薬剤師が解説|医薬品副作用被害救済制度とは?

薬剤師が解説

病気の治療や予防のために使われる医薬品。しかし、正しく使っていても、まれに思わぬ副作用が起きてしまうことがあります。そんなときに頼れるのが「医薬品副作用被害救済制度(いわゆる副作用救済制度)」です。
この記事では、薬剤師の立場から、この制度の内容や申請方法、支給されるお金のことまで、わかりやすく解説します。


副作用救済制度って、どんな制度?

この制度は、「薬をきちんと使っていたのに副作用で健康被害を受けた人」を救済するための公的な制度です。
実施しているのは、厚生労働省のもとにある「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)」という機関です。

薬は正しく使えば多くの人を助けてくれますが、ごくまれに重い副作用が出ることもあります。そうした場合、患者さんやその家族が治療費などで困らないよう、経済的な支援を行うのがこの制度の目的です。



対象になる副作用って?

この制度では、次のようなケースが対象になります。

  • 医師の指示どおりに処方薬を服用した
  • 薬局で購入した市販薬(OTC医薬品)を正しい使い方で使った
    それにもかかわらず、入院が必要なほどの副作用や、後遺症が残るような健康被害が出たときに、救済の対象になります。



どんな支援が受けられるの?

副作用によってかかった医療費や生活費の一部が支給されます。内容は以下のようになっています。

  • 医療費の一部(自己負担分など)
  • 医療手当(通院の交通費や雑費など)
  • 障害年金相当額(重い後遺症が残った場合)
  • 遺族年金や葬祭料(副作用が原因で亡くなった場合)

支給の可否は、PMDAが専門家の意見をもとに審査し判断します。



制度を利用できないケースもある

すべての副作用が救済されるわけではありません。以下のような場合には、制度の対象外となります。

自分の判断で過剰に服用したとき

たとえば、「早く治したい」と考えて医師の指示より多く薬を飲んでしまった場合、適正使用とは言えないため、救済の対象にはなりません。

美容・健康目的での使用

グルタチオン注射や美容点滴など、健康保険の対象外となる医薬品を美容目的で使った結果、副作用が起きた場合も対象外となります。

軽い副作用のみの場合

かゆみや発疹などの軽微な症状で済んだ場合は、原則として救済の対象になりません。
ただし、軽く見える症状でも続いたり、悪化したりした場合は、薬剤師や医師に相談しましょう。

海外で購入した薬を使ったとき

インターネットや海外旅行先で購入した薬は、日本の制度の対象外です。副作用が起きても救済を受けることはできません。



申請の流れと必要な書類

副作用救済制度を利用するには、自分または家族がPMDAに申請します。以下の書類が必要になります。

  • 診断書(医師が副作用による健康被害と診断したもの)
  • 服用した薬の情報(処方箋や薬剤情報提供書など)
  • 症状の経過をまとめたメモや記録

申請は副作用が出てから原則として5年以内に行う必要があります。手続きには3〜6か月ほどかかることが多いですが、早めに準備を始めることで、スムーズに進めることができます。



困ったときは、薬剤師に相談を

副作用が疑われるとき、「これって制度の対象になるの?」と迷うことがあるかもしれません。そんなときに頼れるのが、私たち薬剤師です。
薬剤師は日ごろから薬の服用状況や体調変化を確認しており、副作用に気づく立場にいます。また、制度の内容や申請方法をわかりやすく説明することもできます。

症状が出たら自己判断で薬を中止せず、まずは薬局や病院に相談してください。早期の対応が、重症化を防ぎ、制度の申請にもつながります。



副作用救済制度を理解して、より安心な医療へ

この制度は、薬の副作用という予期せぬリスクに対して、患者さんを支える大切なしくみです。副作用は誰にでも起こり得ることですが、制度を知っていれば「もしもの時」に慌てず対応できます。

副作用によって健康を損なってしまった患者さんには、希望の光となる可能性のある制度とも言えます。



最後に

副作用が不安で薬を飲むのをためらっている方、実際に症状が出てしまって不安な方、どんな小さなことでも構いません。
「これって制度の対象になるのかな?」
「どうやって申請すればいいの?」

そんなときは、どうぞ遠慮せず、薬局の薬剤師に相談してください。
そして、もし今の職場ではこうした患者支援が十分にできない、制度を理解してくれる仲間がいないと感じている薬剤師の方は、自分に合った働き方を探すのもひとつの選択肢です。副作用対応や患者支援に力を入れている現場で、薬剤師としての力を発揮してみませんか?

あなたの知識と経験を活かせる職場は、きっと見つかります。


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