調剤ミスを防ぐために薬剤師ができる5つの工夫

薬剤師の働き方

1. はじめに

薬剤師の重要な役割の一つに「調剤業務」があります。患者さんに正しい薬を提供することは、薬剤師の使命ですが、調剤の現場ではさまざまなミスが発生することがあります。

例えば、「似た名前の薬を間違えて渡してしまう」「処方された用量を間違える」「ピッキング(薬を取りそろえる作業)で数量を誤る」といったミスが挙げられます。これらのミスが患者さんの健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、薬剤師はミスを防ぐための工夫をする必要があります。

本記事では、よくある調剤ミスの原因を解説し、それを防ぐために薬剤師ができる5つの工夫を紹介します。



2. 調剤ミスの主な原因

調剤ミスは、さまざまな理由で発生します。ここでは、代表的なミスの原因を見ていきましょう。

(1) 薬の取り違え(類似名称・類似包装)

医薬品の中には、名前が似ているものや、包装がそっくりなものが数多く存在します。例えば、「セフカペンピボキシル(抗生剤)」と「セフジトレンピボキシル(抗生剤)」のように、一見すると似ている名前の薬があります。また、メーカーによっては異なる薬でも包装デザインが似ていることがあり、間違えてしまうケースがあります。

(2) 用量・用法の間違い

処方された薬の量(mgや錠数)や飲み方を誤って調剤してしまうことがあります。例えば、「1日1回服用」の処方を「1日3回」と間違えたり、100mgの錠剤と10mgの錠剤を取り違えてしまうことがあります。

(3) ピッキングミス(数量・剤形の間違い)

薬局で薬を取りそろえる際に、数量を誤ったり、錠剤の形が違うものを選んでしまったりすることがあります。例えば、25mgの錠剤を2錠出すべきところを1錠しか出さない、または50mgの錠剤を1錠出してしまうといったケースです。

(4) 処方箋の読み間違い(医師の筆跡、略語の誤解)

処方箋に記載された文字が読みづらい場合や、略語を誤解してしまうことでミスが発生することがあります。例えば、「mg」と「g」を見間違えたり、「分1(1日1回)」と「分3(1日3回)」を誤って解釈したりするケースがあります。

(5) 最終確認の漏れ(ダブルチェックの不備)

調剤が完了した後に、最終的なチェックを怠ることでミスが見逃されることがあります。本来はダブルチェックを行うべきですが、忙しさや疲労が原因で確認が不十分になってしまうことがあります。



3. 調剤ミスを防ぐための5つの工夫

ここからは、調剤ミスを防ぐために薬剤師が実践できる5つの工夫について解説します。


(1) ピッキングの精度を上げる工夫

  • ピッキングリストを活用する
    調剤する際に、処方箋の内容を直接見ながらピッキングするのではなく、あらかじめチェック済みの「ピッキングリスト」を活用すると、ミスを減らせます。
  • 類似薬の配置を工夫する
    似た名前や包装の薬を隣同士に置かず、間隔を空けて配置することで、取り違えを防ぎます。
  • 照合作業の徹底
    ピッキング後に、処方箋と薬をもう一度照合することでミスを減らせます。

(2) ダブルチェックの徹底

  • 別の薬剤師や調剤助手による確認
    一人でチェックするのではなく、別の薬剤師やスタッフに確認してもらうことで、ミスを防ぐことができます。
  • バーコードリーダーの活用
    バーコードをスキャンすることで、処方内容と実際の薬が合っているかを自動的に確認できます。

(3) 電子カルテ・レセコンの活用

  • 薬歴・アレルギー情報をリアルタイムで確認
    患者さんの服薬履歴やアレルギー情報をチェックすることで、誤った処方を見逃さずに済みます。
  • 処方の適正チェック機能を活用
    レセコン(レセプトコンピューター)や電子カルテには、処方内容のエラーチェック機能が搭載されていることが多いため、積極的に活用しましょう。

(4) 分かりやすい保管・レイアウトの工夫

  • 取り違えを防ぐための整理整頓
    似た薬を区別しやすいように、棚の配置を工夫したり、薬の収納方法を見直したりします。
  • 色分け・ラベル表示を活用
    例えば、高リスク薬には赤いラベルを貼るなど、視覚的に区別しやすい工夫をすることでミスを減らせます。

(5) ミスを防ぐ習慣づくり

  • 疲労時の調剤ルールを作る
    疲れていると注意力が低下しやすいため、こまめな休憩を取りながら業務を行うことが大切です。
  • 定期的な勉強会・ヒヤリハットの共有
    過去に発生したヒヤリハット(ヒヤッとしたりハッとしたりする事例)をスタッフ間で共有し、同じミスを繰り返さないようにしましょう。



まとめ

調剤ミスは、患者さんの安全に直結する重大な問題です。ミスを防ぐためには、日々の業務の中で工夫を積み重ねることが重要です。

今回紹介した5つの工夫を改めて振り返ると、

  1. ピッキングの精度を上げる
  2. ダブルチェックを徹底する
  3. 電子カルテ・レセコンを活用する
  4. 分かりやすい保管・レイアウトにする
  5. ミスを防ぐ習慣をつくる

これらを意識することで、調剤ミスを大幅に減らすことができます。薬剤師としての責任を果たし、患者さんの健康を守るために、今日からできる対策を実践していきましょう。


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