はじめに

薬剤師にとって欠かせない業務の一つが「薬歴入力(電子薬歴の記録)」です。
患者さんの服薬状況や副作用、指導内容をきちんと記録することで、次回以降の処方確認や医師との連携がスムーズになります。
ただ、新人薬剤師の多くがこの電子薬歴入力に苦手意識を持っています。
「1人あたりの入力に5~10分もかかってしまう」「閉店後に薬歴が溜まり、毎日残業している」などの悩みもよく聞かれます。
この記事では、パソコン操作に自信がなくても、今日から使える時短テクニックを紹介します。
ショートカットキー・テンプレート・音声入力などを組み合わせて、薬歴入力のスピードが2倍になる方法をわかりやすく解説します。
Step 1:環境設定で土台を整える

ソフト側の設定を最適化する
まずは、使っている電子薬歴ソフトの設定を見直しましょう。
たとえば、次のような初期設定を確認・変更しておくと、余計な手間が省けます。
- よく使うフレーズをユーザー辞書に登録する
→ 例:「副作用なし」「患者了解済み」など、毎回入力する言葉を3~4文字の短縮語にして登録 - 自動保存機能を1分に設定する
→ 書いていた内容が突然消えてしまうトラブルを防ぎます - 「前回の薬歴をコピー」機能を活用する
→ 定期処方など内容が似ている場合、前回の内容をベースに修正すれば大幅な時短に
パソコン周りの道具も意外と重要
- 外付けテンキーやパンタグラフ式のキーボードを使う
→ 小さなキーボードやノートパソコンの打鍵では疲れやすく、入力ミスも増えます - 文字入力の補助機能(IMEの単語予測)をONにする
→ 文字を3~4文字打つだけで、予測変換で全文を出せるようになります
Step 2:基本ショートカットキーを覚える

ショートカットキーとは、キーボードの特定のキーを組み合わせて操作を簡単にする方法です。
いちいちマウスを使わなくても、指だけで操作できるため、1つ使うだけでも入力効率が大きく変わります。
代表的な例を表にまとめます。
よく使う操作 | Windows / Mac ショートカット | 解説 |
患者検索 | Ctrl + F / ⌘ + F | 氏名やID番号を一瞬で検索可能 |
本日コピー | Ctrl + Shift + C | 前回の薬歴をベースにする機能(ソフトによる) |
定型文呼出 | Alt + 数字 | 事前登録しておいた文章を一発呼び出し |
ショートカットキーは、最初は慣れが必要ですが、1〜2週間で自然に使えるようになります。
ソフトごとの独自キーもあるので、説明書やメーカーHPから一覧を印刷して、デスク横に貼っておくと便利です。
Step 3:テンプレートと定型文で“ゼロから書かない”

薬歴の入力内容は、毎回完全に違うわけではありません。よくあるケースに対応できるよう、あらかじめ定型文(テンプレート)を用意しておくと、入力時間を大幅に短縮できます。
例:副作用の定型テンプレート
「副作用として眠気を認めたため、服薬タイミングの変更を提案し、次回診察時に再評価を依頼した」
→ これを「mne」と登録しておけば、3文字で展開可能です。
テンプレートの整理も重要
1ヶ月に1回は、よく使うテンプレートと使っていないテンプレートを見直しましょう。
使わないものが増えると、呼び出しリストがごちゃごちゃして逆に遅くなることがあります。
Step 4:音声入力を取り入れて“ながら作業”を実現

パソコンに向かってタイピングするのが苦手な方には、スマホやパソコンの音声入力もおすすめです。
使い方の一例
- iPhoneやAndroidスマホで音声入力(メモアプリやGoogle Keepを使用)
- 入力されたテキストをクラウド同期し、PCで開いてコピー
- 薬歴ソフトに貼り付けて、句読点やレイアウトを整える
特に処方が単純で、内容も毎回似ているケースでは、タイピングよりも音声の方が早く・正確に入力できます。
※「メトトレキサート」などの専門用語は事前に辞書登録しておくと、誤変換が減ってスムーズになります。
Step 5:効果を“見える化”して改善につなげる

入力を早くする方法を取り入れたら、それが本当に効果があるのかを測定しましょう。
次のようなステップで“見える化”すると改善の達成感もあります。
- 入力時間のベースラインを把握
1週間分の平均時間を計測(例:1枚あたり6分) - ショートカットやテンプレ導入後に再計測
→ 1枚あたり3分になったら成功! - 効果が薄いテンプレや操作は改善する
使いづらいものは削除、改善してPDCAサイクルを回す
ケーススタディ:実際の改善例

Before(改善前) | After(改善後) | 効果の内訳 |
1枚あたり6分 | 1枚あたり3分 | ショートカット 60%音声入力 30%テンプレ最適化 10% |
1日40人分の薬歴を入力している場合、これだけで1日20分以上の時短になります。
週5日勤務なら月に7〜8時間、つまりほぼ1日の業務時間を節約できることになります。
よくある悩みとその対策

Q:入力途中で文章が消えました…
→ 自動保存機能をONにしていれば、復元できます。Ctrl+Z(元に戻す)も使ってみましょう。
Q:音声入力がうまく反応しません
→ スマホなら静かな場所で話す、マイク付きイヤホンを使うと改善します。
→ PCでの音声入力には外付けマイクの使用も効果的です。
まとめ|今日からできる薬歴時短3か条

- まずは環境を整える(テンキーや辞書登録など)
- ショートカットキーとテンプレートを使いこなす
- 音声入力も併用して負担を減らす
入力スピードが上がれば、患者さんへの対応にもっと時間を使えたり、定時で帰れるようになったりと、大きなメリットがあります。
働き方そのものを見直すという選択も

もしあなたが今、「電子薬歴の入力方法を工夫しても、そもそも薬歴の量が多すぎて毎日残業している」「システムが古く、入力効率を上げるのが難しい」と感じているなら——
職場そのものを見直す時期かもしれません。
最近では、
- バーコード調剤・自動入力補助などを導入している薬局
- 1日あたりの処方数が適切で、残業時間が少ない職場
- 在宅や服薬指導に時間をしっかり取れる環境
を整えている薬局や企業も増えています。
そういった職場に出会うには、薬剤師専門の転職エージェントに相談するのが有効です。
現場をよく知る担当者が、あなたの希望に合わせて「残業が少ない」「IT化が進んでいる」「教育体制が整っている」職場を紹介してくれるでしょう。
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入力スピードの改善は、日々のストレスを大きく減らしてくれます。
そしてその一歩を踏み出した今だからこそ、自分に合った働き方を考えてみるタイミングでもあるかもしれません。
無理なく、効率よく、成長できる職場を見つけて、あなたらしい薬剤師キャリアを築いていきましょう。
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