を確認しましょう。
更新:2026年9月17日。薬剤の適応・用法は製品と改訂時期で異なります。個別の処方は最新の添付文書と診療情報を確認してください。
参考文献
- 日本鼻科学会会誌「鼻副鼻腔炎診療の手引き」の要点(2024年)
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報「鼻副鼻腔炎薬物療法 Up to Date」(2024年)
- PMDA:エリザス点鼻粉末200μg28噴霧用 医薬品情報
- PMDA:ヌーカラ皮下注100mgペン 医薬品情報
- 厚生労働省:デュピルマブ(鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎)最適使用推進ガイドライン



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