1. かかりつけ薬剤師とは?
「かかりつけ薬剤師」とは、患者が特定の薬剤師を指名し、継続的に薬の管理や健康相談を行う制度です。2016年に導入され、患者の服薬管理を一元化し、医薬品の適正使用を促すことを目的としています。
例えば、複数の病院から薬を処方されている患者がいる場合、かかりつけ薬剤師が一人ひとりの服薬状況を把握することで、飲み合わせのリスクを防ぐことができます。また、24時間対応が可能なため、夜間や休日でも薬の相談ができるのが特徴です。
かかりつけ薬剤師の条件
かかりつけ薬剤師として指名されるには、以下の条件を満たす必要があります。
• 薬剤師としての勤務経験が3年以上
• 週32時間以上、同じ薬局での勤務
• 研修を修了し、適切な知識を持っている
では、この制度はどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
2. かかりつけ薬剤師制度のメリット

(1)患者側のメリット
1.服薬管理の一元化
• かかりつけ薬剤師が患者の服薬状況を把握し、重複投与や副作用を防ぐ。
2.24時間相談可能な安心感
• 体調の変化や副作用の不安があるときに、かかりつけ薬剤師にいつでも相談できる。
3.医師との連携による適切な医療
• かかりつけ薬剤師が医師と情報共有し、必要に応じて処方内容の変更を提案できる。
(2)薬剤師側のメリット
1.患者との信頼関係が築ける
• 継続的に同じ患者を担当することで、より親身な指導が可能になる。
2.調剤報酬の加算が得られる
• かかりつけ薬剤師指導料が算定でき、薬局経営の安定化につながる。
3.専門的なスキルを活かせる
• 服薬指導の幅が広がり、専門知識を活かしたアドバイスができる。
3. かかりつけ薬剤師制度のデメリット・課題

(1)患者側のデメリット・課題
1.薬局の変更が難しくなる
• かかりつけ薬剤師を登録すると、原則として同じ薬剤師からしか指導を受けられなくなる。
2.指導料の自己負担が増える
• かかりつけ薬剤師指導料が発生し、通常の調剤よりも費用がかかる場合がある。
(2)薬剤師側のデメリット・課題
1.24時間対応の負担が大きい
• 夜間や休日の問い合わせ対応が必要なため、負担を感じる薬剤師も多い。
2.指名を受けるための条件が厳しい
• 勤務時間や研修受講などの条件を満たさなければならない。
3.登録患者が増えにくい
• 制度の認知度が低く、患者側が積極的にかかりつけ薬剤師を指名するケースが少ない。
4. かかりつけ薬剤師の今後の展望

(1)調剤報酬改定による影響
2025年の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料の見直しが議論されています。制度の普及を促すため、指導料の増額や要件の緩和が検討される可能性があります。
(2)在宅医療との連携強化
高齢化の進展に伴い、在宅医療に関わる薬剤師の需要が高まっています。かかりつけ薬剤師が在宅患者の服薬管理を担当するケースも増えており、今後は訪問服薬指導の役割が拡大すると考えられます。
(3)デジタル技術との融合
オンライン服薬指導や電子お薬手帳の普及により、薬剤師と患者のコミュニケーションがより円滑になることが期待されています。
5. 患者に選ばれるかかりつけ薬剤師になる方法

かかりつけ薬剤師として活躍するためには、患者から信頼されることが重要です。そのために必要なポイントを紹介します。
(1)信頼関係を築くためのコミュニケーション
• 患者の話をしっかり聞く
• 服薬状況だけでなく、生活習慣や困りごとにも耳を傾ける。
• 分かりやすい説明を心がける
• 専門用語を避け、患者が理解しやすい言葉を使う。
(2)継続的な学習とスキルアップ
• 最新の医薬品情報を学び、副作用や相互作用に関する知識を深める。
• 研修会や学会に積極的に参加し、最新の医療トレンドを把握する。
(3)在宅医療や多職種連携の経験を積む
• 在宅患者への訪問服薬指導を経験し、医師や看護師との連携を強化する。
• 介護施設や地域包括ケアシステムに関わることで、薬剤師としての役割を広げる。
(4)患者が相談しやすい環境を作る
• 「何でも相談できる薬剤師」として、親しみやすい雰囲気を意識する。
• 患者が気軽に話しかけられるよう、笑顔やアイコンタクトを大切にする。
6. まとめ

かかりつけ薬剤師制度は、患者にとっても薬剤師にとってもメリットの多い制度です。しかし、24時間対応の負担や制度の認知度の低さなどの課題もあります。
今後、調剤報酬改定やデジタル技術の進展により、かかりつけ薬剤師の役割はますます重要になると考えられます。
患者に選ばれる薬剤師になるためには、信頼関係の構築、継続的な学習、在宅医療への対応力などが不可欠です。今後のキャリアを考えるうえでも、かかりつけ薬剤師としてのスキルを高めることは大きな強みとなるでしょう。
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